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作品ID:345
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武器の名前で呼び合おう!

小説の属性:一般小説 / 未選択 / 感想希望 / 初級者 / 年齢制限なし / 休載中

前書き・紹介


春夏秋冬文化祭開催!! ?一日目後編?

前の話 目次 次の話

「ちょ、アンタなんで爆笑してんの?」

 引きつり気味に制服へと着替え済みの麻生 弓が自身の幼馴染である月波 槍の爆笑っぷりに身を引いていた。



「まさか、槍君がここまでの爆笑キャラだったとは……」

 弓の後ろで、槍と同じ長槍部という部活に入っている唯一の女子、村森 ユキがタータンチェックのスカートを翻してB組から立ち去ろうとする。

 勿論、立ち去るとき、槍の爆笑っぷりを頭から削除するのを忘れずに。



「月波くんが爆笑しているという姿は珍しいですね。

 ……写真とっておきましょうか」

 茶髪ストレート少女で槍と同じB組所属の、堀咲 椎奈が明るいオレンジ色地のチェックの上着胸ポケットから、明るめ緑のデジカメを取り出し、槍の爆笑っぷりを動画機能で撮影。



「コレ、次の生徒会新聞に載せてもらいましょうか。

 クールな1年B組男子生徒、月波 槍くんの稀少!? 貴重!? 大爆笑!? ってことで」

 弓が呆れたように、幼馴染を嘲笑する。

 生徒会に言っちゃえば、あの好奇心旺盛な生徒会メンバーのことだから、絶対食いつくわよ。



「……かといって、このまま槍をほったらかしにすることもできないしなぁ。

 ユキは行っちゃったし。とりあえず槍にお話聞くとしますか……」

「ですね」

 撮影完了の椎奈が、弓に同意を示す。



「じゃ、槍く?ん?

 なんでキミはそんなに爆笑してるのかな??」

 腰に両手を当てて、いまだ爆笑している槍の顔を覗き込む弓。



「だ、だって……このキャラ、弓にそっくり……!」

 プチッと弓のキレてはいけないところがキレたが、落ち着いて考える。

 大丈夫大丈夫。いくらこの性格が悪い槍でも、そんな。



「見てみろよ、このキャラ……!!

 この飛び蹴りのモーションが弓っぽくって……っ!」

 決定。



「ふざけんなよ、てめぇ」

 低い声で、槍から離れる。

 勢いよく助走をつけて槍の頭にローファーが叩き込まれる。

 パンパンッといい音を立てて弓の両手が叩かれる。

 あたしだって女子だ。

 そんな飛び蹴りモーションがあたしらしいとか、てめぇ、あたしは女じゃねぇってか?



「さ。えーと堀咲さん?」

「椎奈で」

「椎奈、これからCとD組にも乗り込むんだけど、いく?」

「麻生じゃなくって弓でいいですよね?

 弓の関係からすると、二卵性双生児のことでしょうか?」

「うん、いく?」

「行きます。写真及び動画撮影チャンスですから」

 ニヤリと笑みを残して、B組を去る。





 1年C組。ここはどうやらD組と合同で催しをって……。



「まさかあの二卵性双生児がまた何か……!」

 怒りと少し楽しさが混じった声が弓の口から発せられる。

 ショートの黒髪を靡かせて、弓はC組の中へと入っていく。



「えーと。C組では、女子が。D組では男子がおもてなしします?」

 受付でもらったパンフレットを椎奈と見ていると。



「あれ? 弓、じゃないですか? それに椎奈も」

 ……何故だろう。男子が女子の格好をしているとしか思えないんだけどな。

 冷や汗をかいて、弓は椎奈に声をかける。



「ね、ねえ。これってもしかして」

「え、ええ。柊二卵性双生児のところの柊詩穏で間違いないですね」

「何で、女子の格好してるの?」

「さぁ? 女装趣味のある男性とはあまり関わりたくないですから」

 ニッコリと笑う椎奈の目は、しかし笑っていなかった。



「ねえ? 何で、詩穏はそんな格好してるのかしら?」

 頬に右手をやり、慣れない口調で話す弓。

 その汗は止まらない。ってか止まるわけないし。



「あぁ、これはクラスの女子からの意見で、CとD組合同で男子はC組で女装してもてなしを。

 女子はD組で男装してもてなす。こんな感じですね?」

 詩穏がフリルがついたカチューシャをとって、もてあそぶ。

 それに軽くひきつつまさか、と思考をめぐらせる。



「もしかしてさ。その……まさか……」

「ゆー姉?」

 ゆー姉!? と勢いよく振り向いたとき、自慢のショートカットが視界の端で揺れた。



「……なんで、ゆー姉が居るんだ?」

 詩穏同様、柊 琥音が女装した格好で、弓と椎奈の前に立っていた。



「ゆ、ゆー姉?」

 今まで、この二卵性双生児から「ゆー姉」と呼ばれたことなどなかった。

 っていうか呼ばれたら呼ばれたで、ちょっと……ねぇ?



「説明し忘れてましたね。

 今回だけは、お客さま女子生徒ヴァージョンには「姉」をつけること。また愛称をつけること。

 お客様男子生徒ヴァージョンには「兄」をつけること。また愛称をつけること。

 ……を義務付けられていまして」

 困ったように、詩穏が口にする。

 珍しい詩穏の困り顔だが、椎奈も詩穏の言葉に驚く節があったのか、動画または撮影することを忘れている。



「ってことは私はあれですか?

 椎奈姉とかって」

「いえ。椎奈の場合は〈しー姉〉で」

「……弓。

 私、精神的に病んじゃいそうだから、これで帰るね」

 フラフラと危なげな足取りで、椎奈がB組に帰っていく。



 それに弓は自然と合掌していた。



「っともかく!!

 あんたたち、それでA組にはこないでよね!!」

 ビシィ! と二卵性双生児を指差して、弓は駆け足でA組へと帰った。





 そこでは、あのユキがカタカタと震えていたという。



後書き


作者:斎藤七南
投稿日:2010/09/27 07:20
更新日:2010/09/27 15:54
『武器の名前で呼び合おう!』の著作権は、すべて作者 斎藤七南様に属します。

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