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作品ID:625
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遠藤 敬之 ■白銀 ■白河甚平 


White×Black=Glay?

小説の属性:一般小説 / 未選択 / 感想希望 / 初級者 / 年齢制限なし / 連載中

前書き・紹介


White×Black=Glay? ?9色目?

前の話 目次 次の話

 キャリーケースをガラガラと転がしながら、溜息を吐いた。

「やっぱり、遠征は疲れる……。これ以上、遠出させないでよね、アタシは病み上がりなんだから」

 綺麗な金髪を揺らしながら、スタイルの良い少女は、愚痴る。

「あれ? あれれ?」

 キャリーケースを止まらせ、コツコツコツとヒールをコンクリートで鳴らし、キョロキョロと首を回す。

「ここ、何処……?」

 金髪の少女を見る人が見れば、すぐに怖れを抱き、逃走するだろう。

 または、自信のある者ならば、少女に飛びかかって、戦闘するだろう。

「んー。鋼夜春袈さんのご依頼で、最重要書類を持ってきたのに?」

 少女は、キャリーケースに腰掛け、腕組をする。

「……ま、邪魔者も居るみたいだし、とりあえず、排除しておきますか」

 静かに告げられた言葉を始まりとして、少女は攻撃の手を休める事はなかった。





「依頼?」

 草花舞葉が、鋼夜春袈に問う。

 春袈達は、現在、魔法使い達の街を去り、隣町に居た。

「うん。最重要書類を運んでくれるっていう依頼。それを知ったのは、つい最近なんだけどね」

 町の中心部にあるカフェへと赴いた春袈たちは、春袈が去ってからのチームの動きと、春袈自身の動きをお互いに報告しあっていた。

「最重要書類を運ばせるために頼んだ人は?」

「……言えない。これは、契約内容に含まれているから」

 言葉を濁す春袈に溜息を吐く舞葉。

 姉・舞葉の問いを引き継ぐかのように、草花黒刃が言葉を紡ぐ。

「じゃあ、依頼した場所は?」

「……言えない」

「……全てそれで終わらせる気ですか?」

 苛立った様子で、黒刃が頭を抱える。

「リーダーを責めるのは、間違いじゃないですか?」

 黙りこんだ春袈を助けたのは、桃風羽夜華。

「間違い? それにリーダー? 今のチームのリーダーは姉ですよ?」

「代理、でしょ?」

 理論をぶつけあう同類の少女2人が言い争う。

 終わりの見えないような、長い長い争いは、意外な結末を迎えた。



「うわ、ちょっと、険悪な雰囲気?? 最悪ぅ?」

 語尾が異様に長いソプラノの声が聞こえた。

 入り口を見ると、金髪をツインテールにした少女が、キャリーケースを隣に置いて、面倒そうに立っていた。

「えぇと、このカフェにコウヤハルカって人、居ますー?」

 レジ前で、店員に聞く少女は、どう見ても10代にしか見えない。

 もしかしたら、その口調が実年齢よりも若く見せているのか、ただ単に童顔だからなのか。

 正体不明の少女に、しかし、春袈も舞葉も羽夜華も黒刃も、他の客も気をとられていた。

「ん。ヤバイかな」

 キャリーケースを転がし始めたとき、少女は既にレジ前に居なかった。

 同時に少女が居た場所に火柱が上がる。

 爆発も含んだ火柱は、カフェ内を侵食した。

「うわ。爆発含みー? メンドくさー」

 レジ前に居たはずの金髪の少女は、空中に漂っていた。

「ま、バリア張ったから、オッケーかなー」

 独り言を喋り続ける少女は、空中にも関わらず、キャリーケースに座る。

 そして、少女が両手を胸の前で組み合わせると、少女が口を開く。

「じゃ、終わりね」

 組み合わせた両手の内側から、膨張する熱気。

 凝縮された熱気が、少女の両手から放たれる熱弾になる。

「あーでも……」

 少女の面倒そうな声が空中からではなく、今度は春袈の背後から聞こえた。

「やっぱり、お仕事優先かな?」

 キャリーケースを開け、その中から分厚い書類を取り出し、春袈に渡す。

「はい。ご依頼の最重要書類です。依頼主はコウヤハルカ。依頼、及び配達人は」

 そこでニコリと笑む少女。

 思わず、春袈は綺麗だ、と思ってしまう。

「倉中蒼理」

 倉中 蒼理(くらなか あおり)と名乗った金髪の少女は、笑顔を消し、右手だけに熱気を集中させる。

「クラナカアオリ……?」

 聞き覚えのない名前に春袈は、書類を受け取る以前に首を傾げる。

「私が依頼したのは」

「はい。だから、アタシが来ました」

 右手に熱気が篭る。近くに居る春袈にも分かる。いや、春袈だからこそ分かる。

「コウヤハルカが依頼した、黒橋緑菜が反乱しちゃったんで」

「反乱……? クーデター?」

「黒橋は失態を犯しました。っていうか……」

 蒼理は、溜息をついて、忌々しげに火柱が上がった方向を睨む。

「何で、同業者を狙うかな、黒橋」

 火柱が上がった場所、まだ爆発の煙が立ち込めている。

 そこに、蒼理が睨んだ本当の理由があった。





「黒橋緑菜。情報流出で拘束する」

 蒼理の組み合わせた両手。今度は冷気がまとわりつく。

「……情報流出で拘束されるのか?」

 状況についていけない春袈が、蒼理の後ろに立った状態で問う。

「あれれ? この町に入った人ともあろうお方が……ずいぶんと基本的な疑問を抱いているんですねー」

 蒼理が両手を前に、睨んだ場所へと突き出す。同時に、氷塊が飛び出す。速球。

 それを見えない壁が弾く。こちらへとさらに速く戻ってくる。

 蒼理の両手には、すでに熱気があった。まるで弾かれるのを分かっていたように。

「この町では、情報の流出はアウト。重要な情報であればあるほど、流出した際の罪が重くなります」

「情報を司る人間たちにとって、最悪で最高の掟、というわけか」

「はい。……っと、ヤバイな」

 キャリーケースを右手に持ち、左へ飛ぶ蒼理。

「貴女方も回避した方が身のためですー。もうすぐそこには」

 蒼理の冷静な声が上空から放たれる。

「火柱が舞い踊る」

 その発言に、半ば反射的に身をそらす春袈たち。

「何なんだ……こいつらは……」

 春袈の呆然とした声が、崩壊したカフェに響いた。





 情報戦士という役がある。

 人間という、情報を司る存在が生み出した、戦闘兵器。

 この、倉中蒼理は、その数少ない情報戦士。

「情報戦士として、黒橋緑菜の反逆は許せません。ゆえに……」

 蒼理から放たれた氷塊と火柱がぶつかりあう。

 エネルギーとエネルギー。爆発が起こる。爆風により、春袈たちの身が吹っ飛ぶ。

「情報戦士は、今までもその姿を現していた……ですが、その姿が確認されたのは、驚くほど少ないんです」

 そう言った蒼理は、なぜか笑みを浮かべていた。

「情報と知識を戦闘用に利用するのは、楽しいです。だって、それは個々の能力に関係なく、個々の知識、情報にゆだねられるバトルですから」

「情報戦士は、情報と知識を使い、戦うというのは聞いた事があるが……」

「はい。それゆえに……」

 蒼理が今まで、座る、開く、といった目的以外に触れる事の無かったキャリーケース。

 そこから、膨大な資料がばら撒かれる。

「アタシ達にとって、情報の量は、そのまま力になります。だからこそ、腕力などでは解決できないような事柄も、情報戦士ならば解決できてしまうのです」

 キャリーケースが明滅する。赤、青、紫、黄、緑、茶……様々な色に変わるキャリーケース。

「このキャリーケースはアタシ専用の情報の引き出しです。金庫、ともいえます。このキャリーケースには、アタシが今まで関わってきた、もしくはアタシが知っている知識、出来事が、たんまりと入っているんです」

 最終的に、キャリーケースが選んだ色は、青。だが、とても薄く、青というより水色に近い。

「アタシ達、情報戦士はこの情報の引き出しによって、攻撃の特性が変わります。たとえば、アタシのキャリーケースは、今、青を選択しました。でも、水色に近い色を」

 キャリーケースから吐き出された資料。それから、とある共通点に見合った資料だけが、蒼理の右手に集まる。

「なので、アタシは今」

 資料は辞書ぐらいの厚さがある。その中から、英文で書かれた1枚の資料が蒼理の目の前に浮かぶ。

「水色のような青……氷の特性をもった攻撃しか使えないんです」

 蒼理の左手。肩まで持ち上げられた手から、氷塊が生み出される。

「本当は、黒橋相手では、こんなのじゃダメなんですけれど」

 浮かぶ資料の文字が青く輝く。

「ま、ニセモノなら、構わないですよね」

 氷塊が蒼理の手から解き放たれる。それと同時に資料の文字が、先程よりも強く、綺麗に輝く。

 未だに燃え続ける火柱を突き抜ける氷塊。

 蒸発して消えることはない。むしろ、火柱の勢いが小さくなっていく。

「氷が炎に勝てない、そう思ったら間違いです。炎イコール水、構いません。ですが」

 火柱が、大きな氷の塊と化す。

「アタシ達は、情報戦士です。常識に囚われない、それが情報戦士なのです」

 常識に囚われていては、情報の真の意味を図ることはできない。

 火柱を起こしたと思われる、その人物は居なかった。

 残ったのは、情報戦士の戦闘によって崩壊したカフェと、情報戦士の戦闘に驚く春袈たち――。





「すいません。イキナリ」

 場所を移し、蒼理が歩くままに、春袈たちは美術都市と呼ばれる都市に入っていた。

(……まずいな。このままいくと、他の国にすら入ってしまう)

 先頭を歩く蒼理が、いきなり振り向く。

「アタシ、実は、情報戦士として、まだまだなんです。見習いで。さっきの戦闘もまぐれです。そんな状態で依頼人さん御一行を巻き込んでしまった事は申し訳ないです」

 金髪をガシガシと掻く蒼理は、俯いてしまっている。

「確か、美術都市には、依頼人さんたちのメンバーが約12人居るんですよね?」

 ボソリと呟かれた言葉。

「え……?」

 蒼理についていった先は、ビル。

「ここに居ますよ。メンバーさん」

「何で、それを……!」

「さぁ? アタシは情報の波で知っただけですから。情報は人々に平等に与えられるんですよ。そのために情報はあるんですから。……では、アタシはこれぐらいで」

 銀色に戻っているキャリーケースをガラガラと鳴らし、アスファルトを革靴を履いた足で踏みしめる。

「ちょ、倉中さん……!」

 春袈が慌てて呼び止めようとするが、蒼理は無視し、歩き続ける。

 最後に一言。



 ――ウォークマンの秘密は、既に光の下――



 そんな言葉を聞いた気がした。

後書き


作者:斎藤七南
投稿日:2011/03/08 12:06
更新日:2011/03/08 12:06
『White×Black=Glay?』の著作権は、すべて作者 斎藤七南様に属します。

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