「…………」
 白瑛は、ある扉の前で迷うように立ち尽くしていた。眉間には深い皺を寄せ、拳はぎゅっと握り締められている。秀麗なつくりの顔は、憂うように翳っていた。
ここは、母の所有する建物の一室だ。ここに、白瑛たちの可愛い弟は軟禁されている。白龍以上の泣き虫で、体が弱く、そして一等優しかった可愛い小さな弟。白雄たちの死後、は白瑛の庇護下から引き離されここに幽閉された。母親に抗議を繰り返し、理由を尋ねるも納得のいく返答を得られることはなく。長年探し回ってようやくここにたどり着いたものの、昨日見てしまった光景が白瑛を躊躇わせていた。
女と見紛うほどに可憐に成長した弟が、母に手篭めにされていた。小さく細い体に絡みつき、どろどろに犯して。性に未熟な末弟が涙して心さえも侵されていくのを、白瑛はただ愕然と見ていることしかできなかった。
けれど、白瑛は気付いてしまったのだ。自分の不甲斐なさに唇を噛み締めて眠りに就いたはずなのに、弟の痴態が頭を離れない。少女のような矮躯、薄紅色に色づく白い肌、快楽に潤む深い青の瞳。寝台に散らばる長い髪も、清楚なのに蠱惑的な桜色の唇も、思い返すほどに白瑛の胸を疼かせた。愛らしい声で啼いて、頼りない背中をしならせて。気付けば、末弟を組み敷いて愛でる妄想をしている自分がいて愕然とした。なんと浅ましい情欲だろう、母の行為を悍ましいと思う資格もない。それでも愛欲に咽ぶの姿は、ぞっとするほどに扇情的だった。
「……私は、」
 自分はいったい、何のために再び此処へと来たのだろう。考えてしまえば何か恐ろしい答えにたどり着いてしまいそうで、白瑛は背中を震わせた。その不安を打ち払うように、扉に手をかける。重い扉は、軋むこともなく静かに開いた。
……?」
 室内は薄暗く、白瑛の声が篭ったように響く。大きな広い寝台の上では、あどけない寝顔を晒してが眠っていた。母の配下である魔導士たちの姿がないか警戒するも、人の気配は感じられない。おそらくの眠りを妨げることのないようにと厳命されているのだろう。は幼い頃から寝ることが大好きであったし、母はに恐ろしいほどに甘い。
白龍とは全く異なる方向に成長した末弟は、寝顔すらも愛らしい。白く柔らかい額も、すべすべとした頬も、幼く可憐で。頼りないほどに華奢な肩もその可愛らしい顔貌も、とても年頃に差し掛かる少年のものとは思えない。小さく丸くなって眠るの胸は、静かに上下を繰り返していた。けれどやはり、薄手の夜着の合わせから覗くほっそりとした鎖骨が、うっすらと開いた桜色の唇が、白瑛が胸の奥底に押し込めようとしていた情欲をチリチリと煽り立てる。言い訳をするように、の顔の横で握られた小さな手に触れる。そうすればの寝顔が嬉しそうに緩んで、ふにゃりと柔い掌で白瑛の手を握るのだから堪らなかった。
「……っ」
 ついに道ならぬ欲を抑えきれなくなり、白瑛はの上に跨ると愛らしいかんばせにそっと顔を寄せる。重力に従って落ちる白瑛の長い髪が、帳のように重なる二人の顔を覆い隠した。
ふにりと柔らかい弾力に、白瑛の胸がどくりと脈を打つ。繰り返し啄むように柔い唇を食み、掛布を引き剥がして着物の帯に手をかける。あっけないほど簡単に解けた帯と、はだけて露わになった滑らかな肌。すべすべと手触りのいい二の腕や胸をゆっくりと撫で回しながら、唇をちゅっと吸い上げて舌を挿し入れた。
「ん……」
 悩ましげな吐息は、いったいどちらのものだったのだろう。小さな舌は絡め取れば甘えるように白瑛に応えて、これも母の調教の賜物かと思えばじりっと焼け付くような嫉妬が胸の奥を焦がした。舌を吸い、絡め、ぴちゃぴちゃとわざと卑猥な水音を立てる。もじ、と内腿をすり合わせた白瑛は、名残惜しげに重ねた唇を離す。二人を繋いだ銀糸がぷつりと切れるのを見て目を細めた白瑛は、の首筋に吸い付いて赤い痕を残した。
……」
 求めるように名を呼びながら、幼い肌に舌を這わせていく。細い鎖骨を、柔らかい胸板を、薄い腹を、小さな臍を、くびれのある腰を、しっとりと舐め回す。そして力の抜けている脚を掴んで開かせ、病的なまでに白い内腿にも痕を残した。「んっ」と小さな声を上げて、の体がぴくりと震える。けれどが目を覚ますことはなく、一抹の寂しさを抱えながら白瑛はのふにゃりとした陰茎を掌で包み込んだ。
「これがのモノなのですね……可愛い……」
 ぺろりと先端に舌を這わせると、やはりの体がぴくっと跳ねた。それが何だか面白くて、白瑛はおもちゃを試す子供のようにの陰茎を弄ぶ。先端をぐりぐりと親指の腹で擦ってみたり、ぱくりと口に含んでみたり、親指と人差し指で輪を作って全体をしごいてみたりと、好き放題弄っているうちにのそれが硬く張り詰めていく。初めて見る男性器の勃起に、白瑛はどきどきと鼓動が早まるのを感じた。
「ん、う……」
 上ずったの声に気を良くした白瑛は、自らの胸をはだけさせる。豊かな乳房をさらけ出すと、柔らかく張りのある大きなその胸での陰茎を挟み込んで包んだ。そして、ぎゅっと圧迫しながら上下にしごく。ビクビクと震え、先走りを流し始めたの陰茎を見下ろして、白瑛の表情が喜悦に歪む。谷間から飛び出す亀頭に口づけを落とし、ちゅうっと吸い付いた。
「ぁ、ぅん……!?」
 異常なほどの熱を感じて、は夢現から現実に引き戻される。体全体がじっとりと汗ばんでいて、前髪がぺたりと額に張り付いているのが気持ち悪かった。呼吸が荒いのも心臓がばくばくと煩いのも異常事態だったが、何より脚の間にある性器が耐え難いほどの熱と快感を訴えていて、はあられもない声を漏らしながら閉じそうになる瞼をこじ開けて下半身に視線を向ける。の陰茎を胸でしごきながら先端を口淫する女性の姿に、は思わず我が目を疑った。
「えっ、あぁ……ッ!?」
「ん、む……おはようございます、
 にこりと微笑んだその女性は、ふうっと陰茎に熱い息を吹きかける。ビクビクと腰を震わせたは、おそるおそるといった様子で言葉を紡いだ。
「お、おねえさま……!?」
「ええ、そうですよ。覚えていてくれたのですね」
「わすれたり、など……でも、どうして、」
 破顔する姉の姿に、は久方ぶりに会えた喜びを抱きながらも不安げに首を傾げる。ぢゅっと音を立てて先端を吸い上げられて意識まで吸われそうになり、はきゅうっと眉間に皺を寄せた。
「あっ、はうッ……」
「だって、母上と体を重ねているのでしょう? 。母上は良くて私が駄目なんて、寂しいことを言うのですか?」
「そんな……ぁ、でも……」
「姉さんを拒まないで、。ずっと、寂しかったの」
「あッ……ひゃうッ!」
 胸に陰茎を挟み込んだまま、指先でくりくりと尿道口をいたぶる白瑛。際限のない快感が怖いと思いながらも、は寂しそうに瞳を潤ませる白瑛を拒みきれなかった。優しくて凛々しい、憧れの姉。離れていたが故に歪んでしまった姉の庇護欲など知る由もなく、はチクチクと胸を苛む罪悪感に駆られてくたりと脚の力を抜いた。従順に体を差し出す末弟に、白瑛はにこりと心底嬉しそうに笑みを浮かべた。
「ありがとう、。たくさん、気持ちよくしてあげますからね」
 深く陰茎を咥え込んだ白瑛は、頭と胸の動きを揃えて激しく上下させを責め立てる。白瑛の唾液との先走りが混ざり合い滑りを良くし、じゅぽじゅぽと淫猥な水音が薄暗い部屋に響く。ふわふわと柔らかい乳房が陰茎全体を押し包み、熱く蕩けるような口内が敏感な先端に吸い付いて離れない。更に舌先がぐりぐりと反り返しを嬲り、巻き付くように絡んではキツく吸い上げる。ひっきりなしに高い声を上げるは、あっけなく射精を迎えた。ぴゅるっと噴き出た液体に驚きながらも、白瑛はそれを飲み下す。
「ん……少し、しょっぱいのですね」
「はぅ……」
 気の抜けた声を漏らすに笑みを浮かべつつ、白瑛は陰茎を伝う白濁液をも丁寧に舐めとる。ぴくぴくと反応する敏感な弟に、可愛い子、と白瑛は吐息を漏らした。
「姉さんのことも、気持ちよくしてくれますか? 
 そっとを抱き起こし、白瑛はの頭を抱き寄せて自らの胸元へと導く。いつも玉艶との行為の時は受身だっただが、慕う姉のために躊躇いながらもそっと白い双丘に手を伸ばした。
「……ふふ、」
 探るように手を伸ばすの幼気な姿はまるで赤子のようで、白瑛は微笑みを漏らす。壊れ物を扱うようにそっと白瑛の胸に触れたは、到底掌に収まらない乳房をやわやわと揉んだ。
「瑛姉様のお胸、とても柔らかいです……」
 気の毒なほど頬を赤く染めたの姿に、白瑛はこのまま自らの胸でを抱き潰してしまいたい衝動に駆られる。初心な弟に興奮してツンと勃った乳首に、は躊躇いがちに指先で触れた。
「んッ、」
 触れるか触れないかのもどかしい触り方に、白瑛の腰がもぞりと動く。腕の中に囲ったは、姉の艶めいた声に居心地悪そうにもぞもぞと座り直した。人差し指でそっと乳首を豊かな乳房に押し込むと、指の先までが柔らかなそこに沈む。それに驚いたように何度もゆっくりと乳首を押すの動きに、白瑛はくすぐったいような、焦らされているような疼きを覚えて唇を引き結んだ。
「うわぁ……」
 感嘆の声を上げるは、初めて積極的に触れる女体に試すようにゆっくりとした触り方をする。ふにふにと優しく胸を揉みしだく小さな掌も、さすさすと撫でるように乳首をこね回す親指も、拙いながらも一生懸命白瑛の快感を引き出そうとしていた。母がいつも自分の乳首に吸い付いていたことを思い出して、はおそるおそる白瑛の鮮やかな桃色の突起に顔を近づける。ちろりと舌先で確かめるようにそこを舐め、ちうっと優しく吸い付いた。
「ぁん、」
 思わず漏れてしまったような白瑛の声に、の心臓がどくりと跳ねる。ちゅうっと一生懸命突起に吸い付くと、姉のたおやかな腕がぎゅっとを抱き締めた。
「ん、ふぅ……」
 堪えるような声を上げる白瑛は、ちうちうと母の乳房に吸い付く赤子のようなの愛撫に目を細める。まだ幼いに授乳をしているような気分になって、倒錯した母性と興奮が白瑛の胸を高鳴らせた。
ああ、なんて愛おしいのだろう。白瑛の情欲を懸命に満たそうとするの健気な姿に、白瑛の背筋がゾクゾクと震える。稚拙な愛撫も、が白瑛を求めてくれていると思えばたまらなく気持ちよかった。このまま胸の中にずっと仕舞っておけたらいいのにと、そんなことさえ思ってしまう白瑛だった。
 
170910
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