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作品ID:779
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White×Black=Glay?

小説の属性:一般小説 / 未選択 / 感想希望 / 初級者 / 年齢制限なし / 連載中

前書き・紹介


White×Black=Glay? ?11色目?

前の話 目次 次の話

 ――いいから、逃げるぞ!!

 どうして?

 ――もうすぐ、ここには……

 待って! あそこには、私の大切な人が居るの!!



 目が覚めたとき、それが夢だと気づいた。

 また、だ。

 こういうような、夢を見るのは初めてじゃない。

 だから、大丈夫。





「やはり、来たか。……倉中蒼理」

「あ?。NEVの戦闘部員だぁ?。こんなとこで何やってるんですかぁ。……朝龍楯羽さん?」

 黒と赤のツートンカラーが特徴的な髪をポニーテールに結った、朝量楯羽と、金髪をツインテールに結った、倉中蒼理が、真正面から向き合う。

 黒い瞳と青い瞳が、ぶつかりあう。

「……変わらないな、蒼理」

 黒い瞳の持ち主、楯羽が、蒼理に馴れ馴れしい口調で話しかける。

「あれれ?? アタシは、NEVなんて忌々しい組織の人と関わりあったことなど、記憶にないんですけどぉ?」

「ごまかすな、蒼理」

「……ムカつきますね。やーっぱりNEVはキライですー」

 青い瞳の持ち主、蒼理が、楯羽を睨む。その雰囲気は、黙っていろと言いたげだ。

「お前が嫌いなのは、今のNEVだろ?」

「……ムカつく。なんで、黙らないんですか。あれですか、バカだから、黙れっていうオーラを感じ取れないんですか。NEVの戦闘部員がそんなことで、いいんですかぁ?」

「口を慎め、蒼理」

「黙れって言ってるのは、コッチなんですけどぉ?」

 楯羽は馴れ馴れしく話しかけるが、蒼理には、それほどの関係を楯羽と築いた記憶はない。

 そう。忘れているだけ。

「……ヴィヴィッド」

 そう。忘れていただけ。

 ヴィヴィッド。その言葉で、なくしてしまった記憶は、簡単に蘇ってしまう。



 自分たちが、そこについた時には、もう、遅かった。

 目の前には、頭を抑えて悶える、金髪の少女と、それを見下す黒と赤のツートンカラーの女性が居る。

「倉中っ!!」

 鋼夜春袈が、蒼理に走り寄ると、蒼理の顔色が真っ青なのに気づいた。

「コ、コウヤ、ハルカ、さん?」

 途切れ途切れの声で、必死に春袈の名を呼ぶその姿に、目を背けたくなる。

「朝龍楯羽……!!」

 緊迫した声は、春袈と共に、この地、ネイブルランドにやって来ている桃風羽夜華という少女のもの。

「どうして、ここに朝龍楯羽が!?」

「羽夜華。やっぱり、私の思ったことは、残念ながら……当たっていた」

 本当に残念だ。当たってなければよかったのに。

「朝龍楯羽。貴様は、私の中に存在する何らかと接触し、接触した時点で、次の段階に進む予定だったはずだ」

 ネイブルランドに吹く、生ぬるい風を受けて、春袈の金髪に黒のメッシュが入った髪が揺れる。

「だが、NEVの獅子召喚術にウォークマンが必要だと知って、貴様は焦った。……私の中に居る何かでしか、獅子召喚術を完璧なる成功に導くことはできないのだから。そして、私を押しのけて、私の中の何かが、表に出てくれば……私は、表に出させることに反抗し、反抗した力が暴走する」

 春袈の腕に抱かれて、うずくまる蒼理の顔色は、まだ良くならない。

「仕方なく貴様は、私の中の何かに、接触し、獅子召喚術の完全なる成功へと導くキーワードを手に入れようとした。だが、その何かは、口を割らなかった。……だから、倉中蒼理をおびき寄せ、その存在を、この羽夜華に分からせた……」

 桃風羽夜華という人物の特徴は、楯羽も知っていただろう。

 羽夜華は、何度もNEVのデータベースに侵入していて、NEVの中では捕獲最優先対象になっている。

 NEVの戦闘員である楯羽がそのことを知らないはずがない。その姿も。

 そして、羽夜華は春袈と行動を共にしている。

 春袈の行動を追えば、羽夜華とぶつかるのは当たり前。

 だから、羽夜華を利用した。春袈では、倉中蒼理の存在を認識した時点で、なぜか、と疑問を抱き、単独で行動してしまう可能性があったから。

 だが、羽夜華は違う。羽夜華には鋼夜春袈という存在がある。その存在に報告しないまま、単独で動く権限も、動機も、羽夜華にはない。

「羽夜華が私のところへ報告しに行ったことを確認すると、倉中蒼理と接触した。倉中蒼理は、私も最重要書類の運び屋として選んだ人物だったから。もしかしたら、倉中蒼理が、私の中にある何かと接触していたのではないか……そう考えて。だが、倉中蒼理は……」

 春袈が自分の腕の中に居る蒼理を見て、呟く。

「お前が望んだ答えを出さなかったんだろう。だから、何らかの方法でこういう状態に追いやった……」

 蒼理の顔色は、良くなりつつある。一過性のものだったのだろう。

「いくら、情報収集のためとはいえ……蒼理の記憶を揺さぶるような方法をとったのには、理由がなければ」

「その理由次第では、倉中蒼理をどうしてもいいと? 自己中心的考えにも程があるぞ」

 楯羽の言い訳を、春袈は切り捨てる。

 だが、その言い訳に疑問を抱く。

「倉中蒼理の記憶とは、なんだ? それだけで、倉中蒼理をこんな目に?」

「蒼理は、直接NEVに関係があったわけではない。だが、私という存在を介して、NEVと関係があった。……蒼理は、それを忘れていた。それから、あの実験のことも」

「実験?」

 その問いに、ゆっくりと頷いた楯羽の目が伏せられた。

 その動作で、春袈は、なんとなく蒼理の方を向く。



 ミュージック・ヒューマンという実験があった。

 音楽と記憶力に長けた人間を造りだす、この実験の被害者は、現在3人。

 チームの参加者である、草花舞葉が、この実験の被害者としてあげられる。

 その実験に何故、倉中蒼理が関係あるのか?

「かつて、聖杯人と呼ばれた少女が居た。その少女は、蒼理の義理の妹だった。……蒼理は、その少女がミュージック・ヒューマンの被害者と知って、単身、NEVに攻め込んできた」

 たった1人の少女が、巨大な組織であるNEVに、攻め込んできた。

 NEVは、その少女を簡単に追い払えると、信じていた。

 だが。

「蒼理は、NEVの中でも、優秀な戦闘員たちを、たった1人で倒し、NEVの司令部にまで乗り込んできた」

 その事態にNEVは、焦ったはずだ。

 しかも、乗り込んできた少女は、数少ない情報戦士。

 その情報戦士が有する情報によって無限大に、無制限に、無規則に戦闘を始めとした、ありとあらゆる能力値が変化する、情報戦士は、NEVでも対処しきれなかった。

「情報戦士がもつ、その凄さ。それは私たちNEVには、手に負えないものだった。……それを理解しても尚、NEVは、蒼理に噛み付いた。……結果は、蒼理の勝利」

 たった1人の少女が、たった1人でNEVという組織に勝利した。

「その際、蒼理は、触れてはいけぬものに触れてしまった。……それが、ウォークマン」

 友人の手元から離れ、その所在が不明だったウォークマン。

 それが、NEVにあったとは……。

「ウォークマンに触れた蒼理は、その情報をすぐ読み取った。ウォークマンの情報機器としての能力は高い。その分を情報戦士として受け取った場合、情報戦士はあまりに重たすぎるデータを受け取りきれず、意識不明になることもある。だが、蒼理は……」

 意識不明になるはずだった蒼理。

 だが、楯羽が見た現実は。

「蒼理は、記憶喪失程度で済んだ。記憶喪失の範囲は、NEVに攻め込んでから、ウォークマンに触れるまで」

 ウォークマンに収められたデータ全てを、その身に移した蒼理は、記憶を失った。

「それから、NEVは私を蒼理の監視者として配置した」

 記憶を失った後の蒼理は、記憶を失う以前の性格を引き継ぎながらも、新たな倉中蒼理を作り出していった。

「最初は、義理の妹が実験の被害者になり、廃人同然になっていたから、暴れまわっていたが、時が経つにつれ、その凶暴さは見えなくなった。今では、情報の運び屋として、遠いところに“遠征”と称して、旅に出るぐらいだ」

 記憶を失っても尚、情報戦士としての記憶は残っている。

 それを糧とし、情報を運ぶ職についた蒼理は、“遠征”をしていた。

「だが、蒼理は、原因不明の病気にとり憑かれた。それを報告した私に告げられた原因。それは、過去の記憶喪失」

 突然、訪れた病魔。原因不明と診断されたが、NEVの調査によって、原因は、過去に失った記憶と診断された。

「蒼理自身は気づかなかったのだろう。……いや、気づかない。気づけない。過去に失った記憶は、重たすぎるもの。だから、それを失ったことでできた欠落により、蒼理は病気になった」

「……病気とは?」



「……精神系の、病気」

 腕の中から聞こえた、かすれた声に、顔を向ける。

 うっすらと目をあけた、蒼理が、口を開き、伝えた言葉。

「アタシ、精神の病に陥ってました。……まさか、それが、原因だった、なんて」

 途切れ途切れ。それでも伝えようとする言葉の羅列。

「思い出しました……。アタシ、あのコ、裏切りました……」

「裏切り……?」

「はい……」



 ――いいから、逃げるぞ!!

 どうして?

 ――もうすぐ、ここには……NEVが来る!

 待って! あそこには、私の大切な人が居るの!!

 私の……私の義理の妹が居るの!!

 あのコを置いていけないよ!!



 悲痛な、叫び声。

 苦しみに歪んだ顔。

 歪めた顔は、幼く、少女のもので。

 少女の手を引っ張る少年は、少女を、どこかへ連れて行こうとする。

 それから逃れようとする少女。

 少女は、背後を振り返り、そこに建つ一軒の家に視線を注ぐ。



後書き


作者:斎藤七南
投稿日:2011/06/20 08:45
更新日:2011/06/20 08:45
『White×Black=Glay?』の著作権は、すべて作者 斎藤七南様に属します。

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