作品ID:1925
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ドライフラワー
小説の属性:一般小説 / 未選択 / 感想希望 / 初級者 / 年齢制限なし / 連載中
前書き・紹介
第2話 村の猟師
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周囲には無数の木が生えており、その木から伸びた枝や葉が空を覆っているので、今が昼なのか夜なのか分からないほど暗いのです。
王女様はゆっくりと立ち上がると、一度考えました。
何故自分は城を追い出されたのか。何故このような場所に辿りついたのかを。
考えなくても彼女は薄々気付いていました。自分が敵国に狙われていることを、その為に自分が国にいると自分自身の安全が危ういことを。だから、父上が自分を逃がしてくれたのではないかということを。
何故ならこの王女様、自分が美しいということを認知しているのです。鏡は既に存在するこの時代で、彼女は自分が他よりも優れていることを自覚しているのです。そして、王女様にとってそれが、堪らなく嬉しかったのです。彼女にとって、敵国の兵士が自分を狙っているということは、この上ない喜びでもあったのです。自分の為に命をかけて戦っている人がいる、そう思うだけで彼女は身体中が熱くなりました。
しかし、そうと分かってもこの状況は良くありません。このまま何処とも分からぬ森で一人きりでは、生きていける気がしないからです。それにまだ、ドレスのままの格好です。
王女はもう一度空を見ると、しばらくして暗い森に視線を戻しました。どの様にしてこの森に迷い混んだかは分かりません。足跡を辿ろうにも、地面には落葉があり足跡など見えないのですから。腹を括った王女様は、森の出口と思われる方向に歩き出した。
王女様が歩き出してから数十分、彼女は既に疲れきっていました。それもそのはずです。彼女は城を出たことはおろか、自分の部屋から出たことでさえ滅多に無かったのです。そんな非力な王女様は一般の市民が軽い疲労を感じる時間であっても、彼女にすると生命の危機を感じる時間になってしまうのです。
最初はただひたすらに、森の中を真っ直ぐに歩いていました。しかし、疲労から足がもつれだすと、まともに歩けなくっていました。行けども行けども、木しか見えないこの森で、ついに彼女の体力は遂に底をついてしまったのです。
王女はその場で音を立てて倒れ混みました。
*****
目を覚ます。そこにあったのは暗い森の風景ではなく、木で出来た天井だった。どうやら室内にいるようだ。そうか、全ては夢だったのか。城を追い出されたことも森に迷い混んだことも、全てが夢だった。そう解決しようとしたとき、それを全て打ち砕くものが現れた。
「あっ、目が覚めたのですか?」
自分の右側から声がする。しかも男性の声だ。
「まだ、無理はしないで下さい。なんせ、森で一人で倒れていたのですから。」
その一言で、現実に引き戻された。
よく見ると自分は家にいる。木で出来た、謂わばログハウスの様な平屋にいることが分かる。この家なかなかに広い。そして、木で出来たベットの上で寝ている。服装はドレスのままであるが、汚れている箇所はない。少し汚れて見えるのは、倒れ混んだときに付いた泥だろう。
そして、自分の寝ているベットの横に椅子に座った若い男性がいる。若いと言っても、自分と同じ位かそれよりも若い。
「しかし、驚きましたよ。滅多に人が踏み入れないこの森に、人が倒れているのですから。しかも、女性の方が。かなり心配しましたよ。」
どうやら、この男が自分をこの家に運んでくれたようだ。しかし、少し気になる点がある。
「ところで、貴方は随分綺麗なドレスを着ていますが、一体何者なのですか?」
この言葉に自分は驚きを隠せなかった。
「あっ、言いたくなかったら言わなくても大丈夫ですよ。人間秘密の一つや二つあるものですからね。」
城から追い出されると分かったとき、驚いた振りをしていた。しかし今回は冷や汗すら流した。この汗を、男は見逃さなかった。
「本当に大丈夫ですか?無理ならば、まだ寝ていても大丈夫ですよ。…、あっ。すいません、先程から俺ばかり話してしまって。いきなり知らない人にこんなにも話し掛けられてしまったら不安にもなりますよね。俺、リオールの村で猟師をやっているジグといいます。」
「…、アーネです。」
声は出た。
「あっ、初めて喋ってくれましたね!安心しました、声は出るのですね。」
そう言って、ジグと名乗った男はまるで子供の様に笑って見せた。純粋な、本当の子供に見えた。
しかしこの男、目の前の女性があの王女であることに気付いている様子が無かった。
王女様はゆっくりと立ち上がると、一度考えました。
何故自分は城を追い出されたのか。何故このような場所に辿りついたのかを。
考えなくても彼女は薄々気付いていました。自分が敵国に狙われていることを、その為に自分が国にいると自分自身の安全が危ういことを。だから、父上が自分を逃がしてくれたのではないかということを。
何故ならこの王女様、自分が美しいということを認知しているのです。鏡は既に存在するこの時代で、彼女は自分が他よりも優れていることを自覚しているのです。そして、王女様にとってそれが、堪らなく嬉しかったのです。彼女にとって、敵国の兵士が自分を狙っているということは、この上ない喜びでもあったのです。自分の為に命をかけて戦っている人がいる、そう思うだけで彼女は身体中が熱くなりました。
しかし、そうと分かってもこの状況は良くありません。このまま何処とも分からぬ森で一人きりでは、生きていける気がしないからです。それにまだ、ドレスのままの格好です。
王女はもう一度空を見ると、しばらくして暗い森に視線を戻しました。どの様にしてこの森に迷い混んだかは分かりません。足跡を辿ろうにも、地面には落葉があり足跡など見えないのですから。腹を括った王女様は、森の出口と思われる方向に歩き出した。
王女様が歩き出してから数十分、彼女は既に疲れきっていました。それもそのはずです。彼女は城を出たことはおろか、自分の部屋から出たことでさえ滅多に無かったのです。そんな非力な王女様は一般の市民が軽い疲労を感じる時間であっても、彼女にすると生命の危機を感じる時間になってしまうのです。
最初はただひたすらに、森の中を真っ直ぐに歩いていました。しかし、疲労から足がもつれだすと、まともに歩けなくっていました。行けども行けども、木しか見えないこの森で、ついに彼女の体力は遂に底をついてしまったのです。
王女はその場で音を立てて倒れ混みました。
*****
目を覚ます。そこにあったのは暗い森の風景ではなく、木で出来た天井だった。どうやら室内にいるようだ。そうか、全ては夢だったのか。城を追い出されたことも森に迷い混んだことも、全てが夢だった。そう解決しようとしたとき、それを全て打ち砕くものが現れた。
「あっ、目が覚めたのですか?」
自分の右側から声がする。しかも男性の声だ。
「まだ、無理はしないで下さい。なんせ、森で一人で倒れていたのですから。」
その一言で、現実に引き戻された。
よく見ると自分は家にいる。木で出来た、謂わばログハウスの様な平屋にいることが分かる。この家なかなかに広い。そして、木で出来たベットの上で寝ている。服装はドレスのままであるが、汚れている箇所はない。少し汚れて見えるのは、倒れ混んだときに付いた泥だろう。
そして、自分の寝ているベットの横に椅子に座った若い男性がいる。若いと言っても、自分と同じ位かそれよりも若い。
「しかし、驚きましたよ。滅多に人が踏み入れないこの森に、人が倒れているのですから。しかも、女性の方が。かなり心配しましたよ。」
どうやら、この男が自分をこの家に運んでくれたようだ。しかし、少し気になる点がある。
「ところで、貴方は随分綺麗なドレスを着ていますが、一体何者なのですか?」
この言葉に自分は驚きを隠せなかった。
「あっ、言いたくなかったら言わなくても大丈夫ですよ。人間秘密の一つや二つあるものですからね。」
城から追い出されると分かったとき、驚いた振りをしていた。しかし今回は冷や汗すら流した。この汗を、男は見逃さなかった。
「本当に大丈夫ですか?無理ならば、まだ寝ていても大丈夫ですよ。…、あっ。すいません、先程から俺ばかり話してしまって。いきなり知らない人にこんなにも話し掛けられてしまったら不安にもなりますよね。俺、リオールの村で猟師をやっているジグといいます。」
「…、アーネです。」
声は出た。
「あっ、初めて喋ってくれましたね!安心しました、声は出るのですね。」
そう言って、ジグと名乗った男はまるで子供の様に笑って見せた。純粋な、本当の子供に見えた。
しかしこの男、目の前の女性があの王女であることに気付いている様子が無かった。
後書き
作者:さち |
投稿日:2017/01/28 13:27 更新日:2017/01/31 19:12 『ドライフラワー』の著作権は、すべて作者 さち様に属します。 |
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