小説を「読む」「書く」「学ぶ」なら

創作は力なり(ロンバルディア大公国)


小説投稿室

小説鍛錬室へ

小説情報へ
作品ID:825
「White×Black=Glay?」へ

あなたの読了ステータス

(読了ボタン正常)一般ユーザと認識
「White×Black=Glay?」を読み始めました。

読了ステータス(人数)

読了(11)・読中(0)・読止(0)・一般PV数(122)

読了した住民(一般ユーザは含まれません)


White×Black=Glay?

小説の属性:一般小説 / 未選択 / 感想希望 / 初級者 / 年齢制限なし / 連載中

前書き・紹介


White×Black=Glay? ?14.3色目?

前の話 目次 次の話

 その部屋には、紙をめくる音と人が呼吸する音しか音、と呼べるものは存在していない。

 部屋の空気は重く、暗く、椅子に座る金色に黒のメッシュを入れた女性と、こちらは立ったままの日本人を思わせる長い黒髪を下ろしたままの少女が、どちらも無言を貫いていたその状況で、先に口を開いたのは、女性のほうだった。

「……全部4年前からか?」

 椅子に座ったその女性の名を、鋼夜春袈。

 春袈の手には、1束の書類と、手に持っている書類よりも多い書類の束が山になって、春袈の目の前に設置された木製のテーブルに置かれている。

「全部、というよりは……一部だと思います。NEVの実験……ミュージック・ヒューマンは4年前のことを踏まえてです。実行されたのは……2年前」

「この書類にも書いてある。……倉中の義理の妹がその実験に参加したというが?」

「参加、ではなく、強制参加、です。それに、倉中さんの妹さん、樹析さんと仰いましたか。彼女はNEVの襲撃を受けて、が原因です。いわば、強制参加させられたあげく拉致られたということです」

「あぁ、倉中が記憶を失った原因の?」

 そう春袈は言葉を切って、テーブルの山から、1束書類を取り出す。

「倉中蒼理、藤村樹析が居住していた地域がNEVの襲撃によって、住める環境じゃなくなった。倉中はその襲撃から逃げ切ったようだが……」

「樹析さんは間に合わなかったようです」

「どうしてだ?」

「え?」

「どうして、倉中は間に合った? どうして樹析の方は間に合わなかった?」

「それは、この書類にも書いてある通り……」

 春袈の問いに、少女――桃風羽夜華は1歩踏み出し、自ら書類の山に近づく。

 山から、1枚取り出し、春袈に見せる。

「倉中さんには逃げる際、手伝った人がついていたんです。しかし樹析さんは、たった1人で逃げようとしましたが、結局は子供。逃げ切れなかったんです」

「たった1人? 親は?」

「居ません。倉中さんが小さい頃、突然居なくなったとか」

「突然?」

「はい。残念ながら、倉中さんのご両親についてはあまり調べることができませんでしたが……突然居なくなった事は確かのようです」

「失踪か?」

「いえ、そういうことでもないようなんですが……」

 蒼理の両親に関する情報は本当に少ないのだろう。言葉を濁した羽夜華を見て、春袈は手にしていた書類をテーブルに置く。

「倉中の逃走を手伝ったやつとは?」

「……桐金直利」

 桐金 直利〈きりかね なおり〉。その名を聞いたとき、春袈は腕を組んで考え出した。

「どうしました?」

 その様子を見て、羽夜華が首をかしげる。

「いや、どこかでその名を聞いた事があると思ったんだが……」

「おそらく……フェリアンヴェスピュリアでは?」

「何故?」

「桐金直利はかつて、アズラエルの職に就いていました」

「アズラエル!?」

 春袈はテーブルを叩き、椅子から立ち上がる。

「はい。もちろん、かつて、なので今は違いますが……」

「桐金直利、そうか、アズラエル、桐金直利…………?」

 しかしそこまで記憶を戻したところで、春袈は首をかしげた。

「アイツ……女だったか?」

「いいえ。男性です」

「アズラエルを含めた6大天使は、女性のみだったはずだが?」

「……すいません、それに関しては……。ただ、桐金直利はウォークマンの秘密を開けるカギを持ちます」

「カギ?」

「こちらを」

 羽夜華は着ているジャージの上着胸ポケット部分からUSBを取り出し、部屋に設置されたパソコンに接続。データファイル、オープン。

「桐金直利、元アズラエル。6大天使の1人として、ウォークマンに触れる機会もあったみたいです。そして、現在、ウォークマンのカギを握っている可能性が高い」

「そのカギって?」

「……以前、倉中さんも仰ってましたが、ウォークマンの記録機器としての能力を使用するには、条件があります。その条件がキーワード、なんです」

「キーワード?」

「すいません、そこはNEVのデータベースにも……」

「それだけ重要なのか……」

 春袈は1つ溜息を吐いて、質問を変える。

「樹析は今、NEVに?」

「いいえ。NEVで監視専門で活動中だった、その記述で終わってます」

「……実験は? 成功したのか?」

「ミュージック・ヒューマン初の成功者です」

「……倉中に伝えるか否か」

 実験が成功し、樹析が無事なら蒼理に伝えたほうがいいか……。

「無事なのか?」

「……分かりません」

「……」

 無言になった春袈に、羽夜華は声をかける。

「しかし、樹析さんの外見特徴は判明しました」

「外見特徴?」

「首にかけたヘッドフォン、カラーは七色。髪型はショートの銀髪。金色の瞳。病的なまでの肌の白さ。特徴満載ですよね」

 軽く言い放った言葉。だがそれを聞いた春袈は、質問をした。

「七色に光るヘッドフォン?」

「え、はい。ヘッドフォンのカラーは七色だと。虹色という表現もありましたが」

「……樹析は記憶力と音楽に長けた少女だったな? ミュージック・ヒューマンの被験者だから」

「はい」

「……記憶は情報の塊で、音楽も情報の1つ……」

「リーダー?」

 独り言のように呟く春袈に、羽夜華は首をかしげる。

「なぁ、ミュージック・ヒューマンって、本当に記憶力と音楽に長けた人間を造りだすためだけのものなのか?」

「え?」

「だって記憶というのは情報の塊で、音楽は情報の1つ。どちらも情報に関連してる。もしかしたら……ミュージック・ヒューマンは」

「確かに、そうです」

 バタリ。部屋のドアが開けられ、入ってきたのは長い前髪を左に流して、左目を覆い隠し、逆に右側は短く切られた突飛とも言える髪型の少女と少女の後ろに隠れたままの、こちらも少女。

 前を歩く少女の名を、草花 舞葉。舞葉の後ろを歩く少女を草花 黒刃。春袈たちは草花姉妹と親しみをこめて呼んでいる。

 その舞葉が、春袈を睨むように、いや実際には睨んでいないのだが、そう思えるほどにその眼光は鋭く、その光を保ったまま部屋に入ってきた。

 何故? 何故、舞葉がこのタイミングで黒刃を連れて入ってきた?

「ミュージック・ヒューマンは、本来の目的を見失いつつある」

 少女のものとは思えないほど低い声。

 その声には確かに、強烈な怒りが存在した。



後書き


作者:斎藤七南
投稿日:2011/07/27 17:23
更新日:2011/07/27 17:23
『White×Black=Glay?』の著作権は、すべて作者 斎藤七南様に属します。

前の話 目次 次の話

作品ID:825
「White×Black=Glay?」へ

読了ボタン


↑読み終えた場合はクリック!
button design:白銀さん Thanks!
※β版(試用版)の機能のため、表示や動作が変更になる場合があります。
ADMIN
MENU
ホームへ
公国案内
掲示板へ
リンクへ

【小説関連メニュー】
小説講座
小説コラム
小説鍛錬室
小説投稿室
(連載可)
住民票一覧

【その他メニュー】
運営方針・規約等
旅立ちの間
お問い合わせ
(※上の掲示板にてご連絡願います。)


リンク共有お願いします!

かんたん相互リンク
ID
PASS
入力情報保存

新規登録


IE7.0 firefox3.5 safari4.0 google chorme3.0 上記ブラウザで動作確認済み 無料レンタル掲示板ブログ無料作成携帯アクセス解析無料CMS