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作品ID:743
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俺たちの日常 放課後バトル!!

小説の属性:一般小説 / 未選択 / 感想希望 / 初級者 / 年齢制限なし / 連載中

前書き・紹介


放課後3 無駄に張り合う二人

前の話 目次 次の話







「先輩、私の勝ちです!」



 冬の宣言どおり、目の前に巨大な氷塊が迫る。その距離――――回避不可能。常人の運動神経なら回避など出来ない速度、大きさ、威力。



「避けれなきゃ、防ぐだけだ!」



 啓太は自身の力の姿を素早く変える。その間に、氷塊はどんどん迫る。



「shield、typechange。typeshelter」



 目の前に展開されていた蜂の巣状の歯車が凄まじい速度で移動、形成されていく。それは啓太自身を包み込むように高速で作られていく。



 彼の異能は全て英語で言わないと変わらない。元々啓太は英語の成績が悪いため、時々不能になるが、今回はしっかり発動したようだ。



ガンッ! と包み終わる前に壁と化した歯車に、氷塊が直撃した。氷塊に細かいひびが入る。だが、壁と化した歯車は薄く凍ったようだが、ダメージはない。



「ええ!?」



「簡単な話だ。金属より硬い氷がある訳ねえだろ? 壊したきゃ、温度差で壊すしかねえぜ」



 すっぽりと包まれた文字通りシェルターの中から啓太が余裕の声であざ笑う。冬が地団駄を踏む。



「そんなのアリですか!? 私の絶対零度でどうしろってんですか!? ふっ飛ばしますよ!」



「やってみろ!」



 啓太、お前安全な内部にいてその台詞はかっこ悪いぞ。



「じゃあそうさせてもらいます! 絶対零度!」



 ひびの入った氷塊を持ち上げ、もう一度振り上げる。ひびが瞬時になくなった。無傷に回復した氷塊を両手で、シェルターにスイングする。



「無駄だっての!」



「うっりゃー!」



 何と言ったとおり、シェルターが丸いことをいいことに破壊するのでなく、ボールを打つかのように吹っ飛ばした!



「おわぁぁ!?」



 当然、丸いので大きく仰け反った。そのままごろごろと荒野の彼方に転がっていく。内部の啓太にはどうすることも出来ない。



「ぎゃあああああ!?」



「いい気味ですよ先輩! ざまあみろです!」



 うるさい啓太の絶叫と、冬の勝ち誇った声。



 ―――風翼。



 静かに、凛として響く声。



「ぎゃあああ……あ?」



 ごろごろと転がっていたシェルターが、止まった。というか、反対側から風の煽りを受けてスピードが相殺されたようだ。



「啓太、大丈夫ですの?」



「唯子…か? shelter、modeoff」



 声が聞こえたので、取り合えず形態を解除、通常の翼の形態に戻した。大地に転がる啓太を見下げる唯子の姿。



「大変そうだったから、冬を裏切ることにしましたの」



「え?」



「唯ちゃん!? 裏切るの!?」



 立ち上がる啓太を助けながら唯子は振り返る。いつもの表情の分かりにくい表情が、更に分かりにくくなっている。冬がびっくりしながら二人を見ている。



「さっきまで一緒に戦ってたでしょ! ちょっとひどいよ!」



「わたしくは、自分に素直ですの。冬、覚悟しろですの」



「おい…ちょいと待てや唯子」



「何ですの?」



 立ち上がった啓太は、いきなりの唯子の行動に突っ込みを入れた。



「お前さっきまで俺に意気揚々と攻撃してただろ! いきなり味方になるな!」



「いけないんですの?」



「あ…いや、いけないって訳じゃ…」



 途端に眉をハの字にされて、逆に啓太がうろたえた。責めて来る訳じゃないが、悲しみを込めてじぃ…と見上げられる。



「分かった。分かった、俺が悪かった。だから見上げるのはやめてくれ。何だか世界最低の悪人になった気分だ」



「よかったですの」



「ちょっとー! 何で私抜きでいい雰囲気になってるんですか! 唯ちゃんが裏切るなら私も先輩に味方しますー!」



 おいてけぼりを食らった冬が憤慨したように声を荒げる。他の、主にこの3人に叩きのめされた部員たちは『またか…』と苦笑している。



「何でお前まで張り合うんだよ! っつか冬がいなかったらゲームが成り立たない! 相手がいないだろうが!」



「大丈夫ですの」



「は?」



 ぎゅっ、と唯子が啓太の手を握る。不意打ちだった。心拍数が跳ね上がる。



「な、何だ?」



「わたくしが冬の相手をしますの。啓太は休んでほしいですの」



「上等だよ! 唯ちゃん! 先輩を一人じめは許さないよ!」



 何だか見当違いな方に怒り出す冬。唯子も珍しく怒りを瞳に宿し、更にぎゅっ、と手を握る。強すぎて痛いが、唯子が怖いので啓太は黙った。



「うるさいですの、冬。こないだの一件、忘れたとは言わせないですの」



「……な、何のこと?」



 突然、冬の視線が泳ぎ始める。唯子の眉がつり上がる。ああ、怒り出した。



「やっぱり自覚があったのだと、確信しましたの。許せませんの。冬、本気でわたくしを怒らせましたの」



「唯子、一体何の話だ?」



 話を聞いていても理解できない愚かな啓太は、馬鹿なことに地雷を踏み抜いた。他の部員がジェスチャーで『ストップ!』としていることにも気付かない。



「啓太、啓太もいけないですの。わたくしは、啓太を責めたくないけれど、啓太にも非がありますの」



「だから何が!?」



 啓太を見る唯子の目には、『裏切られた』と書いてある。でも啓太は何のことか分からない。だから混乱する。



「唯子、何か俺したのか? したんなら謝るけど、ごめん分かんない」



「啓太はいつもそうですの…。わたくし、悲しいですの…」



「涙目で言うな! ごめん、何だか分かんないけどごめんなさい唯子! 何か詫びるなりするから涙目で非難はやめて心が痛いから!」



「ほんとですの?」



「俺に出来ることは何でもします!」



 ちなみに啓太はもう土下座であり、これがこの3人の中の彼のポジションである。基本、啓太は冬と唯子には勝てない。



「先輩ずるいですー! というかまた私をナチュラルに無視しないで下さい!」



 武器を消した冬が足早に近づき、啓太も立ち上がる。もうゲーム関係ない。ただの日常風景が広がっている。



「何だ、今回の勝者はまたお前等か」



 時間制限が終わり、今まで昼寝をしていた部長がのそのそと近づき、言う。それと同時、荒野の風景が一瞬で掻き消え、先程の部室に戻った。



 みなの異能も自動的に消える。ちなみに『結界』内での怪我等は、結界がなくなりしだい一切消える。例外は、死んだときだけらしい。死んだら元も子もない、というやつだ。



「ぶちょー…。今回はみんなに奢ってあげてください。俺は辞退しますんで…」



 力なくそう告げ、啓太はがっくりしながら部室を出ていった。その後を慌てて唯子と冬がついていったのは言うまでも無い。



「……相変わらずだな。岡田も、羽村も、佐々木も。まあいい。みな、明日はおれの奢りだ!」



 一年は珍しく勝った事を素直に喜んでいたらしい。



後書き


作者:ゾンビの方程式
投稿日:2011/05/28 14:14
更新日:2011/05/28 14:14
『俺たちの日常 放課後バトル!!』の著作権は、すべて作者 ゾンビの方程式様に属します。

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作品ID:743
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