「あ、や、りゅ、にいさま……! なか、いやです、」
 ヒートに苦しむ妹の熱を和らげに行こうと、の部屋の戸を開けようとした白雄の耳に届いたのは、そんなの声だった。
そしてその声に動揺することも躊躇うこともなくガチャ、と戸を開ける。
ベッドの上で泣いている妹と、妹に覆い被さって腰を打ち付けている弟。白龍も入ってきた白雄に一瞥を寄こしたのみで、大した反応も見せずにそのまま行為を続ける。
「やぁ、もっ……、っん、あああッ、」
「……っ、」
 双方ともに既に限界が近かったのか、嬌声を上げて身体をしならせたと、小さく呻いた白龍の息が重なって消える。
中は嫌だと懇願されていたはずの白龍は、しかし達してもそれを抜かずにむしろ中に押し込むように動いた。の目尻からぽろりと涙が伝う。
しばらくして、ずるりとの中から自身を抜いた白龍は、ふうっと息を吐く。の股の間からは白濁が伝い落ちていた。いったいどれだけの回数体を重ねていたのか。白雄は一人嘆息した。
「また中に出していたのか。は嫌がっていただろう」
「……孕めばいいのに」
 白雄の言葉を聞いているのかいないのか、白龍は溢れたそれを押し戻すように指をぐちゅ、と中に進めながらぼそりと呟いた。
「……言っておくが、はピルを飲んでいるからな」
「知ってますよ。兄上だっての意識が飛びかけてる時には平気で中に出すくせに」
 ぐちゅぐちゅと音を立てながらの膣内を指で掻き回している白龍は、まだ行為を終わらせる気はないようで。指の動きに反応して上がるの力ない声に、白雄の劣情も煽られる。
「お前はもう好きなだけしたんだろう。次は俺の番だとは思わないのか」
「思いませんが、約束ですから仕方無いので一度兄上に譲ります」
 言いながら、の上から退く白龍。平素は互いに尊重しあい仲のいい兄弟である白龍と白雄だが、のことに関してだけはいつも険悪になる。それはきっと、を番に得ようとする本能が絡んでいるからで。まあ、それだけではないけれど。妹の心の行き先を思って白雄は嘆息した。
「また後で来ます」
 の頬にキスを落とし、白龍は部屋を出て行った。
入れ違いに白雄はベッドに腰掛け、の頬を撫でる。
「ゆうにい、さま」
「まだ熱いか、
 優しく問いかけ、唇を重ねる。妹の体を苛む熱は、しかし自分たちにとってはあまりに都合のいい口実で。罪悪感を覚えないわけではないが、本能に訴えかけるその甘い香りに逆らったことはない。
重ねた唇の隙間から、熱い吐息が漏れる。その吐息ごと喰らうように舌を差し込んだ白雄は、の下腹部に指を伸ばした。
「んっ、」
 差し込んだそこから水音がする。白龍が出した精液を、指を曲げて外側へと掻き出していく。は再び与えられた刺激にぎゅっと目を瞑った。白雄の指は優しいが、容赦なくの中を掻き回す。上がる声はすべて白雄と重ねたそこへと呑まれていき、はただ兄の体にしがみついて、与えられるぞわぞわとした感覚をやり過ごそうとした。
 ややあって白雄はの腰をもう一方の手で支えながら上体を起こさせる。
そしての唇を解放すると、白雄はうっそりと微笑んだ。
「見てごらん、お前のナカはこんなに精液でいっぱいだ」
 言いながら、白雄はの視線を下へと、掻き出した白濁で汚れてしまったシーツへと向けさせる。
「掻き出してもまだ溢れてくる。こんなに出されていたのでは、孕んでしまうかもしれないな」
「え、あ、ゆうにいさま、」
「孕みたくないんだろう、。だがお前の細くて短い指では到底全ては掻き出し切れないだろうな」
「いや、いやですゆうにいさま、わたし、あかちゃんできたら、」
 熱に浮かされ、ピルを飲んでいることも忘れてはイヤイヤと頭を振る。
そんなに愛しさを感じながらも白雄は笑顔で言い放った。
「なら、、お兄様にお願いできるな? のナカから精液を全部出してください、と頼めるな?」
「え……ゆ、ゆう、にいさま、」
「言ってごらん、。雄兄様の指で、龍兄様の出した精液を全部出してください、と」
「いえ、ませ……っんぅ!」
 普段は優しい兄から出された無茶な要求に、羞恥のあまり大粒の涙を目に浮かべて首を横に振ろうとしただが、中に入ったままの白雄の指がぐるっと回され、強制的に言葉を遮られた。
「このまましたら、子宮まで精液が入ってしまうぞ?」
「……ふっ、う、」
 おそらくもうそれは既に手遅れであるのに、白雄はそう宣いながら更にもう一本指を押し込み、内壁を擦る。の頬へ涙が零れた。腰を支えていた方の白雄の手が、つつっとの腰から背中への線をなぞる。
、」
「……ゆ、にいさまの指で……りゅうに、ぃさまの、せ……、せいえき、ぜんぶ、だしてっ、くださ、」
「……いい子だな」
 泣きべそをかきながらも、結局長兄の言葉には逆らえず言われたとおりに白雄に懇願する。閉じた瞼からぼろぼろと涙が零れ落ちていく。それに満足した白雄は、既に蕩け切ったの中に三本めの指を挿入し、バラバラに動かし始めた。
「うっ……あっ、ゃんっ!」
 第一関節を折り曲げて、液体を掻き出したり。奥までぐっと指を差し込んで、内壁を擦りながら手前まで持ってきたり。それに紛れて、の弱い場所をぐりっと擦ったりしてみる白雄の指に、顔を真っ赤にさせては啼く。
「……は……、っぁ、ひあッ!」
「ほら、だんだんの愛液の方が多くなってきた。もうすぐ全部出るから、もう少し頑張ろうな」
 さも自分はのためにやむなく指を入れているだけで、いかがわしい事など何もしていません、とでものたまいそうな顔で白雄は嘯く。
 やがて掻き出される液体の白よりも透明さが完全に勝った頃、白雄はようやく手を止めたが、の体は小刻みに痙攣を繰り返していた。
「イったのか、
「……ごめ、んなっ、さい……」
「謝ることはない。それに少しでも発散しないと辛いままだろう」
 焦点の合わない瞳から流れる涙を掬ってやりながら、白雄は何度か啄むだけの口付けをする。
そうして達したの余韻がおさまるまでに自身のベルトを緩めて寛げると、向かい合って座っていたの腰を両手で持ち上げ、自身の上へと導く。ふる、と睫毛を震わせたは、ぼんやりとただ白雄にされるがままになっていた。
「大丈夫だ、俺はちゃんと外に出してやる」
 そう言って白雄は、抱えたの腰の高さを緩やかに落としていく。
ゆっくりと白雄の陰茎を呑み込んでいく感触に、の意識は遠くから引き戻された。
「っ……ッう、……ゆぅ、にいさまぁ、」
「は、……、」
 くち、と水音を立てながら沈み込んでいくそれに圧迫感と息苦しさを覚えたは、目の前の兄に縋りつく。膝の上に座ってもまだ白雄に届かないの顔を見下ろしながら、白雄は息を吐き出した。
「全部……入ったぞ、
「、にぃさま、」
 挿入し切ったそれがひどく熱い。あれだけの時間体を重ねてもなお、浅ましくも行為を望む本能が卑しく思えて、止まることのないの涙は勢いを増す。
「いい、考えるな
 そんなの自己嫌悪も見通したように白雄はの胸、心臓の上あたりに口付ける。
そしての腰を掴む手にぐっと力を込めると、激しく上下に揺さぶり出した。
「んッ!! ……ぅ、あッ……はっぁ!」
、愛している」
 ぐちゅ、ぐちゃ、と音が鳴る。大きく目を見開いて、は白雄の首に回した腕に力を込めた。ごり、と突き上げられる感覚に、は無意識に逃げようと腰を引く。
「こら、逃げるな」
「や、ぁんッ!」
 白雄は腰から手を離して、の小さな尻を掴む。柔らかいそこに指が食い込むほどぎゅっと力を入れて掴むと、白雄は再びの中を突き上げた。
「あ、んぅ、……おにいッ、さま……、ゆうっ、にいさまっ」
「もっと呼んでくれ、
「ゆうにい、ゆうにいさま、」
 パンッと腰のぶつかり合う音が響く。の狭い中が締め付けてくる感触に、白雄は眉間に皺を寄せた。名前を呼ばせると、兄と致してることを思い出して罪悪感を抱くのか、いつも中がきゅっと締まる。求められているようで心地いいそれに白雄はもっと、と何度も自分を呼ばせた。
「ゃ……ッ、あ、もっ……だめ、ですッ……」
「……くっ、」
 達したが、白雄の陰茎をぎゅっと締め付ける。
射精を促すようなそれに白雄も限界を感じたが、寸前で抜くとの腹のあたりにぱたたっと精液が飛び散った。
「は、ぁ……」
、まだ足りない、」
 肩で息をするからは、未だ強く甘い香りがして白雄のアルファとしての性を刺激する。
まだ息の整わないを体をうつ伏せに倒して、白雄は後ろからのそこに萎えない自身を宛てがった。
「まだ……するのですか……?」
 僅かに理性を取り戻したのか、怯えたような目でが振り向く。
「ヒートはまだ四日は続くだろう、。その間にたくさん可愛がってやるからな」
 対して白雄は笑顔で答えた。やめる気は毛頭ないと告げる白雄に、せめて少し休ませて欲しいとは懇願する。が、白雄は笑ったまま首を振った。
「すまないが、抑えがきかない。もう少し付き合ってくれ、
 言い終わるや否や挿入されたそれに、は再びオメガとしての本能に引き摺られる。まともな思考を手放したには、それが白雄のわかりにくい悋気が故だと、気付けるはずもなかった。
 
150523
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