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作品ID:822
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White×Black=Glay?

小説の属性:一般小説 / 未選択 / 感想希望 / 初級者 / 年齢制限なし / 連載中

前書き・紹介


White×Black=Glay? ?14色目?

前の話 目次 次の話

 情報戦士の情報の引き出しというのは、その当人によって変わる。

 あの倉中蒼理のようにキャリーケースを引き出しとしている者も居るし、人によってはスピーカー、ノート、携帯電話、パソコンなどを引き出しとしている場合もある。

 もちろん、それらには必ず共通点が存在する。



「共通点?」

「はい。予想段階ですけど……情報の引き出しは、必ず何らかの情報を伝えるもの、なんです」

「……」

 上下ジャージ姿の鋼夜春袈と桃風羽夜華は、今、自分たちが居住するログハウス、春袈の自室に戻ってきていた。

 2人は部屋に置かれた木製の椅子に、向かい合うように座っている。

 似たような姿の2人だが、違う点をあげるなら、春袈は金色に黒のメッシュを入れた髪を後ろで小さく結って、羽夜華はロングの黒髪をそのまま下ろしている点だろうか。

 羽夜華の説明を受けた春袈は、その顔に疑問の表情を浮かべた。

「えーと……?」

「たとえば、倉中さんのキャリーケース。あれは旅行用の鞄として広く知られてますけど、少し見方を変えれば、キャリーケースというのは荷物を運ぶためだけのもの、になるんです」

「……」

「で、その荷物には、荷物の所有者の過去とか現在とか全て詰まってます。たとえば日焼けして茶色く変色してしまった文庫本。あれはそれなりの年月を知らせてくれます」

「……」

「つまり、キャリーケースに積む荷物は、荷物1つ1つに所有者の全てが詰まってる。そして荷物1つ1つは所有者の全てを語る。先ほど言った文庫本の話も、いつから所有者がその本を持っているのか、そういう情報を与えます。語る」

「……」

「他のもそうですよね? たとえばスピーカー。あれは音楽を大勢の人々に伝える役割をしている。音楽という情報を伝えている。他のものも言えます」

「……つまり、情報の引き出しは、必ずそういった点を持っている、と?」

「多分。予想なので分かりませんけど……」

 羽夜華はそう言ったが、春袈はそう思わなかった。

 確かにそうかもしれない。電子機器はもとから、ノートだって情報を書き込む。やがてそのノートは凄い量の情報が詰まっていく。

「……私は残念ながら、そこまで頭回んないけど……。羽夜華、キャリーケースを思い出させるのに、いい方法があるって言った、よね?」

「はい」

「その方法……それは絶対に思い出させることができる方法?」

「いえ。確実、絶対とは言えません」

「そっか」

 その言葉に素直に頷いて、春袈は腕を組んだ。

「絶対なんてないもんだし……。その方法って?」

「……情報戦士にとって、情報の引き出しは特別かつ大切なものだと思うんです」

 そこで春袈は蒼理のあの言葉と表情を思い出していた。

 ――このキャリーケースはアタシ専用の情報の引き出しです。金庫、とも言えますけどね。このキャリーケースには、アタシが今まで関わってきた、もしくはアタシが知っている知識、出来事が、たんまりと入っているんです。

 嬉しそうに、大切そうな表情を浮かべて蒼理はそう確かに言った。

 その光景を思い出したから、春袈は羽夜華の言葉に頷いた。

「たとえ記憶がなくなろうとも、必ずどこかで大切な特別なものって覚えてると思うんです」

「……うん」

「なので、その大切なものに関する情報を与えるなどの行動をすれば、思い出すと思うんですけど」

「? 思うんですけど?」

「……ここ、ヴィルヴェスタ国の記憶喪失者の症例を全て見ました」

 両手を組んで、羽夜華は俯く。黒髪が肩から少しだけ落ちる。

「その全て、というわけではないですが、少ないとは言えない数が出ました。数を求めたのは……喪失感の反動のショック」

「どういうことだ?」

「大切なものを持っていて、突然記憶が無くなって、擬似的に失っていればいいです。でも、それを思い出したとき、多分、私もそうなると思うんですが……もう、言いようのないようなショックを受けると思うんです。大切なものを忘れていて、失っていて、それでも自分はそのまま日々を過ごしていて。その大切なものを思い出したとき、なんでそんな大切なものを、ことを忘れてたんだろっていう疑問になると思うんです。そして、それは多分、どこかでショックに変わる……」

「大切であればあるほど、ショックは大きくなる?」

 俯いたまま、コクンと頷いた羽夜華。

「多分。もちろん、大切、の基準や程度は個人にゆだねられるものですが」

「そりゃそうだ。全員が全員同じ基準だったら、面白くないじゃないか」

「それは分からないですけど。……多分、倉中さんにとってキャリーケースってそういうものなんじゃないでしょうか」

「……」

「そうだとしたら、思い出させるにしても……」

「怖い、な。迷いを覚える」

 コクリと頷いた羽夜華。いまだ俯いたままの彼女を見て、春袈は右側にある窓に顔を向ける。

 あのとき、蒼理がキャリーケースのことを話したとき、浮かべた表情を、また思い出して、目を閉じる。

「でも、思い出させないと……」

 どこか焦ったような声で羽夜華は言ったが、春袈は首を横に振った。

「それは……。無理に思い出させようとすれば、ショックも大きくなるだろうし」

「でも、リーダー」

「確かにキャリーケースのことを思い出してくれないと、始まらない。情報戦士であることは覚えているんだから、自然と情報の引き出しのことは疑問に思うとおもうけど」

 それを待つしかない、そう続けた春袈は、内心苛ついていた。

 蒼理の記憶の欠陥。情報戦士であることは覚えているのだから、キャリーケースのことだって覚えているだろうと思っていた。

 それなのに。

 キャリーケースのことを思い出せば、戦力にもなるし情報源にもなる。ウォークマンにだって、近づくかもしれない。

 そして、現時点で春袈には、確認しておきたかったことがあった。

「……ウォークマンの秘密は、既に光の下」

「はい?」

 俯いていた羽夜華が、春袈の呟きに反応して、顔を上げる。

「倉中が以前言っていたんだ。そう、聞こえただけだと思うけど」

「倉中さんが?」

 意外そうに羽夜華は目を見開く。

「もしそう聞こえたのが、本当にその言葉だったとしたら……。情報戦士である倉中が言ったことだ。信じる価値はあると思うがな」

「そう、ですね」

 少しの時間をおいて、羽夜華が椅子から立ち上がる。

「どうした?」

「いえ。……ウォークマンの秘密が、倉中さんの言うとおり、本当に誰かに知られてるとしたら、放置しておくわけにはいきません」

「ってことは……」

「ウォークマンには記録機器としての能力もあると倉中さん、言ってましたよね?」

「あぁ。私も4年前、何かを読み込むウォークマンを見たし……」

「なら、簡単です」

 自信に溢れた顔で羽夜華は頷いた。

「……ウォークマンの秘密、まではいきませんが、関連を調べます。少し時間かかると思いますけど」

「構わない。どーせまた、データベースに侵入ーとか言い出すんだろ」

「はい」

 笑顔で頷く羽夜華に、苦笑いして、春袈も立ち上がる。

「何か得られたら、すぐ呼んで。私はキャリーケースを探してみる」

「え、でもリーダー、キャリーケースのことを無理に思い出させるのは危険みたいなこと、言ってたじゃないですか?」

「大丈夫。倉中に聞くんじゃない。自分で探すんだよ」

「探すって……アテは?」

「ん? ない」

「ないって……」

 呆れたように羽夜華は額に手をやる。

「でも、保護したとき、倉中はキャリーケースを持ってなかった」

「そう、ですね」

「つまり、それ以前。保護する以前、ってことになる」

「……まさか」

 その言葉に羽夜華は何かを察したのか、春袈を見る。その視線には何かを訴えるものが含まれていて。

「ダメですよ。倉中さんを保護した現場に戻るなんて。危険すぎます」

「えー」

 あっていたのか、不満そうに口を尖らせる春袈。

 羽夜華は溜息を吐いて、手を下ろす。

「キャリーケースも調べておきます。キャリーケースとウォークマンなら、キャリーケースのほうが調べやすいです」

「……分かったよ」

「で? リーダーは、ここに居ますよね?」

「うん。することないし。屋根の修理しときます」

「まだあるんですか」

「うん。あと残り25ぐらい」

「それほぼ全部じゃないですか!」

 会話をしながら部屋を出て、廊下を歩く2人。

「じゃ、私、自室に篭ります」

「うん」

「所要時間は……3日間かそこら」

「分かった」

「じゃ、誰も入れないでくださいね。気、まぎれちゃうんで」

「分かったよ」

 苦笑いして、春袈は部屋のドアを閉めた羽夜華の後姿を眺め、しばらくそこに突っ立ってから、後悔した。

〈さっき、部屋から工具箱とってこればよかった……〉

 春袈の部屋と羽夜華の部屋は、同じログハウス内なので、そう遠くはない。だが、もう1回戻るのは億劫だった。

〈仕方、ないか〉

 だが、工具箱がなければ屋根修理はできない。

 ならば、屋根修理以外をやればいいのでは? と思うだろうが、残念ながら、春袈には屋根修理以外することがないのだ。決してヒマなのではないが、それしかやることがないのだ。

 振り向いて、廊下を歩き、部屋へと戻る。

 だが、その足が止まる。

 ジャージのポケットに入れた携帯が震えたから。

「……」

 疑問に思いながらも携帯を見る。サブディスプレイに表示されたのは……倉中蒼理。

「……もしもし?」

『春袈、さん』

「どうかした?」

 電話越しだから、というわけではないだろう。蒼理の声が沈んでいる。

『……樹析が……』

 小さく呟いた言葉。いや、それは名。

 倉中蒼理という存在にとって、大切な名。

『樹析が、NEVの実験に……!』

 緊張した声が電話から響く。

 樹析、その名を聞いたとき、春袈の視界がクルリと反転したような感覚に襲われた。



後書き


作者:斎藤七南
投稿日:2011/07/26 17:50
更新日:2011/07/26 17:50
『White×Black=Glay?』の著作権は、すべて作者 斎藤七南様に属します。

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