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作品ID:905
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レッド・プロファイル

小説の属性:一般小説 / 未選択 / 感想希望 / 初級者 / 年齢制限なし / 連載中

前書き・紹介


1-5

前の話 目次 次の話

 心配しなくていい。なんていうのか、ノイズみたいなものだ。話を続けよう。



。僕が都日とバカ話をしているうちに、他の生徒も登校してきてにぎやかさも増し、他にも二、三人で固まっておしゃべりをして、気がつけば始業のチャイムが鳴っていた。僕が鞄から教科書を取り出して机に入れていると、例のフィクションを都日が見つけて「ああそう、それそれ」と声をかけてくる。「今朝見たときも読んでたよね」



「目ざといな」

「珍しいな、と思って。あんま読まないのにね、そういうの」

「色恋沙汰に興味が出たんだ」

「ふぅん」



 それこそ興味なさそうに聞き流してから、「俺も読んだけど、面白かったよ、それ」と、都日は言って、自分の席に着いた。



珍しく、俺、と言ったから、覚えている。



それからもちろん授業を受けるわけだが、受けてる僕が楽しくないんだからここで語ったってモチロン面白いはずがないので割愛する。(正直に言うと内容も良く覚えていないし)四時間目を終えた辺りからいよいよ授業へのモチベーションを失った僕は教科書に隠してコソコソと小説を読んでいた。チラッとあとがきを読んでみたんだが、どうやらこれは恋愛小説でなくて青春小説らしい。――違いなんて皆目わからないけれど。つまり真冶君が友達連中に恋路を邪魔されたり応援されたり、時に勝手に自爆したりする様を作者は青春と言いたいんだろう。環田さんを屋上に呼び出してからがクライマックスで、真冶君の告白に向けて物語は盛り上がっていく。友人連中もそれぞれに成功させようと画策を始めて、はたから見るとまるで成功する気がしない。



しかし野次馬根性を刺激する小説だな。



悔しいけど結構面白いじゃないか。



自分の恋もこれくらいに俯瞰できたらいいんだけど、できたらできたで面白くないんだろうな。そして僕の恋愛も眺める視点によってはあたふたと滑稽でたまらないのかもしれない。



 もしも僕を眺める読者がいたら、いったいどんな感想を感じているんだろうか。



こんなもん読んでねぇで勉強しろ。



 そうしてこうして、ようやく読み終えるだろうかという昼休みの中ごろ。僕の眼前に梅郷こちが登場したのだった。



「こら」



 と一言。それから頭のてっぺんにこつんと一撃を食らった。「授業中に本なんて読んじゃ駄目でしょ」



そう言いながら左手を腰に当て、三つ編み(!)にめがね(!)に規定の長さのスカート(!!)で身を固めた女子が、いかにも立腹していますといった様子で右手の人差し指を立てる。



見るがいい。



最近流行の『今時いない委員長』そのものの生き物が、僕のクラスには生息しているのだった。



「そういう不良行為をやってるうちに自分自身の歯止めを失ってだらだらと自堕落になっていくんだからね」

「……忠告が真面目すぎてなんとも言いがたいんだけど」

「真面目に忠告してるもん」

「そりゃあ、ありがとう」



 ああくそ、真面目だ。



普段、この梅郷に都日や赤色、そして僕を含めた四人組が、なんとはなしに学校で生活していくうえでのグループ構成にあっている。幼馴染同士の都日と梅郷の関係は言わずもがなで、赤色がなぜか梅郷と以上に仲がよく、そこに都日に巻き込まれる具合で僕が混ざっている形だ。結果としてなぜか赤色とは仲良くなれたが、梅郷とは未だに如何とも言いがたい距離感を感じている。主な理由が、この真面目さ。



今時「授業を真面目に受けろ」なんてクラスメートから注意されると思わなかった。



梅郷こちは病的なまでに真面目で潔癖な人間なのだった。



そもそも私服登校が全面的に許されている(赤色のコートがなあなあながら認可されているくらいに服装に寛容な)この学校で、あえて指定の制服を身に纏っている辺り、真面目とかを通り越してアタマオカシイなのだ。実を言うと、ベクトルが違うだけで赤色よりずっと変人なのかもしれない。



決して間違ったことを言わないし許さないし、悪を憎むし正義を愛すし弱きを助けて強きを挫くし、自分自身を強く律しているのが普段の生活からわかるのだけど、全く非の打ち所のない正しい人間なのだけど、間違っていないわけじゃないというか。



ぶっちゃけ空気の読めないところが、どうにも僕は苦手なのだった。



いい奴なのは間違いないんだけどな……。



多分僕の器というか、人間がちっちゃいだけなんだろうけど。



「いくら文型だからって数学も生物もサボっちゃ駄目だよ? 大学に入ってから使わないとも限らないし、いつ針路変更したくなっても対応できるようにしないと」

「ん、そこまで真面目に取捨選択してサボったわけじゃないんだけど……」



 時間の経過でやる気を失っただけで。



や、でもたしかに、四時間目が英語とか古文とか個人的にのっぴきならない教科だったら真面目にやってたかも知んないけどさ。



 やりづらいな。



都日がいたらあいつが勝手に自爆して梅郷に叱られて、僕と赤色がその尻馬に乗っかって、みたいな流れが作れるんだけど。たまにこうして二人で喋ってみると共通の話題が何にもなくて、ただの説教と言い訳の応酬になってしまう。



なんだか梅郷からも、警戒というか、間合いをとられてる気がするし。いくら苦手同士でも同級生同士、こういう気まずさを持ち合うのはもったいない話だ。



梅郷も同じように思っているのか、今日のお説教はこのくらいに切り上げて、他愛ない話に移ってくれるようだった。



「でさ、それ、何読んでるの?」と僕が今も開いている小説を指差してくる。「なんだか代見君がそういうの読んでるの、珍しい」

「色恋に興味が出てさ」



 と僕は返す。



「今後のためにしっかり予習しておこうと思ったんだ」

「社会に出たらそんな知識役に立たなくてよー?」



 梅郷は冗談めかした口調でくすくす笑った。



「やっぱり実地で学んでおかないと駄目よ。きっと恋愛ってドロドロネトネトしてるんだから」

「それこそ本の知識じゃないの?」

「女の子は博学なんですー」



 使う予定がなくても覚えとかなきゃいけない知識はあるんだから。と梅郷は言う。



「具体的に?」



 と、僕が聞くと梅郷は「んー」と一声うなってから、唐突に指を折り折り数えだした、



「計画的な恋愛の仕方と衝動的な恋愛の仕方。将来の人生設計の立て方。産んだが死ぬまでに何事かが起きた時どうするか。去年今年来年の流行色。その他もろもろファッション関係。好きな人が二人できちゃったときの対処の仕方。好きな人が友達とかぶったときの対処の仕方」

「…………」

「あとは痴漢とストーカーの退治法とか? 実力的な意味と、法律的な意味と」



 いや。「いやいやいや」なんていうのか。



具体的すぎて――かつなんだか個人的すぎて、答えづらい。



真面目に答えてくれたのはわかった。



だから、もうちょっとけれん味をください。



話が膨らまない!



「特にストーカー対策って実力はともかく法律で対抗するとなるとかなり難しいみたいね。被害が目に見えないものだから立証しづらいし、なんだか世間のイメージだと警察も全然当てにならない感じで。もう随分調べたんだけどなんだか話を知れば知るほど法に訴えるのが無意味に思えてきちゃって」



 多分実際そのときにならなきゃわかんないんだろうけどね、と梅郷は言った。おい、よりにもよってその話題を掘り下げるのか。



余りにもタイムリーすぎて、僕は適当に相槌をうつことしか出来ていない。



「物的証拠というか、同じ時間に同じ場所で何度も同じ人縁が目撃されてたりしたら、だいぶ違うみたいだけどね」

「女の子ってみんなそんなに詳しいもんなのか……?」

「さぁ、あーちゃん辺りにインタビューしてみたら?」



 赤色のことをあだ名でよんだ梅郷に、僕の脳内赤色のレスポンスを披露してみるテスト。



「『一回実演してみたらわかるんじゃないかな? ほーら悩殺してあげようさっさと跪くがいい私の友達アーハッハッ! アーッハッハッハ!』」



 梅郷の目が一気に同情に染まった。



「……凄く似てるのはこの際置いておいて、代見君っていつもあーちゃんにそんなこと言われてるのね」

「『死ね、ウジムシ!』」

「むしろ何をやったらそんなに怒るのか教えて」



 正解 身長について短スパンで五回以上からかったら。



「代見君ってホントにあーちゃんと仲いいのね」

「確かに仲はいいけど、このやりとりでその結論に至るのっておかしくないか」

「だって、その本もあーちゃんに借りたんでしょ?」



 へ?



と僕は声を出しそうになったのだけど、その前に梅郷はひょい、と例の小説を取り上げてしまった。



「私も読んだよ、これ。なんかアイドルが主演で映画とかにもなったし、話題の奴だよね、甘々のベタベタの。可愛いところあるじゃない代見君」



可愛い。



 カワイイ。



――なにその恥ずかしい話!



「ちが、そ、表紙も見ないでなんで断言できるんだよ」



 我ながらみっともない足掻きだったが、先輩に借りたときから、おそらく購入先だろう書店の紙カバーが小説にはかかっている。勘違いだろう多分、というわずかな期待もあながちない話ではないのだ。



しかし僕のすがりつく小鹿のような視線もむなしく。梅郷は「見なくてもチラッと一ページみたらわかるわよ」と切り捨てた。



「それにほら」梅郷がカバーをめくる。



 真っピンクだった。



ハートとかあしらわれてた。



紙カバーの裏には丸っこいかわいらしい書体で印字されたタイトルとなんだか砂糖細工にチョコレートぶっかけたみたいな糖度の装丁がなされていて乙女趣味全開というか愛らしさフルスロットルというかもうなにがなんだか、



「――――ッ」きゃあああああああああああああああああああああああああ!



 叫ばなかった。ぎりぎりで飲み込んで心で叫んだ。



僕の精神力に乾杯。







その後小説を隠すように胸に掻き抱いて動かなくなった僕を申し訳なさそうに梅郷が眺めていたような気がするが、よく覚えていない。



五時間目のチャイムが鳴るまで、僕はそのまま固まっていた。

後書き


作者:あるるかん
投稿日:2011/11/09 02:18
更新日:2011/11/09 02:18
『レッド・プロファイル』の著作権は、すべて作者 あるるかん様に属します。

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