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作品ID:310
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Devil+Angel=Reo

小説の属性:一般小説 / 未選択 / 感想希望 / 初級者 / 年齢制限なし / 完結

前書き・紹介


クライマックス編・第1話。

前の話 目次 次の話

 最後のレオ争奪戦から、早くも10年後――。



「うぃーっす! おはようでーす!」

「うん、朝っぱらから軽すぎだし、テンション低めでヨロシク。高すぎるよ。テンション」

 ハルジオン咲き誇る中で、紅來 鈴は川原で石の投げ合いをしていた柊姉と柊双子にターンしながら、近づいてみる。

 柊姉を柊 羽奈。よく、私はハナっちって呼んでたっけ。中学入って呼ばなくなったけど。恥ずかしくて。

 柊双子の一分先に産まれたのが柊 詩穏。シオン兄って呼んでた。性格悪すぎて腹たつときあるけど。

 柊双子の一分後に産まれたのが柊 琥音。くおん、だからクー兄って呼んでる。少々天然ボケ入ってます。

 そんな柊姉と柊双子に近くに会った、石っころを投げつけてみる。

 自分の母譲りの赤髪が視界に一瞬映る。



「いやぁ。まさかあのレオ争奪戦のヒロインとヒロインの妹の娘と息子たちが集うなんて夢見たいっすね?!!」

「だから、朝6時からテンション高いっつーの」

 羽奈が鈴に向かって、石を投げつけ返す。速度が速くって、ビックリ。



「にしてもさぁ。

 母さんたちもこれないくせに、子供たちだけで集めてほしくないよねぇ」

 羽奈は大きめの石に座り、腰まで伸ばした黒髪を指でいじる。



「まあまあ。

 母さんたちだって何か考えがあるんですよ」

 詩穏が初めて、口を開いて琥音に問う。



「琥音だって、別に用事なかったことですし。土日なんで、別にいいでしょ」

「……はっきり言わなくても」

 一分違いの兄に少々苛立ちを覚えつつも、久々に会うこのメンバーと会うことに別に何かあるわけじゃなかった。





 紅來 鈴と柊姉&柊双子の母親、桐生刹那と桐生媛は10年前、最後のレオ争奪戦に参加し、見事優勝した。

 しかし、あのトーナメント以来、鈴の父親でもあり桐生刹那の幼馴染でもある紅來璃維は姿を消したまま。

 最後の言葉は「NEVとの縁を完全に断ち切ることが本当の望み」を含めた、言葉だったそうだ。

 母は、ショックを隠し私をここまで育ててくれたが、本当は父を心配していることと違いない。



「ま。こっちはこっちで仲良くやってるんでね。

 ほら。誰だっけ?? あのウチの両親みたいな子達!!

 新入生の、えーと……」

「麻生弓と月波槍ですか?」

 詩穏が口にした名は10年前のレオ争奪戦以降に建てられたフェリアンヴェスピュリア大公国日本校に新入生として入ってきた、麻生 弓と月波 槍という鈴の両親のような幼馴染。



「そうそう!!

 あの2人をイジるのが最近の趣味なんだよねぇ」

「やな趣味ですね」

 横目で詩穏は鈴を睨む。

 琥音が珍しく詩穏に賛同する形で「詩穏の言うとおり」と述べると鈴から水をかけられた。

 その光景に羽奈は声を出して笑う。



 そんな幸せな風景も己らの親が切り開いたものだと思うと、思わず苦笑の形に顔が歪む。

 いや、バカにしてるんじゃなくって、本当に。

 なんていうのかな?

 ほら。私たちは別に親がどうのこうのじゃなくって、自分自身だけを見て親なんて関係ないっていう奴らばかりだからさ。

 だから余計なのかもしれない。



〈私たちの親が凄いって言われる事に慣れないのは……〉

 鈴は常々思う。

 鈴の両親が凄いと、10年前のレオ争奪戦で優勝したからと。

 だけどそれに慣れない。慣れてくれない。ていうか慣れたくない。

 今は両親揃って鈴と思い出を作ったなんてことない。



〈それでも、両親は普通なんだよ〉

 両親がどんなに凄いかなんて知らないんだ。

 お母さんがNEVの暴走を止めて、お父さんの暴走をも止めた事なんて。

 お父さんがレオ争奪戦で優勝して、お母さんと一緒に混乱に陥ったレオ争奪戦を立て直したのも。



「全部、普通の事なんだよ」

 小さく、桐生刹那と紅來璃維の一人娘である紅來鈴が呟いたのは、近くに居た柊姉と双子にも聞こえなかった。





 10年前の最後のレオ争奪戦。

 バラバラにされた、獅子の魂。

 強制的にバラバラにした獅子の魂は怒り狂い、世界各地に散らばったんだ。

 それを回収してるって噂のお父さんとお父さんのお友達。

 だけどさ。そんなの普通なんだよ。

 お父さんは凄くないし、お父さんが自らバラバラになった魂を回収にしにいくって言ったんだから。

 普通、なんだよ――。







後書き


作者:斎藤七南
投稿日:2010/09/13 15:16
更新日:2010/09/13 15:16
『Devil+Angel=Reo』の著作権は、すべて作者 斎藤七南様に属します。

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作品ID:310
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