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作品ID:2118
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シロガネ⇔ストラグル

小説の属性:ライトノベル / 異世界ファンタジー / 激辛批評希望 / 中級者 / 年齢制限なし / 完結

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ジャンル違いどもの狂演

前の話 目次 次の話

 絹を裂くような悲鳴が飛んできた時、烈火はでかい鳥っぽい生き物の丸焼きに噛り付いていた。

「んあー?」

 パリパリに揚げ焼かれた表皮と肉汁たっぷりの身をリスみてーに口いっぱいに頬張っていると、にわかに辺りが騒然とし始めたのだ。

「騒がしいですな。もしやオークの残党か?」
「向かうとするか。レッカどのはそのままおくつろぎあれ」

 騎士たちは足早に出て行った。

「いまのって、悲鳴? こわーい……」

 腕にくっついてるモヒカンが、さらにぎゅーっと力を込めて抱きついてきた。目を閉ざして、その柔らかい感触だけを味わう。

 ――C……いや、Dカップはあるなコレ。おっほ、ひょっとしてノーブラか!? ノーブラなのかこれェ!!!

 恐らく麻の衣服を着ているようだが、餅のような触感の中に少し硬いものが埋まっている!! 乳品評に余念なし!! これはアレか!! エルフはブラとかつける文化がない感じのアレか!! マジか!! 天国か!!
 しかしちょっと待ってほしい。ということはリーネ・シュネービッチェンもノーブラということか? ブラなしであのクソでかパイオツの砲弾型を維持できるものなのか? ボブはいぶかしんだ。
 エルフの乳にはまだまだ謎が多い。烈火はじゅんしんながくじゅつてききょうみに従って必ずやこの秘密を解き明かそうと決意するのであった。

「ねーレッカさま……またオークが来たら守ってくれる……?」
「おー、まかせろまかせろ。マジオークとか余裕っすわ。ノーダメ安定! オーク絶滅RTA! たぶんこれが一番早いと思います!」
「ほんと? えへへ、よかったー」
「ねー?」
「ねー?」

 心底安堵した様子で頷き合っている。

「……あのー、ちょっと思ったんだけどお前らってちょっと簡単に人を信じすぎじゃね?」
「えー、そうかな?」
「そうだよ! 普通もうちょい警戒するぞ!? お前こんな正体不明見ず知らずのパーフェクトマッシヴ超天才に不要ににくっつきすぎだろ!! なんなの? どうすればいいの? 押し倒せばいいの!?」
「えー、わたしたち押し倒されちゃう?」
「こわーい♪」

 お前ら悩みとかないのか。
 能天気にクスクス笑い合っている。どいつもこいつもぜんぜん危機感がない。エルフの貞操観念もなんだかよくわからないのであった。
 まぁ、いくら許容されようがモヒカンはないわ。マジでない。

 ――瞬間、轟音が響き渡った。

 次いで、何か巨大な生物の金切り声のようなものが腹の底に轟く。

「ワッザ!?」

 さすがにこれはスルーできない。
 烈火は跳ね起きると、戸口から外へ顔を出した。
 そこには、なんだかよくわからないモノがいた。
 姿の詳細な描写をするには烈火の知能が足りないので省略!!
 とりあえず、すげーでかい。あとキモい。

「なん……じゃありゃあ」
「む、〈虫〉……! うそ、なんで……!」

 すぐ後ろで、モヒカンの一人が愕然とした声を出した。他のモヒカンどもも息を呑んでいる。
 オークの話をしていた時とはまるで異なる、恐怖に満ちた沈黙が垂れ込めた。

「むしぃ?」

 まぁ、フォルムは蜘蛛っぽいけど。
 とうかアレは……なんだ? 人工物なのか? 生物なのか? 色は青黒い感じだ。少なくとも食欲はそそられない。
 さっき出ていった三人の騎士が素早く蜘蛛に駆けよっていく。首元に手をやると、そこから光沢のある液体っぽいものがぶわっと広がって全身を包み、一瞬にしてシャープな輪郭の甲冑を形作った。
 一人はモヒカンどもの避難誘導を行い、残る二人が蜘蛛と対峙する。その手にはぼんやりと光る剣が出現していた。

「レッカさま、今のうちに逃げて!」
「はぁ?」
「あれは、正体は誰にもわかんないんだけど、とにかく硬くて、何やっても傷一つつかなかったらしいの。それに――あれは、なんだか、うまく言えないんだけど[すごくよくないもの]だと思う」

 それは、まぁ、わかる。何が言いたいかはなんとなくわかる。
 周囲の雰囲気と比べて、明らかに異質なのだ。まるで、写真の切り抜きをそこに張り付けたかのような、齟齬を感じた。
 存在の、質の、果てしない断絶。
 だが烈火はそんなふうに小難しく考えることなく、「なんかきめぇ、すげぇきめぇ」という単純な感想を抱いただけだった。

「オークを追い払ってくれてありがとう。ほら、ここはまだ見つかってないから、逃げて?」

 少し震えながら、モヒカンどもがこちらを見上げている。その眼は不安と恐れで揺れているが、こちらを思いやる心だけは明確に伝わってくる。

 ――いやいやいやいやちょっと待てお前らこの状況でまずやることが俺の心配とかおかしいだろどんだけ人がいいのこいつらちょっと心配になってくるレベルだぞ大丈夫なの? いつか悪い男に騙されるぞこれいくらなんでもカモすぎる!

 度を越した善良さにドン引きする烈火。
 ここ多分中世ファンタジー世界だろ? こんな無垢さでよく今まで生き残ってこれたなこいつら。無防備・無警戒にもほどがある。

「あの、俺にアレを退治してほしいとか思わないわけ?」
「えっ? なんで?」
「なんでっておめー、俺一応オークども相手にめっさ無双した感じの超天才だぞ? すげーつえーんだぞ?」
「うん、知ってるけど、オークは倒せてもあの〈虫〉は無理だと思うし、それにレッカさまはお客さんだよ? お客さんに危ないマネはさせられないよ」

 頭が痛くなってきた。
 烈火はわしわしと頭をかく。

「だァーもォー! お前ら! ちょっと黙れ!」

 モヒカンどもがビクッ、となる。

「ちょっと黙って見てろ! 俺の超絶無敵ハイパーマッシヴ超天才ぶりを見せてやる! 俺があれをやったらてめーらのおっぱい揉ませろこの野郎! 一人三揉みくらい!」
「揉むのは別にいいけどダメだって! 危ないって! ……揉むとき腹筋触ってもいい?」
「気にするとこそこかい!! もうマジで黙ってろお前ら!!!!」

 制止の手を振り払い、烈火は猛然と戸口から飛び出した。

 ●

「な、何の騒ぎだ!?」

 隣でリーネが声を上げた。軋みにも似た音とともに、巨樹のひとつが傾いでゆき、土煙と共に倒れ伏す。エルフたちの悲鳴が遠く響いてくる。
 具体的に何が起こっているかは別の樹に隠れて見えなかったが、総十郎の肌にも明らかに尋常ならざる気配が感じられた。
 逃げ惑うエルフの平民たちが、こちらに駆けてきた。
 全員若年に見える。男たちは顔を青くし、女たちは泣き腫らしている。

「お前たち、どうした? 何があったんだ?」

 リーネは努めて優しい声で問いかける。

「リ、リーネさま……む、〈虫〉が、いきなり動き出しました……!」
「なに……!」
「ひっく、ほかの騎士さまたちが向かっていったけど、だ、だめみたいだよぅ!」
「リーネどの、フィンくんを頼む。」

 即座に総十郎は昏睡する少年をリーネに預けると、起風の呪(しゅ)を発動。宙に舞いあがる。
 〈虫〉というのが、リーネの状況説明の中に言及されていた存在であることは明白。

 ――あれの正体も、目的も、どこから来たのかさえ、我々にはわからないのです。剣も、槍も、矢も、魔法も通じず、辛うじて我が家門に伝わる神統器(レガリア)だけが傷をつけうる

 オーク以上の、脅威。それがどういうわけか今この時に動き始めた。

「ソ、ソーチャンどの!?」
「一刻を争う。これにて御免。」

 目を丸くして見上げてくるリーネとシャーリィとライラに目礼し、総十郎は懐より霊符を取り出す。
 腕を鞭のようにしならせて投げ打つと、それらは空中に張り付いたかのように静止し、足場となった。まるで表面張力で水面に浮かんでいるかのように、霊符の周りの光景が歪んでいる。
 その上を、滑るように高速で駆けた。
 その手にはすでに神韻軍刀が実体化し、かすかに唸りを発している。
 みるみる景色が後方へ流れてゆく。同時に、痛ましい破壊痕がそこかしこに刻まれ始めた。樹木一体型の住居が、巨大な爪か刃物に斬り裂かれたように倒壊している。細い木の根が絡み合って形成された街路にも、ところどころに恐ろしく体重のある存在に踏み荒らされていた。いずれも木の破断面が真新しい。ついさっきつけられたもののようだ。
 エルフたちが一斉に逃げ惑っている。
 女たちの泣き声。親しい者の名を呼ぶ声。絶望的な呻き。
 見える範囲にいるエルフたちは、全員が青年期だ。子供や老人が一人もいない。そのことに違和感を覚えたが、今はそんな場合ではない。
 眼下より聞こえる声には、すでに諦めの気配すら漂いかけていた。
 もうオンディーナは終わりだ、と。
 もう自分たちは死ぬしかないんだ、と。
 視界に入るエルフたち全員が、望みを失っていた。

 ――なにを。諦めるのが早すぎる。

 だが――やがて巨樹を回り込み、視界が開けた瞬間、総十郎はどうしようもなく、エルフたちの絶望を理解できてしまった。
 そこに、巨大な、〈虫〉がいた。
 全体としては蜘蛛のフォルムに近い。黒紫色の装甲に覆われた肢が八本、八方に伸びている。それらの中心には、無機物と有機物のグロテスクなまでに緻密な融合物があった。
 それを総十郎の感性で表現するなら――人間の、胎児に似ていた。
 四肢のない胎児の周囲に、昆虫のような節足が存在しているのだ。黒紫の装甲に包まれた頭部と思しき場所の中心に、縦に裂けた口、のようなものがあり、恐らく口吻であろうものがわずかに見え隠れしていた。頭頂部をぐるりと囲む位置から、幾本か青黒い触手が生え、その先端には何らかの感覚器官と思われる脂肪質の塊が実っている。頭部の後ろにある胴体部分は、芋虫のように節に分かれた構造を持ち、ひとつひとつの節に分離した装甲が張り付いていた。
 そして――胎児は、浮遊していた。
 その巨体を支えるものなどまったく見当たらない。周りにある八本の節足たちとは、物理的に分離している。にもかかわらず、それは空中のいち座標にしっかりと固定され、ぐらつく様子もない。そして、節足の動きと連動して動き、揺れ、向きを変えていた。何らかの超常的な原理で連結されているようだ。
 生物なのか? 人工物なのか? 装甲の表面には、邪悪にのたうつ何らかの文字か紋様が刻み込まれており、恐らく人の手は入っているのだろうと思われが――少なくとも総十郎の知るいかなる技術体系とも異なる叡智の産物であることは疑いようがなかった。
 その足元には、小さな人形が三体、おもちゃのような剣を振り回している。
 いや――違う。人形ではない。おもちゃではない。エルフの騎士が、必死に〈虫〉の注意を引き付けようとしているのだ。
 あまりにもサイズが違いすぎて、牧歌的な錯覚をしてしまった。

 ――だが、どうする?

 あのサイズの機甲兵器を撃破した経験は総十郎にもある。だがそれは、事前に内部構造を調査済みであったがゆえの勝利だ。制御系の位置も動力源の位置も不明では、いかに物質透過の太刀を振るえど仕留めるのは難しかろう。大火力で一気に消し飛ばす術式も使えはするが、かなりの大儀式になる。すぐには発動できない。結局のところ総十郎の戦技は対人戦に特化しているのだ。
 三人のエルフ騎士は、〈虫〉を取り囲むようにして、それぞれ剣を構えている。しかし、高速で振り回される巨大な鉤爪に阻まれ、思うように動けていない。
 というか、図体のわりに〈虫〉の動きが速すぎる。
 矢継ぎ早に繰り出される斬撃刺突を、転がるようにしてやりすごすのがやっとのようだった。
 だが――騎士のひとりが節足の戻りを掴んだ。

「おぉ――!」

 引っ張られるように〈虫〉の胴体へ飛ぶ。
 勢いを剣の切っ先に乗せ、黒い装甲に覆われていない部分へ流星めいた刺突を解き放った。
 硬質の悲鳴。砕け散った剣が、きらきらと光を乱反射する。

「な……!」

 騎士の顔が強張った。
 直後に節足で薙ぎ払われた。

「しまっ――!」
「はいはい、ちょっと邪魔すんぞ」

 騎士の胴を両断せんと振るわれた節足が、なんかぞんざいに掴まれて止まった。
 逆の手で耳の穴かっぽじりながら、黒神烈火がそこに立っていた。

「レッカどの!? 危険です! お下がりを! 客人を矢面に立たせるわけには――」
「おめーらもモヒカンどもと一字一句同じこと言ってんじゃねーよ! ちょっと見てろこの超天才の超天才ぶりを!!!!」
「いや、あの存在にはいかなる攻撃も効かぬのです! 勇気と無謀をはき違えては――」
「はいはいわろすわろす」

 ずいと歩みを進める烈火。
 〈虫〉と対峙する。

 ――これは……どうなる!?

 総十郎は烈火の力量を疑ってはいない。だが、相手があまりに得体が知れなさすぎる。
 ヴォルダガッダとはまったく異なる気配。視界に入れているだけで脳髄を害されそうな、悪寒とも嫌悪ともつかぬ存在感。
 存在の、質の、断絶。
 たとえばエルフとオークであれば、それらがひとつの光景の中に居合わせたとしても、「あぁ、戦っているのだな」とすんなり納得することができる。だが、[あれ]はそういう理の外にある存在だ。
 [あれ]を中心に、世界を律する法が、捻じれ、歪んでいる。
 巨大な節足がワキワキと動き、烈火に向き直る。巨体に似合わぬ俊敏な動作だ。
 そして、

《特異点存在(シンギュラリティ)を確認――》
「あー?」

 ――喋った!?

 老人と、子供と、男と女が同時に喋っているような声だった。
 だが、空恐ろしいまでに感情の欠落した口調であった。
 頭部から生えた触手が振り向けられ、先端についた脂肪の塊が蠢く。
 烈火を、探査しているのか。

《測定罪業値:知的生命に対する看過しえぬ大量虐殺により522オーバー。罪障滅除プロトコルに基づき封印術式を三號まで解除》

 装甲が割れ、内部からサブアームが展開した。その先端には花の蕾めいた構造物が現れる。多肉植物のような質感の蕾が、粘液を引きながら花開き、黒い薔薇のような大輪の花を咲かせた。
 瞬間、薔薇がヴン、と唸りを発し、濃い紫色の光の剣が伸びた。
 その数、八振り。固体と見紛うような密度で、馬上槍(ランス)のような形状を形作っている。黒い人魂のようなものが無数に刀身の周囲を巡り、唸りとも苦悶ともつかない禍々しい絶叫を放っていた。
 二つの関節を備えたサブアームが、揺らめきながらも光剣の切っ先を一斉に烈火に向ける。
 世界を律する法の歪みが、圧力を伴って周囲に吹き付ける。故郷の世界で体感したリュングヴィ・ガリギュラヰザアの神域と同じであったが、変化の方向は真逆であった。エルフたちがひとつ大きく痙攣し、次々とその場に崩れ落ちてゆく。異界の法はなおも広がる。それは虚無であった。それは穢れであった。それは罪業であった。それは血涙であった。[それは縫い留められた黒き揚羽蝶の絶望であった]。[それは死をもってしても償いきれぬ罪業を背負いし幼き魂の物語であった]。
 欠片も意味の分からぬ言葉が、滾々と胸の裡より湧きだしてくる。だが――総十郎は不思議と確信した。この言葉こそが、[あれ]の本質を正しく示すものなのだ、と。
 [あれはよくないものだ]。[とてもとてもよくないものだ]。

 ――なるほど、実に興味深いな。

 総十郎の頬に、艶やかな笑みが浮かぶ。神韻軍刀の鯉口を切る。
 物足りぬ、と思っていたところだ。オークの中でも最強と思われるヴォルダガッダですら、総十郎にかすり傷ひとつつけることはできなかった。あれが今回の召喚の最大の脅威なのだとしたら、実に[やりがいがない]。
 総十郎はさらに力を込めて疾走する。男児(おのこ)として、力を尽くして勝利を斬り取ることへの憧れはあった。
 今こそそれを得る千載一遇の好機か。

 ――柄にもなく高揚しておるな。

 そんな自らに、苦笑する。

《――絶罪、執行――》

 それは、死のように無慈悲に。
 烈火に向けて、殺到した。

「はいドーン」

 かに見えた瞬間、爆速踏み込みからの爆速正拳で〈虫〉はバラバラに吹き飛んだ!!
 装甲も内部構造も粉砕され、破片が烈火の周囲に飛び散った!! なんかようわからん青い液体も舞い散ってる!!

「……えぇ……。」

 思わず足を止め、呻く総十郎。
 エルフのお歴々も目ん玉飛び出て顎が外れる勢いで驚愕中である。
 いや驚愕と言うか、ドン引きであった。

「毎度思うんだけどメカっぽいのが何考えてんのかいちいち声に出して言うのおかしくね? 敵に作戦バレね? なんなの? メカアピールしたいの? キャラ付けしたいの?」

 ツカツカとそこに歩み寄る総十郎。

「おい、黒神。」
「あぁ? ロリコンじゃねーか」

 こっち向いた瞬間、烈火を鞘で殴り飛ばした。

「へぶぅッ!?」

 ぎゅるぎゅる回りながら吹っ飛んで、ドシャアと倒れる。

「ってェェェェェェなコラァ!! あにすんだロリコンてめぇこの野郎!!!!」
「なにゆえ殴られたか、わかるか?」

 語気に力を込め、真正面から睨みつける。
 すると、気圧されたのか急にしどろもどろになる烈火。

「いや、えーと、なん……ででしょうかね総十郎さん……?」

 そこへ一歩踏み出して、ずいと顔を近づける。

「――なんとなくだ。」
「なんとなく殴んなやァァァァァァァァァッッ!!!!!!」

 烈火の絶叫を契機に、周囲のエルフたちが一斉に我に返った。

「レ、レッカ……どの……」

 エルフ騎士がひきつった声を出す。あぁもう完全にドン引きしてるよこれ。

「おう! 存分に恐れ敬え凡人この野郎!」
「あなたは……人間、なのですか……?」
「見りゃわかんだろーがおめー人間ですゥー、頭のてっぺんから何かの先端まで混じりっ気なく健康優良日本男児ですゥー」
「ど、どのようにして、そのような、闘神のごとき力を……?」
「ググれカス」
「ぐぐ……?」
「相変わらずわけのわからんことばかり言って相手を困らせてゐるな黒神。」
「ぐぇ!」

 烈火を押し退け、総十郎はエルフ騎士たちに微笑みかける。

「お初にお目にかゝる。連れが大変失礼した。小生は鵺火総十郎と申すロリコンである。以後お見知りおきを。」
「こ、これはご丁寧に。貴殿ももしや……レッカどのと同じく異界の英雄どのでは?」
「お察しの通り、此度は異界よりシャーリィ殿下のお招きに応じ、馳せ参じた次第。オブスキュアの国難に対し、微力ながら尽くさせていたゞく所存である。」
「おぉ……それはありがたい。なんとお礼を申し上げたら良いものやら……」
「お心遣いだけ受け取っておこう。小生はシャーリィ殿下の海岳丘山なる御心に感じ入り、行動するまでのこと。たゞし――」

 横の烈火の首に鞘を引っかけて、ぐいと引き寄せる。

「ぐぇ」
「――この男はいさゝか以上に俗物であるゆえ、なにか物質的な謝礼を考えておいた方がよかろうとは思うが。」
「はは、心得ております。レッカどのはなかなか明朗なご気性のようで」
「うむ、言えておる。実にわかりやすい。」
「てめーら実は俺のことバカにしてんな? オイそうなんだな? お前らね、俺のことナメすぎだよ? 烈火くんこれでも成人してるからね? 胸に秘めたものとかいろいろある感じのアレだからね? えーと、具体的には、あー、最近の性的妄想のトレンドは女子のへそを舐めくり回すことだ!!!! キャッ☆ 言っちゃった☆ 烈火くん秘密の性癖言っちゃった☆ 恥ずかしいっ♪」
「それで、シャーリィ殿下はいずこへ?」
「あゝ、それならばもう近くに来てゐるであろう。安心めされよ、殿下もリーネどのも無事である。」
「おや? 無視かな? シカトかな? スルーかな?」
「そうでしたか。〈虫〉の惨禍に巻き込まれでもしたらと思っておりましたが、一安心ですな」
「噂をすれば何とやら、姫君と騎士殿がおいでだ。」
「シュネービッチェン卿が子供を抱えているように見えるが……?」
「うむ、彼についても説明が必要であろうな。」
「あれあれ? おかしいぞぉ? 二人ともこっちに目を向けてくれなくなったぞぉ?」

「おおい、ソーチャンどのーっ! 大事ないでしょうかー?」

 リーネ・シュネービッチェンの声が、ここまで届いてきた。
 オブスキュア王国第二都市オンディーナは、かくして解放された。

後書き

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作者:バール
投稿日:2019/04/30 19:57
更新日:2019/04/30 19:57
『シロガネ⇔ストラグル』の著作権は、すべて作者 バール様に属します。

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作品ID:2118
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