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指名PC:穂村 遥斗さん
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(授業終わり、夕暮れ。親しくなった彼女の負担を減らしたいだなんてそんな殊勝な心算だったわけじゃないけれど、たまたま、本当にたまたま地学の教師から頼まれ事をした女は、自分より後からこの学校にやってきた教育実習生を探していた。影のある大人の男というのは女子生徒の噂の的だ。どうやら旧校舎付近を歩く彼を見たらしい友人に礼を伝えれば普段全く足を向けないそちらへ行ってみる。左手にはぺらりと一枚、何かの冊子。見かけたら渡しておいて、だなんて言われたから急を要するものではないのだろうけれどそも、探さないと見かけることもないような相手であった為こうしているのだった。)おー、いたいた。穂村先生。(ブレザーからセーラー服へ、この学校へ来てから一番新鮮だったのは制服だった。未だに服に着られている感がするセーラーのスカートが歩く度にひらりと揺らめいた。へらっとした当たり障りのない笑みを浮かべれば冊子を差し出して)これね、地学の先生から。今度の職員会議……だっけね、そんなんで必要なんだって。お使い頼まれてしもうた。(へへへ、と緩やかに笑うのは間が保たないと感じたからだ。大人ってみんなこんなに疲れてるのか?と思うほど彼の目の下に浮かぶ隈は酷い。こんなに不健康そうな人を間近で見るのは初めてだから、どうしても心配げに伺うような視線をチラチラと投げてしまう。)あのー……先生。ちゃんと寝てはります?(自身の目の下をポンポンと指差して、眉を顰める。現代人、大変そう。個人的に親しい間柄でなくとも気にはなるもので、少しばかりお節介をやいてみよう。)
松川小夏:2020/2/29 (Sat) 22:37 No.23:
(他者と会話する時間は嫌いではないが、人々のざわめきはどうにも苦手だ。女生徒のささやき声は己を揶揄する声に聞こえてしまって仕方がない。そんな事はないと頭では理解していても、だ。そういった意味では旧校舎の片隅で、紫煙を燻らせるこの時間はひどく気楽であった。ゆらゆらと揺れる煙をぼんやり見上げ、向こうに見える暗い空を何の気なしに見つめていれば不意に、己の名を呼ぶ少女の声で意識は現実へと無事に戻ってくる。)……ああ、松川さん。何か御用でしょうか?(残煙を吐き出し、ポケットから取り出した携帯灰皿へ火の付いた煙草を押し付けねじ込む。それが当然、と言わんばかりのごく自然な動作で。――差し出された冊子に思わずきょとん、と目を丸くして)……成程、すみません、有難うございます。……ご迷惑おかけしました。(一礼の後に資料を受け取れば息を吐きだしつつ謝罪をポツリと零す。そもそも、己がもう少し職員室にでも残っていれば彼女に態々迷惑を掛ける事も無かったろうに、とも思えば自己嫌悪のループに陥りそうになるものの、生徒の手前と深呼吸をひとつ。外の空気と肺に満ちた煙とを循環させ、交換し、伏せがちな瞳をゆっくりと開く。彼女の視線に気がつけばゆるゆると首を傾げるけれども。)へ? ええ、一応は。授業中に眠ってしまってはこう……流石にアレですし。……ええと、(不意に逡巡の間を挟む。暫しまごつき口ごもっていたものの不意にふにゃり、と浮かべる笑みは何処か少年じみた、歳不相応なもので)……有難うございます、すみません、気にかけて頂いてしまって。……松川さんも、夜はちゃんと眠ってくださいね? 授業中にうたた寝は厳禁ですから……なんてね。(ふと、軽口じみたものが口からこぼれ落ちるのは彼女のお節介が嬉しかったからに他ならない。夕暮れ、暗がりに飲み込まれかけた旧校舎の一画にて男は少し、穏やかな心地を胸にゆるく、息を吐く。)
穂村遥斗:2020/3/1 (Sun) 21:39 No.25: