その日は、白龍と口付けを交わした幸福感を胸に眠りに就いた。柔らかなクッションを抱き締めて、白龍との約束を何度も頭の中で反芻する。
『ずっと一緒にいよう。ずっと、ずっと』
例え叶う望みのない、大人たちに笑われるような幼い約束であっても、彼らにとっては本気の約束だった。優しい口付けは仄かな花の味がした。照れ笑いながら手を握り合って将来を誓った。ずっと一緒にいる未来を、確かに信じた。
彼らを呼ぶ白瑛の声に、お互いびくっと肩を揺らしたのがおかしくて、顔を見合わせて笑った。幸せだな、とは表情を緩めてクッションに頬をすり寄せる。暑い夜の空気が、火照る頬を隠してくれた。
やがてすう、と寝息を立てて眠りに落ちたの部屋の扉が音もなく開く。するりと影のように入ってきた人物は部屋の鍵を閉めると、穏やかな寝顔を晒しているを見てふっと口角を吊り上げた。
両親は仕事でいない。他の兄弟たちもとっくに眠りに就いている。決して安くはない造りの家の壁は厚い。余程騒がれなければ誰にも気付かれないだろう。その人影は――白雄は、ぎらぎらと目を輝かせて、眠るに馬乗りになった。
ぎし、と男子高校生の体重を受けてベッドが軋む。このまま腰を下ろせば、小学生の妹は潰される重みで目を覚ましてしまうだろう。起きるなら起きるで構わないが、まだ起こすには早いと、白雄はそっとの小さな桜色の唇を指でなぞった。
昼の出来事が白雄の頭を過ぎり、白雄はぐに、と唇を押し潰すように指に力を込める。鮮明に思い出せる光景。昼間、開け放していた自室の窓から聞こえてきた声に、下を見た白雄は頭をがつんと殴られたような衝撃を受けた。可愛い可愛い最愛の妹が、末の弟に口付けられて嬉しそうに微笑んでいた。ずっと一緒にいよう、そう照れ笑いながら約束を交わす二人に、沸き上がったのは微笑ましさなどとは程遠い、どす黒い感情で。
妹に抱く感情ではないと知っていた。だからずっとそれを表に出さないように押し込めていた。幼い妹に浅ましい劣情を抱いていることを認めたくなくて、アルファである白雄に寄ってくる有象無象で適当に事を済ませてはその度に虚しさを抱えていた。それなのに、弟はいともあっさりとに口付けてみせたのだ。もそれを受け入れて笑っていた。 汚してはいけないと思っていた小さな妹が、綺麗なまま、けれど確かに大人になっていく。そうした時に、隣にいる人間が白龍だとしたら、いつか白龍の手で汚されるなら、白雄はそれを受け入れられるのだろうか。自問に対する答えは明白で、必死に恋慕を抑えていた自分が馬鹿らしくなって、白龍にを譲りたくなくて。白龍が許されるなら自分だって許されるはずだ。妹が不可侵だと自分で決めたのならそれを破るのも自分だ。いっそ自分の手で汚してしまえ、と箍の外れた白雄は、年の離れた幼い妹にあらぬ行為を働くためにこうして夜部屋に忍び込んだ。
ぷちぷちと、寝間着のボタンを外していく。膨らみなど申し訳程度にしかないささやかな薄い胸は、外気に晒されていることなど知りもせずにゆっくりと上下していた。寝間着を大きくはだけさせ、下着を捲り上げる。白い肌と、小さな桜色の突起が暗い部屋の中でもはっきりと視界に映って、白雄はごくりと喉を鳴らした。
誰にも性的な意図を持って触れられたことなどない綺麗な白い肌に、骨張った大きな手を滑らせる。さわさわと確かめるように腹から胸を撫でる感触に、眠りの中にあるの眉がぴくっと動いた。しかし目覚めには至らずに、白雄の手にされるがままになっている。揉むこともできないような未発達な胸を何度も繰り返し撫でる無骨な手。時折桜色の突起の上を手のひらが掠めるが、性感帯としての役目を果たすのに未発達なそこにはほとんど無反応で、時折煩わしげに身をよじらせるだけだった。
「ん……」
とはいえさすがにこうも無遠慮に触れられていれば意識も浮上してくるのか、の瞼がぴくっと動いた。そろそろ目が覚めるか、と思った白雄はに唇を重ねる。昼間白龍としていたそれの痕跡を塗り潰すように、一分の隙もなくぴったりと重ね合わせて唇を食んだ。
「ぅ、ん……!?」
呼吸を阻害されたことで一気に覚醒したのか、の目がぱちりと開かれる。寝起きでぼんやりとしている瞳には、ありありと状況への困惑が表れていた。おそらく目の前の近すぎる顔が白雄だということも理解していないのだろう、恐慌に陥ってぱたぱたと暴れ出したの手足を押さえ付け、驚いて開いた小さな口にぬるりと舌を滑り込ませた。
「ん、んんっ、!?」
口吸いなど知るはずもないの目がより一層深い混乱に焦点を失う。わけもわからず逃げ惑う小さな舌を絡め取って、吸い上げて、時折上顎を舐めたりして、好き放題弄んで。呼吸の仕方もわからないが酸欠に陥ってくたりと体から力が抜けてようやく、白雄はから唇を離した。
「は、ぁ……ゅ、ゆうにい、さま……?」
解放されてやっと目の前の人物が誰なのか理解したらしいが戸惑いを隠さずに白雄を見上げる。剥き出しになった胸元を白雄が撫でれば、それでようやく気付いたようには驚きに目を見開いて白雄の手を引き剥がそうと小さな手を伸ばす。だがそんな抵抗が通じるわけもなく、白雄はふっと笑ってその手を押さえ付けた。
「ゆ、うにいさま、な、何を、」
信頼する長兄にわけのわからないことをされて混乱しているは、顔を青ざめさせ、目に涙をいっぱいに浮かべて白雄を見上げる。その怯えた様子に加虐心を煽られた白雄は、再びの唇に食らいついた。舌を拒むことも知らない幼い唇に自身の舌を捩じ込んで、口腔内を荒らして、ぴちゃぴちゃと音を立てて小さな口と舌を散々に蹂躙して、がぐったりと動かなくなるまで何度も角度を変えて口腔内を犯した。
「……はぁ、はっ……」
零れた唾液がてらてらと跡を残す小さな顎、荒い呼吸に大きく上下する薄い胸。片方の突起を指で摘んで、びく、と肩を竦めたの快感を引き摺りだそうとこねくり回すが、やはりまだ未発達な体では感じることができないようで、はいやいやと身をよじって逃げようとするだけだった。
「や、ゆうにいさま、何するんですか、やめてください、」
「……綺麗な体だな」
ただ混乱のままに白雄を拒むだが、真っさらな妹を汚していく歪な歓びに胸を満たしていく白雄は、制止など聞こえていないかのようにの肌へと舌を滑らせた。
「ひあっ!?」
ぬるっと唾液で湿った生暖かい舌が肌を這う感触に、驚いたが甲高い声を上げる。片方の突起をぐりぐりと親指で押し込むように潰しながら、もう片方のそれを口の中に含んでちゅっと吸い上げる。からしてみればその行為は赤ん坊が母親から授乳される時のものである。それを高校生の兄が小学生の自分にしている状況が欠片も理解できなくて、唾液でぬめった舌がちろちろと突起やその周辺をくすぐる感覚が何とも言えない居心地の悪さをもたらして、むずむずするような感覚にぎゅっと手を握り締めた。
「ゆうにいさま、やだ、やめてください……」
くすぐったくて少し気持ち悪くて、そしてほんの少しだけよくわからない感覚が混ざっている。の胸の小さな桜色の突起を玩具か何かのように愉しそうに弄り回す白雄が怖いと思った。やめてほしいのに、そう何度も懇願しているのに、優しい兄は聞いてくれない。
「っあ、」
「可愛いな、」
裏返ったような声が出て、咄嗟に口元を覆ったは白雄の満足な笑顔に何故だかとても恥ずかしくなって、真っ赤になった顔を腕で隠した。しかしそれを白雄は許さず、の顔を覆う腕を掴んで剥がす。可愛い、と繰り返す白雄は優しい微笑みを浮かべているのに、の胸の上で動かす手を止めてくれない。
「、感じたのか」
「か、んじ……?」
「気持ちいいということだよ。こうされるのが、気持ちいいと感じることだ」
白雄の言葉に意味が解らず首を傾げるのぴんと立った桜色の突起を、痛くない程度に加減して甘噛みする白雄。再び感じるよくわからない不快感にも似たそれに、は身をよじらせた。兄が先程からに何を求めているのか全く理解はできなかったが、なんだかとてもいけないことをしている気がして、白雄を必死に押し止めようとする。
「いや、ゆうにいさま、お願いです、やめて」
その言葉にようやく顔をの胸元から離してくれた白雄に、はほっと表情を緩めるが、次の瞬間にはその顔を強ばらせた。
「雄、兄様!?」
「こら、。あまり大きい声を出すな」
思わず叫ぶように兄の名前を呼んでしまったの口を、白雄は自らの大きな手で塞ぐ。目を白黒させたの下の寝間着を、白雄はもう片方の手でずり下げてしまっていた。下腹部まで覆う可愛らしいプリントの、色気もへったくれもない下着が小学生の、無垢な妹を犯しているという白雄の背徳感を殊更に煽る。一方で胸のみならずパンツまで白雄の視線に晒されてしまったは、あまりの恥ずかしさに顔を真っ赤にして大きな瞳からぼろぼろと涙を流していた。の口を覆っている白雄の手を、流れた涙が伝う。ひどく熱い涙だと白雄は思った。そしての耳元へと口を寄せて、白雄は告げる。
「大声を出したら、とても痛くて酷いことをするぞ」
ひっと息を呑んで白雄の脅しに身を縮める。優しい優しい白雄がそんなことをするとは信じたくないが、現に今白雄はにわけのわからない行為を強いていて、嫌がってもやめてくれなくて。ギラギラと嫌な熱を孕んだ白雄の瞳に、言う事を聞かなければ本当に酷いことをされると本能で悟っては恐怖に泣きながらがたがたと体を震わせた。
「そう、いい子だな、」
「……ひっ、」
白雄がの下着をずり下ろす。可愛らしい柄の布地が擦れながら脱がされていく感覚に息を呑み、思わず止めようと手を伸ばすだが、白雄が冷たい視線でを見据えるとびくっと震えて手を引っ込めた。それに満足そうに笑った白雄に、の体の震えはより一層酷くなる。の細い脚を掴んで無理矢理開脚させると、白雄は下着に隠されていたそこへと指を滑らせた。誰にも触られたことのないそこを長い指が這っていく感触に、はぎゅっと固く目を閉じて耐え忍ぶ。乾き切ったそこに、白雄はふっと笑った。
「濡れてるはずもないか」
独り言のように呟くと、広げさせた足の間に顔を埋めて、小さなそこをいたぶるようにゆっくりと舌を這わせる。押え付けた掌の下で脚がびくんと跳ねるが、構わずに何度も何度もべろりと舐め上げた。羞恥と恐怖と混乱では頭が爆発してしまいそうだった。けれど白雄が怖くて何もできないは声を殺して必死に耐える。小さな陰核や固く閉ざされた入口を熱い舌が這う感触に、何度もの体はびくびくと跳ねた。唇を噛み締めても上がりそうになる声に、大声を出すなと言われたことを思い出しては口を手のひらでがっちりと覆う。
白雄は舌を小さい入口に突き立てて何度も前後させた。固く締まっているそこを解すように、ぴちゃぴちゃと音を立てて舌で舐めたり挿入したりを繰り返す。防衛本能からかじんわりと濡れ始めたそこを更に追い立てるかのように一層激しく貪る白雄。やがて唾液だけではない液体でそれなりに十分な水分を含んだそこにふっと息をかけ、白雄はようやく埋めていた顔を上げた。
見下ろしたの顔は、呼吸を阻害するほど強く口を塞いでいたことや、排泄の役割以外知らなかったそこを舌で散々に弄ばれたことへの羞恥などで真っ赤になっていた。ぼろぼろととめどなく溢れる涙がシーツに染みを作っている。何も映さない虚ろな目は、ぼんやりと現実逃避するように虚空を見つめていた。かたかたと震えている小さな体を眼下に収めてぞくぞくと昏い喜びに白雄の胸が高鳴る。自身のズボンと下着を下ろし、強制的に開かせたの脚を再び押さえつけると、白雄はにっこりと笑った。
「これでもう、お前は白龍と結ばれないな」
白龍、という単語にぴく、と反応を示したが白雄へ焦点を合わせる前に、白雄は小さなそこへ一息に自身を捩じ込んだ。
「あ゛、あっ……!?」
体格の違う白雄の陰茎を狭いそこに無理矢理に押し込まれて、裂けるような痛みには堪らず呻き声のような悲鳴を漏らす。ぎちぎちと、到底収まりきらないそこを無理に押し広げられていく痛みと苦しさに呼吸もままならない。はくはくと口を開閉させ、限界まで目を見開いてがくがくと震える。白雄もあまりに狭いそこに表情を歪めながらも、開かせた脚を担ぐように肩に乗せ、細くて薄い腰をがっちりと掴んで更に押し進めていく。の喉は掠れた呼吸音だけを発していた。
やがての最奥に自身が突き当たると、白雄はようやく動きを止めてふう、と息を吐く。無理矢理に挿入したせいで結合部から血が流れていた。けれどそれが、可愛い可愛い妹のはじめてを奪ったのだと白雄に実感させて喜びを抱かせる。白龍でも他の誰でもない自分が、この純粋無垢な愛らしい妹の純潔を奪い汚したのだという事実が、じわじわと白雄の胸の中に歪んだ喜悦を広げていった。の汗で濡れた前髪を額から払ってやり、そこと唇に順番に口付ける。腹の裏側をえぐられるかのような感覚に必死に耐えているはもう精神状態が限界なのか、ちゅっと鳴るリップ音にも無反応だった。愉しげに目を細めた白雄が、の細腰をぐっと掴んで、自身の腰を前後させの中を揺さぶり始めた。始めは狭いそこに遠慮していたようにゆっくりとした動きだったのが、次第に激しくなっていく。
「あ、あっ、」
お腹が壊れる、とは思った。揺さぶられる度、がつがつと一番奥に硬いものが突き当たる度、壊されるという恐怖が痛みと共に溢れ出た。今自分の身に何が起こっているのかもわからない。ただ痛くて苦しくて、壊れてしまいそうで。いつだって優しかった兄がに強いている行為はいったい何なのだろう。腹の裏側が白雄の質量でいっぱいになる。抽送を繰り返されるそこはじんじんとした痛みを絶えず訴えていて、中にがんがん打ち付けられる痛みと容赦なく擦られる痛みに、ただ涙ばかりが止まらない。時折背筋をぞわぞわした感覚が走ったが、その意味など知らないはただ泣いた。
(きっと、いけないことだ)
朦朧とする頭で思う。
(これはきっと、とてもいけないことだ)
に判るのはそれだけだった。お腹の中が痛い、裂けそうな入口が痛い、押さえ付けられた脚の付け根が痛い、何も理解できずに罪悪感だけが募る心が痛い。
やがて、白雄がうっと呻き声を上げた。どろりと熱い何かがの中に広がる。ずるりと自身を引き抜くと、白雄はうっそりと笑っての耳へ口を近付けた。
「、お前は確かもう生理が来るようになっていたな?」
ようやく解放されたは心ここにあらずといった様子で、荒い吐息混じりに問いかけられた言葉に反応を示さない。虚ろな目をしたの頬をぺちぺちと叩いて意識を呼び戻しながら、白雄は笑顔のまま言葉を続けた。
「なら、子供ができるかもしれないな」
白雄の言葉に衝撃を受けて、の瞳が焦点を結ぶ。子供は仲のいい夫婦が自然と授かるものだと思っていたの中で、今の行為と白雄の言葉が結び付かなかった。けれど、子供ができる、という言葉にの顔から血の気が失せる。
「子供ができてしまえば、は俺と結婚しなければならないな」
白雄と結婚、という言葉にが愕然と目を見開いた。『ずっと一緒にいよう』と約束した昼の出来事が、白龍の笑顔が脳裏を過る。白雄の手がそっとの薄い腹を撫でた。白龍と、一緒にいられなくなる。その考えに至ったは、がたがたと体を震わせて、顔を覆って泣き出した。
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