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作品ID:763
「欠片の謳 本当の欠片の謳」へ

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欠片の謳 本当の欠片の謳

小説の属性:一般小説 / 未選択 / 感想希望 / 初級者 / 年齢制限なし / 休載中

前書き・紹介


穏やかな笑い声の謳

前の話 目次 次の話







「そっちだっ! 逃がすな!」



 視線の先に、何人かの自警団が走っていく。インカムを使って連絡しあって何かを追っているようだ。それを時哉は無気力に見つめている。そして隣にいる同じ学校の女生徒に話しかける。



「なあ、霞夜。俺たちも手伝うべきか?」

「必要ありませんね。そんなことに無駄な弾丸を使うべきではありません」



 極めて冷静かつ正論が返ってきた。長い茶髪を振り、とことこと歩いていく。相変わらず表情に乏しい奴、と時哉は思う。黙っていることも多いせいか、過去に人間大アンティークドールに間違われたこともある見た目。整った顔立ちは、表情に乏しい。基本何処か儚いようなそんな印象の少女。名を天音霞夜という。時哉の古馴染みであり、よく一緒に仕事をする同僚でもある。



「速いな」

「当然でしょう? 迅速な判断こそ私達に必要な技術。時哉、貴方は本当に呆れますね」

「お前に言われたくねえ」

「何ですって?」



 むっ、として霞夜が時哉を睨み上げる

。と言っても、迫力は皆無、子供がむくれている様にしか見えない。時哉が苦笑して自分より頭一つ分小さい霞夜の頭をぽんぽん撫でる。



「はいはい頼みますよ相棒さん。よしよし、いい子いい子」

「時哉!」

「怒るなって。ほらほら」

「や、やめなさい! 私は決してこのような懐柔には屈しません…」

「いや、懐柔違うぞ霞夜」



 微妙に嬉しそうに怒る霞夜の頭を撫で続ける。霞夜は頭を時哉に撫でられるのが好きらしい。指摘すると銃を乱射してくるので禁句であるが。赤い顔して頭をぐりぐり押し付けてくる霞夜は可愛いなぁ…とか思いながら時哉じゃ提案した。



「霞夜。パタポ屋行くけど来るか?」

「行きます」



 すぐに返答が返ってきた。霞夜は甘い物が大好きだ。特に菓子パンが大好きで、昼食は菓子パンを山のように平らげることが多い。ちなみにパタポ屋とは近くにある喫茶店のことだ。放課後、フリーの時はいつもそこで遅くまで駄弁っている。彼女と一緒にいる時間は大切なので、なるべく優先している。



「行きましょう」

「はいはい」



 ぐいぐいと引っ張る霞夜の手で時哉は移動した。

















「では、いただきます」

「……」



 霞夜と一緒に入ったパタポ屋。席に案内され、時哉は唖然とした。理由は、向かい側に座った霞夜の目の前に鎮座する巨大な物体のせい。



「霞夜、マジで全部食うのか?」

「当然です」



 巨大な山のようなパフェだった。アイスにバナナにチョコにウエハースにナッツに……と何だかカオスな内容かつパフェにあるまじき見た目。試作品らしいのだが……人間の食うもんじゃないと時哉は確信した。ヤバい。食うもんじゃない。だが、霞夜は躊躇なくそれを口に運んだ。



「……血糖値上がりすぎて頭ん中の血管切れても知らねえぞ」

「言ってなさい時哉。甘いものを好まない人種は『野良』と同等の価値、いえ下です」

「最早路傍の石以下かよ!」

「その通りです」

「そんだけ食って何でか見た目成長しないよな…。いつまでもクラスの女子に中学生扱いされんだろうなぁ」

「何か言いましたか?」

「別に」

「いいえ言いました。時哉、脳漿ぶちまけて死にたいですか?」

「結構だ。このロリが」

「時哉、喧嘩売ってますよね?」

「ああ、売ってる」

「殺しますよ?」

「うるせえんだよこの中学生のロリ女。断崖絶壁大平原とでも言ってやろうか?」

「………私の気にしていることを、ずけずけと」

「だからなんでんなこと気にするんだ? 一々めんどくせーな女てのは」

「喧嘩売っておいてなんですかその言い草は?」

「お前の見た目はしょうがないだろ。いいじゃん中身は大人なんだし」

「…いいでしょう。今のは聞かなかった事にします。次は余計なことを言わないように」



 強制的に会話を終了させて霞夜は食べるのに集中した。その様子を時哉はじっくり眺めているのだった。

後書き


作者:FreeSpace
投稿日:2011/06/12 15:03
更新日:2011/06/12 15:03
『欠片の謳 本当の欠片の謳』の著作権は、すべて作者 FreeSpace様に属します。

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