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作品ID:362
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武器の名前で呼び合おう!

小説の属性:一般小説 / 未選択 / 感想希望 / 初級者 / 年齢制限なし / 休載中

前書き・紹介


中間テストin鬼ごっこ開催!! ?後編?

前の話 目次 次の話

「はっ!!」

 威勢の良い声が麻生 弓の口から放たれた。

 弓は、弓道部副部長という肩書きを利用し、矢を数学教師〈男性・30代ぐらい〉を狙う。

 予想通り? 矢を避けて、よろめいた数学教師を置いてきて走った弓は、目の前に出された国語問題を解き始める。

 そう。電子機器に表示された国語問題を。

「ったく! なんでこんなにつらいのよー!」

 確かに、あたしはこの中間テストin鬼ごっこを甘く見ていた。

 そしてその辛さを弓は早々に受ける事となったのである。

 電子機器から言われる機械的な声に苛立ちながらも、全10問の国語問題〈中学1年レベル〉を解いていく。



『次。宮沢賢治ノ代表的ナ詩、モシクハ作品を答エナサイ』

「え、えーと、あ! 銀河鉄道の夜っ!!」

『正解。国語問題クリア。ゲート開キマス』

「サンキュ!!」

 へっへー。国語は結構できるんだよっ!!

 ……数学は厳しいけど。本当は国語も厳しいけど。

 というより勉強自体厳しいけど。

 走りながら、出くわした我らが担任の女性体育教師に弓矢を構える。

 放たれた矢は女性教師の数センチ横に立つ、大木に刺さった。

「んじゃね! 先生!」

 女性教師を指差し、輝く笑顔を残して弓は、黒髪のショートを揺らして走り続ける。



「……詩穏?」

 弓の目の前に現れたのは柊 詩穏、だった。

「な、何ですか?」

 どもりながらも、詩穏は背中で何か隠す。

 それは、先ほど弓が対峙していた電子機器で……。

『残リ15秒。早ク数学問題ヲ解イテください』

 なぜか苛立った口調で機械が言う。



「……詩穏……まさか、中1の数学問題も解けないとか……」

「そ、そんなことありませんっ!!」

 なぜか照れながら慌てて、詩穏は問題を解く。

 数秒ほどで数学問題を解いた詩穏は。

「ほら! 解けましたよ!!」

 ……だからってどういう反応をしたらいいのか、というよりそんなムキにならなくっても……。

 弓は内心で苦笑しつつも詩穏に手を振って、走り出す。

 この中間テストin鬼ごっこでは、先生に捕まっても失格。テスト問題を時間内に解けなくっても失格というルールが実は存在していたりする。

〈それを考えると、やっぱりのんびりしてる余裕は、ない、よね……〉

 毎日磨くのを欠かさないローファーにだんだん、砂がこびりついてきた。

 こりゃあ、相当磨かないとあの光具合は戻ってこないな。と考えながらも前方に見えてきたシルエットに驚いて、慌ててそばに立ててあった「給油タンク」と赤ペンキでかかれた看板に隠れる。

〈誰だろ……? 槍、しかも結構長め……ってことは長槍部?〉

 自分の幼馴染でもある少年が入っている長槍部の部員らしき姿だと考える。

 しかし、姿はタータンチェックのスカートを着ている。

 長槍部には女子は一人しか居なかったはずだが……?

〈もしかして〉

 下手に出てって攻撃されては困る。この鬼ごっこでは生徒vs先生という構図ができあがってしまうため、運動部所属の生徒はその得意とする武器を持っていてそれで攻撃してもオーケーというルールさえもある。

 そのため、先生と間違えられて攻撃される可能性もないわけではない。

〈あたらなくても顔だけ確認できればっていうかまあ、大体予想はできてるんだけど〉

 矢を放ってみる。予想通り? そのリーチがある槍で真っ二つに折られてしまう。

 しかし矢に気を取られて見つけた隙に弓はすかさず看板の陰から姿を現して女子生徒に接近する。

「やっぱり、ユキかぁ」

 女子生徒の顔を確認して、へにゃりと笑みを見せる弓に女子生徒、村森 ユキは同じように笑う。

「なんだ。弓か。思わず槍を振り回しそうになったよ」

「そう思って、矢を放って様子見してみた」

 大きく口を開けて笑う弓。ユキはそれに笑みを苦笑の形に変える。

「そういえば、私は向こうからきたけど、向こうに電子機器置いてあったよ?」

「科目は?」

「えーと。理科。第2分野だから植物分野だね」

 植物分野かぁ、と弓は黒髪を掻いてみる。

 正直なところ。弓は勉強が苦手な代わりに運動を頑張る少女なのだ。

 それでも苦手な分野のひとつである理科の第1分野がでなくてよかったと思う。

〈圧力計算とか面倒だしね〉

 それを考えれば記憶が中心の植物分野は少し楽だろう。

 ……まあ弓が覚えていればの話だが?

「よし。じゃ頑張ってこようかな?」

「行ってらっしゃい」

 弓がユキに手を振ってゆっくりと今度は歩き出す。

 またユキや詩穏と出会ったようにいきなり出てこられたら、矢をセットする余裕がなくなってしまう可能性があるからだ。

 だから今度は歩いていく。

「あれか」

 電子機器が生い茂った木々の中にポツンと置かれていた。

「え、と第2分野だよね。どんな問題が出されるのかな?」

 ちょっとドキドキしながらも電子機器が出す問題に胸を踊らす。

『コノ名称ヲ答エナサイ』

 そう宣言された後に出たのは、顕微鏡だった。あの両目で見る双眼実体顕微鏡ではない。

 そうして、図にされたA?Fまでの名称を次々に答えていく。

「Aは接眼レンズ、Bレボルバー、C微動ねじ、Dクリップ、E反射鏡、F鏡台」

 この顕微鏡はステージが上下する顕微鏡ではなく、鏡筒が上下する顕微鏡だったため、簡単に答えられた。まあ学期末テストで理科対策ノートを作ってまで覚えたからね。

『正解。次。胚珠ガ子房ニ包マレテイルモノ、イナイモノヲ答エナサイ』

「被子植物、裸子植物!」

『正解。最後』

 どうやら、植物分野は全3問らしい。

 国語よりは問題数が少ないため、楽勝かもしれない。

『雄花ト雌花ガ別々ニ咲クノハ?』

「……」

 ここで始めて、カウントダウンが始まった。

 15、14、13、12……。

 何だっけ。え、雄花と雌花じゃねーの?

 あ!!

「し、雌雄異株!!」

『正解。ゲートヲ開キマス』

 鈍い音を出しながら、ゲートが開かれる。

 このゲートを見るたび思うけど。

〈このゲートとかどうやって設置したんだろ……?〉



「あ。く、琥音?」

 思わぬ人物との遭遇に驚く弓。

「……弓?」

 琥音は弓の登場に驚く素振りも見せず、歩き始める。

「ねえ、この先に問題あった?」

「問題はなかったけど、教師はいた」

「えぇぇぇぇぇえ!?」

「煩い。見つかるでしょ……」

 いや、でも教師に見つかって捕まっても失格だし、この子なんでこんなに落ちついてるわけ!?

「とにかく、教師に見つかったら矢で攻撃して・…」

「じゃ、もういいよね・…」

 琥音が面倒そうに去っていく。元々こういった体育会系の行事は嫌いなのだろう。

「あいつ、本当にやる気あるのかな?」

 言って自分の身の安全も考えなければ、と思い起こした弓だった。



「何でアンタがここにいるのよ……!」

 黒髪ショートが弓の頭上を駆け抜けた無色透明の風により少し舞い上がる。

 そしてそれと同様の動きを見せた隣に居る恨むべき幼馴染。

 ……あたし達をここまで引き連れてきた幼馴染。

「何でって、それを言うなら弓も何で高等部校舎の屋根の上なんかに居るんだよ?」

 弓の幼馴染でもある月波 槍が眉間にシワを寄せつつ言った。

 どっちかというと槍も運動が得意なのだが、弓とは違い勉強が並にはできるので弓よりは問題を避けてはいない。

「だって、此処が一番安全でしょうよ!!」

 軽くやけになった弓が小声で槍に向かって言う。しかし目線は合わせない。

「まあ、安全といえば安全だけど」

 一般的な教師や生徒は普通屋根なんぞに上がってこない。

「ねえ、槍。アンタさなんで、あたし達を此処に入れたわけ?」

 はじめて目線を合わせて弓は言う。

 それに逆に目を閉じた槍は仰向けに寝転がりながら首をかしげた。

「なんでだろな」

「……あたし達、今までうまく行ってたんだよ?」

「それを壊したのが俺だと?」

「それ以外に何がある?」

 弓の異常に棘がある言葉に槍も黙り、弓もそれ以上何も言わなかった。



 風に乗せられたようにチャイムが鳴った。

 この中間テストin鬼ごっこが終わった事を示していた。

 そのチャイムを聞いて弓は屋根から下りようとして止まる。



「槍。アンタ、いい加減答えぐらい出しなさいよ」

「……何の?」

「それぐらい、アンタが考えなさいよ……!」

 槍の無表情で答えられたその言葉に弓は軽く苛立ちを覚えながら、抑える。





 今まで。

 月波 槍という少年が麻生 弓や村森 ユキといったメンバーをこの私立ヒイラギ学園に引き抜いたその理由を答えてくれた事はない。

 しかし、理由すらもないというならば。

 きっと弓は、永遠に槍とは――。



 そしてその後、各々の教室に戻った弓たちに教師たちから渡されたもの。

 それは中間テストの問題用紙と解答用紙だった。

 そうして5時間以上にも及んだ中間テストin鬼ごっこは幕を閉じました。





後書き


作者:斎藤七南
投稿日:2010/10/04 07:24
更新日:2010/10/04 07:24
『武器の名前で呼び合おう!』の著作権は、すべて作者 斎藤七南様に属します。

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作品ID:362
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