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作品ID:754
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White×Black=Glay?

小説の属性:一般小説 / 未選択 / 感想希望 / 初級者 / 年齢制限なし / 連載中

前書き・紹介


White×Black=Glay? ?10.2色目?

前の話 目次 次の話

 比べるべき対象がなかったというべきか。

 それとも、比べる必要性がなかったというべきか。

 実は、まだ、悩んでいる。





「White×Black=Glay、か」

「あれ、どうしたの、たてちゃん」

「だから、たてちゃんはやめろと……はぁ。……いや、そろそろウォークマンの秘密が表にでてもいいような気がして……」

「あー。そろそろかなぁ? って? そりゃ、気になるよね。あのウォークマンだもんね」

「桐生刹那が所有していたはずのウォークマン……今は、どこにある?」

「その答えがないから、今、こんなに必死になって探してるんじゃん……NEVの獅子召喚術なんかに使われちゃ、大変だからね。アレ。悪用されたら、核兵器よりも威力あるし」

 赤と黒のツートンカラーが一番の特徴だろうか? あぁ、あとは堅苦しい口調か。

 朝龍 楯羽(あさりょう たては)と名づけられた自分は、一枚の顔写真付き資料を見て、溜息を吐く。……溜息を吐くと幸せが逃げる? はっ。そんな迷信を信じるほど、自分は純粋ぶってるつもりはない。

「朱坂ハルカ……。精神確立論を提案した天才……彼女も獅子召喚術推奨派だよな?」

「うん。ウォークマンを殺そうと考えるバカなやつ」

 そこまで言うか。思わず思ってしまう。

「あいつらは気づいているのか? White×Black=Glayの意味を」

「気づいてるわけないじゃん? だって、そのキーワードを知る子たちがすっごい近くに居るのに、それすらも気づかない……。それなのにどうやって気づけと?」

「あー……ムリだねぇ」

 ベージュ色のソファしか置かれていない、その部屋には、現在、自分と目の前に居る少女の2人しか存在しない。

 少女は、ブラウンに染めた(らしい)ショートヘアーを手でもてあそびながら、自分が見る資料を覗き込む。

「……桐生刹那が手放したウォークマン……オークションとかにかけられてなきゃ、いいんだけどね」

 少女はなんとなく声にしただけなのだろう。

 だが、自分には、なんとなく、で済むような問題には思えなかった。

「鋭意早紀に連絡……!」

「え?」

「いいから、早く、早紀に連絡しろ! ……NEVの召喚術がもし、ウォークマン抜きで実行されたとしたら……!」

 取り返しがつかないことになる。





 レオというのは、獅子。

 獅子というのは、レオ。

 天使と悪魔が意思共有して初めて、生まれる唯一の召喚獣。

 その召喚獣を再び封じ込めるには……!!



「羽夜華……。現時点で、私たちにレオを倒すことは不可能」

 鋼夜春袈は、この魔法都市に共に訪れたメンバー、桃風羽夜華に作戦を伝える。

「でも、唯一。唯一、レオに対抗できる、その作戦がある」

 その言葉に羽夜華は、春袈の方を見る。といっても、目の前にレオと思わしき怪物が存在する。チラ見程度だ。

「……羽夜華、ユニコーンって知ってる?」

「え、ええ。はい。天使同士が意思共有して、初めて生まれる召喚獣……」

 そこで、羽夜華が春袈の思考を読み取ったように息をのむ。

「まさか、ユニコーンを召喚しようと!?」

「あぁ……! じゃないと、レオを封じ込めれない……」

「む、無理です! アタシは、リーダーと同じ天使じゃないです! リーダーと意思共有しても……!」

 たしかにそうだ。羽夜華は天使じゃない。一般人だ。だが、それでも。

「このまま、レオを放っておくのか!? そんなことしたら、この魔法都市が壊滅するぞ!!」

 春袈が叫ぶ。……この怪物を放っておけば、魔法都市も、自分たちもなくなるのは分かりきっている。

 だから。

「やってみるだけ、いいだろう! それに、レオが私を攻撃している時点で、おかしいんだ!」

 天使と悪魔の意思共有。それによって召喚されるレオは、基本、そのどちらの味方にもなる。

 だが、天使である春袈に攻撃してくる。

(NEVの獅子召喚術は、まだ欠陥があるのか……!?)

 その意味すらもわからない、獅子召喚術。

 それによって、強制的に召喚されたレオは、敵も味方も関係なく、攻撃をしかける。

 狂った怪物。狂ったレオ。

 それを止められるのは、完全なるユニコーンのみ。

「ユニコーンならば、この不完全なレオも止められるかもしれない!!」

「でも、アタシは……!」

 迷う羽夜華。思わず、唇を噛む春袈。その春袈の視界の端で……。

 何かが切れた。

「羽夜華ぁ! 避けろ!!」

 いつの間にか、怪物の大砲の照準が、春袈から羽夜華に変わっている。

 充填されたエネルギーが羽夜華に襲いかかる。

 視界を覆う強烈な光。大きなクレーター。

「は、羽夜華!?」

 熱をもつエネルギーの中に突っ込む春袈。

「羽夜華! 羽夜華!」

 体をゆすり、意識を失った羽夜華を確認する。

(……あぁ)

 光の中から羽夜華を救出し、少しずつ消えていく光の向こうに怪物を捉える。

 その心中をうめるのは……単なる呆れ。

(お前は、本当に狂っているんだな……)

 絶対に、許さない。

 大事な、大事なメンバーを、羽夜華を護れなかった自分。

 羽夜華を狙った、怪物。

 でも、その怪物を潰す術は……!



 プツンッと。

 春袈の何かが、また、切れた。





「……はぁ。なんでこうも、NEVに関わることが多いのかしら、私は」

 呆れ顔の春袈……ハルカ。

「私、もう死んでんのよぉ? わかってんのかしら、この子は」

 朱坂ハルカと名乗る彼女は、春袈に宿る、意識体。

 生前は、天才と呼ばれていたハルカ。

「あらあら。私のつくった獅子召喚術、こんなに進んじゃってるのぉ? ……ま、未完成っぽいけどね」

 ハルカは獅子召喚術を提案した本人だ。

 だからこそ、ハルカが止めなければいけない。

「未完成の獅子召喚術……もぉ。まだ、ウォークマンないでしょ? なのになーんで、実行させちゃったのかしら」

 ウォークマン。その単語に、怪物の肩が震える。

「フフッ。アナタ……ウォークマンの影響を受けてない未完成なのね? そう……。大変だったでしょう? アナタの意思を聞いてくれるような存在がなくって……。でも、知っちゃったのよね? ウォークマンなら、自分の意思を聞いてくれると。だから、今、こんな暴走をしているんでしょう? そうよね?」

 ウォークマン。それがなければ、本当の意味でのレオなど、誕生しないというのに……。

「……春袈ちゃん。貴女……少し、急がなくっちゃね? これ以上、被害が拡大しないように……」

 まぁ、自分、朱坂ハルカが、この鋼夜春袈という少女の体をのっとっている間は、ハルカが何をしても、春袈には、何も伝わっていないが。

「まぁ、でも、獅子召喚術を提案したのは、私だしねぇ……。未完成レオを排除することぐらいは、手助けしてあげますか……」

 武器も構えない状態で、怪物に近づく。

 もしも、羽夜華が攻撃を受けておらずに、意識を失っていなかったら、危ないとでも叫んでいただろう。

 だが、ハルカには関係ない。

 ハルカが提案した獅子召喚術で、生まれたレオ。

 そのレオが暴走している。

 ユニコーンが使えない以上、それを止められるのは、根本にある獅子召喚術を提案したハルカしか居ない……。

 その春袈の意思により、今のハルカは動いているに等しい。

「ったく。私はね、ヒマじゃないのよー?」

 とっくに怪物の攻撃範囲内に足を踏み入れている。

 だが、怪物は動かない。

 動けない。

「……ねぇ、未完成レオ君。ウォークマンが恋しいんでしょ? 自分の意思を聞いてくれる唯一の存在が……。でもウォークマンの所持者であった桐生刹那は行方不明。……あぁ、この子は知らないのか。桐生刹那が行方不明になったと……。まぁ、いいわ。……桐生刹那が行方不明になった今、同時に行方不明になったウォークマン。それを探す存在、それがこの子だったのね? 獅子召喚術の提案者である私、朱坂ハルカを体内に宿し、自らも自分の意思でウォークマンを探そうとしていた……。そして、この獅子召喚術に辿り着いた。……まるで運命ね。鳥肌たっちゃうわ」

 怪物の目の前に立つハルカは、少し背が高い怪物を見上げて諭す。

「ウォークマンの件は、この子がどうにかしてくれるわ。そして、アナタのような被害者達を救ってくれるはずよ。大丈夫、信じて。この子は、元NEVだけど、それだけにNEVの本性を見抜ける能力には突出しているの。……ウォークマンは、この子に任せて。アナタは、この子がウォークマンの秘密を暴くまで、少しだけ、落ち着いてくれればいいの。あとは、この子がやるわ」

 大砲の構えを解き、ゆっくりと怪物が後退していく。

 ハルカに背を向けて、歩き出していく怪物の後姿を見ながら、ハルカは呟く。

「そう……未完成レオなんかが、ウォークマンに手出しするのは、間違っているの」

 そこで、溜息。

「はぁ……。それで、貴女も来たんでしょう? ……朝龍楯羽さん?」

 朝龍 楯羽(あさりょう たては)。

 怪物の攻撃により、崩壊寸前のビル。その陰に居る女性。

「ウォークマン抜きでは、獅子召喚術は、本当の完成をみない……そう、思って」

「……さすが、朱坂ハルカ、って言ってもらいたいのか?」

「あら。相変らず、かたっくるしい言葉遣いね、たてちゃん?」

「たてちゃん、たてちゃん、言うな。私は、朝龍楯羽だ」

「分かってるわ。愛称っていう単語を憶えなさい。……で? 貴女の用は、どちらに関係するのかしら?」

 その問いは、確かに、鋼夜春袈か、朱坂ハルカか、という意味を含む。

「私は、鋼夜春袈に用があるんだ。貴様は退け」

「あら、なぁに、その言い方?」

「そのままの意味だ」

「もう、女の子なんだから、もう少し、可愛らしくしましょ?」

 ……その言葉を最後に、朱坂ハルカは鋼夜春袈に変わった。



「鋼夜春袈、か?」

 気がつくと、あの怪物は居らず、代わりに赤と黒のツートンカラーが特徴的な女性が立っている。

「……鋼夜春袈かと聞いているんだ」

 女性の瞳には、力強い意思が感じ取れる。真っ黒に輝く瞳。吸い込まれそうなほどに綺麗。だけど、純粋な綺麗さじゃない。汚いものを見てきたような、そしてそれを受け入れた綺麗さ。

「……聞いているのか?」

 その力強い言葉に、頷いてしまう。



 そして。

 その行動こそが、私、鋼夜春袈に隠された秘密とウォークマンの秘密のヒントを得ようことになるとは、私を含め、誰も、予想できなかったのだ。



後書き


作者:斎藤七南
投稿日:2011/06/09 21:39
更新日:2011/06/09 21:39
『White×Black=Glay?』の著作権は、すべて作者 斎藤七南様に属します。

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