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作品ID:665
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黄昏幻夢

小説の属性:一般小説 / 未選択 / 感想希望 / 初級者 / 年齢制限なし / 完結

前書き・紹介


一章 一 成ったもの

前の話 目次 次の話

 次の日。

 朝から佑香に無視されっぱなしだった細は、結局ジャムパンを売りつけることもできず、微妙な空気なままに午前中を過ごした。

 昼休みに、昨日と同じように購買に行く。

「……また一つしかない」

 ジャムパンは、人気商品らしく一つしか残っていなかった。お腹がすいているので、買いたい。

「あーあ、これで、ジャムパンが二個あったら万事解決なんだけどなあ」

 ちょっとだけ躊躇して、それからジャムパンを取った。しげしげと見つめてみる。こんなジャムパンという小さなやつにも、世界を動かす力はあるんだなあ、と変なことを考えてみた。

 少しだけ、佑香がジャムパンをほおばって嬉しそうに笑う光景を想像する。

(……そうなりますように)

 絶対にない、と思いながら心の中に願ってみる。

 そして、ジャムパンがあった棚を名残おしく見て、



「……はっ?」



 そこにジャムパンがもう一つあるのに気づいた。





「……ジャムパンを成らせてしまったかも知れんと?」

「そうなんだよ! びっくりだよっ!」

 びっくりしすぎて食べられなかったジャムパンを持ってじーさんのところに走っていくと、じーさんは呆れ顔で細を見た。

「……もっとこう、役に立つものは出せなかったのか?」

「じゅうぶん、いいや、じゅうにぶんにすっげえよ? 佑香との仲を一瞬で元に戻してくれたかんな!」

「……しかし、こうなると、おまえさんに修行を強いる事になるな」

「……修行?」

 浮かれていた細は、怪訝そうな顔でじーさんを見た。

 じーさんは、竹箒を持ってお堂の石段に座った。細も、その前の階段に座る。

「かつてはわしも、魔術士の卵だった。破調が合わんようになって力は使えなくなったがな」

 目を細めながら語り始めたじーさんの顔をさりげなく見ながら、細は寝ないように目をしっかりと開けた。

 こういう話で寝なかったことはない。

後書き


作者:水沢はやて
投稿日:2011/04/30 16:44
更新日:2011/04/30 16:44
『黄昏幻夢』の著作権は、すべて作者 水沢はやて様に属します。

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