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作品ID:845
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White×Black=Glay?

小説の属性:一般小説 / 未選択 / 感想希望 / 初級者 / 年齢制限なし / 連載中

前書き・紹介


White×Black=Glay? ?16色目?

前の話 目次

 晴天が目にまぶしい。

 少しでも、と暑さを紛らわせるために開けた窓から入る風で、カーテンが揺れる。

 そのログハウスは、現在、鋼夜春袈と桃風羽夜華の2人が居住するところ。



「桐金直利ってどこでも出てくるねー」

 呆れたように、鋼夜春袈は溜息を吐いた。

「仕方ないと思いますけどね、元アズラエルですし」

 桃風羽夜華が苦笑い気味に答え、そちらのほうへと顔を向ける。

 羽夜華が視線を向けた先には、金髪と銀髪、逆の色をした髪を持つ少女2人が木製の椅子に座って向かいあっている。

 金髪の方を倉中蒼理。つい最近まで記憶の欠陥があり、情報の運び屋として活動している。

 ヴィヴィッドと呼ばれる鮮やかな躍動感を押し出した色が嫌いでもある、特殊技能戦闘士というカテゴリーに分類される、情報戦士としての肩書きももつ。

 対して、銀髪の方を藤村樹析。蒼理の義理の妹であり、造られた情報戦士。

 記憶力と音楽に長け、その髪の色と金色の瞳、病的なまでに白い肌。特徴満載な少女。

 NEVが起こした実験、ミュージック・ヒューマンの被験者としても知られている。

 義理とはいえ、短い期間だったとはいえ、共に暮らしたことのある2人。

 たとえ、恨み恨まれた2人だとしても、1度和解すれば、かつてのように暮らせる。

 ちなみに、樹析と羽夜華の戦闘で破壊された、蒼理が居住していたログハウスはあの後すぐに春袈と羽夜華の手により現在、蒼理と樹析の2人で使っている。

「倉中さんの記憶が完全に戻ったとはいえ、まだ分からない事もあります。……桐金直利のデータは少なすぎますし……」

 はぁ、と溜息を吐いて、羽夜華も傍にある椅子に座る。

「ウォークマンを捜す手がかりとしても桐金直利は必要、か……」

「絶対に、とは言いませんけど、その存在があって困る事はないと思います」

「そっか……でも桐金直利のデータはほとんどないんだよね?」

「はい。……桐金直利のデータを得るために、藤村さんをチームに入れたんじゃないんですか?」

 目を丸々とさせて、羽夜華は首をかしげる。

「藤村をチームに入れたのは、倉中が居るから。倉中と藤村、お互いに知らない空白がありすぎる。だから、それを理解しあうために、チームに入れただけのこと。……それに藤村樹析か倉中蒼理か、どちらかが桐金直利のデータを保持しているなんて、私は知らなかった」

「でも倉中さんは桐金直利と、NEVの襲撃から逃げ切り、藤村樹析にしても何らかのデータはあるはずです」

「そうかもしれないけど、今の状況でそれを求めるのは早急すぎる。確かに急がなきゃいけない。でも……まだ空白は埋まっていない。大丈夫。倉中と藤村がチームを抜けるとは言い出さないから」

「言い出さないって、そんなの断言できることじゃ……」

「それがね、できちゃうらしいんだよねー」

 ニヤリと笑って、春袈はその部屋を出て行く。

 羽夜華は残されたその空間で、ただ首をかしげていた。

「チームを抜ける、言い出さない? そんなの……断言できない……」

 それでも、なぜか春袈はそうなると信じて疑わない。

 それだけの、信じれるだけの理由があるはず。

 信じれる理由が。

 その言葉を何回も何回も繰り返すと、頭痛がする。

 繰り返せない過去。繰り返してはいけない過去。

 それがまだ、鈍く痛みを残したままで。





 予知夢を見ることができると気づいたのは、あの楓つつじとNEVを脱走してから数ヵ月後。

 それまでにもやけにリアルな夢を見て、それが全部とはいわないまでも、ほとんどが現実になった。

 いいこともあれば悪いこともあって。

 全て、この夢で分かるんだって気づいたのは、夢を見始めて、数日後。

 そしてそれが予知夢だってことに気づけたのは、ちょうど楓つつじと脱走してから数ヵ月後のことだった。



 ――昨日、新たな予知夢を見た。

 精神的にも不安定になる予知夢。それを見続ける。

 そのことがどうしても嫌で、でも今回見た夢だけは伝えないと、ダメだって思った。



 目にまぶしいほどの晴天。雲なんてその空には見当たらない。

 でも、なぜか地面は濡れている。

 頬に伝わる冷たい温度。まっすぐに下へ落ちる。そして地面に落ちる。

 それが涙だと気づいたとき、なぜか悲しくも寂しくもなかった。

 あぁ。結局こうなった。結局、こうなってしまった。

 そういう、諦めしかなかった。

 諦めて、この事態を阻止できなかった自分が悔しくて。

 悔しくて悔しくて、でも結局諦めて。



 そうやって目が覚めた。





 昨日、草花姉妹の姉のほう……舞葉に呼び出された。

 予知夢を見た。その内容を教えるから、と。

 ログハウスを出て、晴天輝く、少しだけ風が吹く外で、左側だけが長い前髪を手で押えている舞葉が居る。

「舞葉ー」

 今日も全ログハウスの修理をする予定だったため、金色に黒のメッシュを入れた髪を後ろで結い、つなぎ姿の春袈が、舞葉へと近づく。

「……断言はできませんから」

 そんな切り出しで予知夢の内容が明かされた。



「……バラバラになる、か」

「はい。倉中蒼理は藤村樹析と。私は黒刃と。桃風羽夜華さんと貴女はそれぞれ単独で」

「今の状況でもバラバラな人種だからなー。当然っちゃ当然だな」

 苦笑いして、頭を掻く。

「……でも断言はできないんだよね?」

「はい。これは結局予知夢ですから」

「じゃあ、対処法もあるんだよね?」

 ニッコリと満面の笑みを浮かべる春袈。

「たい、しょほう?」

「うん。ある?」

「え、いや、あの……」

 微笑んだまま、首をかしげる春袈に口を開けない舞葉。

 ……予知夢を見続けても、それが現実になろうとも、決して舞葉は対処しなかった。

 だから、その予知夢が現実になっても、舞葉はこう思うだけ。

 ――結局はこうなるんだ。結局、こうなってしまうんだ。

 諦めしかない心中。諦める事に慣れてしまった。

 だから……予知夢が現実になることを阻止するなんて、考えなかった。

「……とても対処法とは言えません」

 それでも、協力する。

 そう思った。

 だから。

「それでも構わないのでしたら、その対処法をお話しましょう」

 春袈みたいに満面の笑みは浮かべる事ができない。





 もう2度とうまく笑わないように心に何重にもかけたセーブ。

 もう2度とうまく感情をださないように心をフリーズさせた。

 もう2度とうまく前へ歩けないように、いつだって最初に戻るように一瞬のリセットをするように決めた。

 でも何重にもかけたセーブもフリーズさせても、リセットさせても、必ず狂ってしまうことがある。

 そして、今日も狂った。

 この目の前に居る鋼夜春袈のおかげで。



「対処法?」

「はい。……私が見た夢では、今日のような晴天の中、私もそうですが、黒刃や、貴女、桃風羽夜華、倉中蒼理、藤村樹析がそれぞれチームを脱退していく……。もちろん、私は脱退する事などできません。黒刃にもそれを伝えればチームは抜けないでしょう。いえ、抜けさせません。私たちに此処以外に居場所なんてないんですから。……そう考えると問題なのは……」

「羽夜華と倉中藤村義理姉妹、だね」

「はい。……この3人は手放してはいけません。絶対に。ウォークマンを捜すうえで、絶対に手放してはいけません」

「……そんな重要なのか、羽夜華たちは」

「……気づいてなかったんですか」

「……」

「………………桃風羽夜華を始めとした倉中蒼理、藤村樹析の情報量、情報収集能力は、私でさえ届かないんですよ」

「わかって、ます」

「なら、重要だって分かりますよね?」

「……」

「もう、いいです。とにかく、桃風羽夜華を始めとしたこのメンバーは手放せません。そこで、この対処法なんですが……」

「……」

「桃風羽夜華に関しては、貴女のほうから何か言えば従うと思います。彼女は貴女を信頼しているようですし。……ただ、ここからが問題です」

「倉中と藤村、だな」

「はい。この2人だけが読めないんですよね……藤村樹析に関しては、倉中蒼理がチームに残留すると言えば、従うかもしれませんが……」

「そうとも限らない、か」

「むしろ、そう判断するのには少しだけ躊躇いを覚えます」

「……現状維持ってわけにはいかないか」

「はい。……ですが、倉中蒼理は貴女に借りがあるはずです。倉中蒼理が記憶の欠陥を背負っていたとき、貴女は何のメリットがあるかも分からないのに、もしかしたらメリットなんて求める事ができないのに、倉中蒼理を保護した。そのことを使えば」

「それは嫌だ。倉中の意思関係なく決め付けてしまう事になる。そんなのは……嫌だ」

 顔をゆがめて、春袈は舞葉に背を向ける。

「今のチームがバラバラになるなんて考えられない。バラバラになるとしても、それを阻止するのみ」

 力強く言い切った春袈は、舞葉のほうを見ることなく、歩いて行く。



 断言できるわけじゃない。

 でも、その可能性があることは確か。

 だから……その可能性をゼロにするためだったら、自分は何でもする。

 自分の予知夢がゼロにするために役立つのなら、自分は何でもしよう。



後書き


作者:斎藤七南
投稿日:2011/08/14 15:12
更新日:2011/08/14 15:12
『White×Black=Glay?』の著作権は、すべて作者 斎藤七南様に属します。

前の話 目次

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