「そんなにひどくされたいか、
 逃げようとしたを上から押さえつけて、白雄は笑う。涙目でふるふると首を横に振るの手をぎゅっと握り込んで、うつ伏せのの背中に跨った。
「ならどうして逃げようとするんだ、大人しくしていてくれれば優しくするのに」
 なおも逃げようと、白雄にとっては児戯に等しい抵抗を続けるに背中から覆いかぶさって、その耳元で囁く。ビクッと震えて一層激しく暴れ出したを叱るように、その胸元に手を伸ばした。息を呑んだは真っ青になって白雄の手から逃れようと身を捩るが、一回りも二回りも体格差のある白雄に抱き込まれてしまっていてはなす術もない。
「や、やめてください、雄兄様……」
 耳をやわやわと食みながら制服のブラウスのボタンをぷちぷちと外していく白雄に、は縋るように制止の声を上げるが、白雄は意にも介さず手を進めていく。
「やめたら辛いのはお前なんだ、。そもそもどうしてヒートが来たと判った時点で下校しなかったんだ」
 白雄が帰ってきて目にしたのは、玄関で蹲って苦しそうに呼吸をしているの姿だった。慌てて駆け寄ってどうしたのかと問えば、昼からずっとヒートに耐えていたらしく、常に携帯している抑制剤で何とか凌いでいたらしい。一緒に帰ってきた白龍が心配しないようにヒートと抑制剤の副作用による不調を隠し通して、買い出しのためにすぐ出かけていった白龍を見送った直後にぷつんと糸が切れてその場に崩れてしまった。
「ヒートが来たら必ず誰かと一緒に早退しろと言っただろう? 白龍はともかく俺も白蓮たちもそれなりに融通を利かせられるのに、どうして俺たちを頼らないんだ。抑制剤はお前の体に合わないのだから極力使うなと言ってあるだろう」
 家に帰った後も白龍の用事を優先してヒートが来たことを言い出さなかったにも、妹を愛していると豪語しているくせにその不調に気付きもしなかった白龍にも腹が立つ。が白龍を慕っているから迷惑をかけたがらないことも、その白龍のために全力でヒートを隠し切ったことも判っている。判ってはいるが、それだけに尚のこと苛立ちは募った。
「ヒートの影響を受けるのは何もアルファだけではないと、お前は知っているだろう。ベータやアルファが溢れかえる学校でヒートのまま数時間過ごすなど、犯してくださいと言っているようなものだ」
「そんな、私、」
 が泣きながら弱々しく反駁する。そんなつもりじゃない、と涙を零すの肌に、性的な意図をもって手を這わせていく。アルファの出すフェロモンにつられ、一層アルファを求めて疼き出した本能に、一番近くにいるアルファである白雄を絡めとろうと勝手にフェロモンを放つ体に、はただ募る嫌悪感と悲しさに涙を溢れさせた。
「わたし、龍兄様だけに、」
「……
 の言葉に、一瞬白雄の手が止まった。
「今の前にいるのは俺だろう? たとえ白龍でも、俺以外の名前を呼ばれるのは面白くない」
「……っ、でも、」
「お前のはじめてを奪ったのは誰か、忘れたのか
 どんなにが白龍のためだけに貞節を守ろうとしても、それは始まりから破綻しているのだ。それを突きつければの瞳が歪む。誰に対しても怒るという行為ができないの、それでも白雄の言葉に抗いたいの意思が恐怖や怯えで滲んだ瞳の奥に垣間見えて。
「俺のこと以外、何も考えられなくしてあげるから」
 白龍の名前も呼べないくらい喘がせればいいか、と白雄は酷薄な笑みを浮かべた。

「ん、ぁ、ああッ、」
 ぴちゃぴちゃと、水音が喘ぎ声に混ざって響く。脚を無理矢理広げさせて間に頭を埋めて、白雄は執拗にそこを嬲っていた。
「や、りゅ、にいさま、……ぁんッ!」
 すっかり濡れそぼったそこを吸い上げたり舌を挿し込んだりを繰り返す白雄は、が何度イッても休ませることなく行為を続けていた。ぼろぼろと泣いているは助けを求めるように何度も白龍の名前を呼ぶが、その度に白雄が一番敏感な陰核を責める。ビクッとの腰が跳ねたのを押さえつけて、白雄は笑った。
「ああ……抑制剤を飲んでいる分、普段より理性が残っているのか」
 いつまで保つだろうな、と再び陰核を口に含んで舌で捏ね回す。の口から絶え間なく上がる嬌声に目を細めて、白雄は割れ目に指を挿し込む。十分に潤ったそこは、何の抵抗も無く白雄の指を受け入れた。熱く濡れた内壁を嬲り、知り尽くしている弱いところをぐりぐりと擦れば、悲鳴じみた高い声を上げてが身をよじらせる。それを難なく押さえつけて、ずちゅずちゅと浅いところで抜き差しを繰り返せば、敏感な芽を舌で弄られていることもあっては呆気なく達した。
「……りゅう、にいさま……」
 息も絶え絶えなが、しかし弱々しくも白龍の名前を呼ぶ。掠れた声の縋るような響きに、白雄は眉間に皺を寄せて顔を上げた。力無く痙攣を繰り返すの細い体に覆いかぶさって、上体を抱き起こす。首筋にねっとりと舌を這わせて、その先にある項をするりと指で撫でた。
、忘れていないとは思うが……」
 首元から上目遣いに見上げてくる白雄に、虚ろな目をしたがビクッと肩を揺らす。揺れた肩にチュッと吸い付いて痕を残すと、白雄はぐっと項を強く指で押した。
「俺もアルファだ」
「……ッ!!」
 白雄の言わんとしていることを理解して、その瞳が恐怖に染まる。白龍とが番になることを禁止した手前しないだけで、白雄もその気になればいつでもの項を噛んで番にすることができるのだと、遠回しに脅す白雄にはカタカタと身を震わせた。ちろちろと首筋を舐る舌が怖くて、番に関して拒否権を持たないオメガであるは白雄から必死に逃げようとするが、白雄がそれを許すはずもなくより深く抱き込まれてしまう。
「俺もそう理性が強靭な方ではないんだ、。ものの弾みでお前の項に噛み付いてしまうかもしれないな。頭に血が上っていれば尚更だ」
「……お、ねがいします、雄兄様、番に、しないで、」
「なら、どうすればいいかわかるだろう?」
 震えながら懇願するの目じりからはぽろぽろと涙がこぼれ落ちていて、けれどそれこそ愛しいとでも言うかのように白雄はべろりと頬に舌を這わせて涙を舐め取る。グチュッと、白雄の指が掻き回したそこから淫猥な水音が鳴った。
「……、雄兄様の言うこと、ちゃんと、聞きます、から、」
「そう、いい子だな。ならまずは俺としている時は白龍の名前は呼ばないこと、いいな?」
「っ、はい……」
「それからもうひとつ、」
 本能と快楽に流されまいと、はぎゅっと眉間に皺を寄せる。耐えようと細められた瞳は、けれど続く白雄の言葉に大きく見開かれた。
「『好きです雄兄様』と今ここで言ってくれ」
 の瞳が凍り付く。それだけはできない、と言おうとしたの唇を、白雄の少しかさついた薄い唇が塞いだ。ぬるりと滑り込んできた舌がの舌を捕らえ、ヌチュヌチュと音を立てていたぶる。呼吸もおぼつかない様子で苦しそうな息を漏らすの狭い中を押し広げて、散々性感を教え込んである子宮口をくにくにと長い指で捏ね回した。
何度性行為をしても快感に身を委ねることを厭うの意思に反比例して、体はどこまでもオメガの本能のままに白雄の与える熱を悦んで享受していた。アルファを誘い、その精を胎に受けるためだけに淫らに造られた身体。本能はどこまでも浅ましく白雄を求めて脚の間をしとどに濡らした。熱く蕩けた肉襞が、白雄の指を奥へと誘い、離すまいと絡みつく。心と乖離してしまった本能が、にはただ苦痛で。だからオメガになんて生まれたくなかったのだと、そう泣きながらバースを恨んだの頭が真っ白に染まる。チカチカと、何度目かの絶頂に目の前が眩んだ。
「……は、」
 ようやくの口腔から舌をずるりと抜いて唇を解放した白雄が、そんなを見下ろして笑う。
「もう一度聞こうか、
「ぁ……」
「俺のことが好きだと、言えるな?」
 ぬち、と音を立てて白雄が姫割れの周辺を中に入れていない指で探るように動く。首を振ろうとしたの項を再び白雄の長い指が這った。ゾッと背筋に走った悪寒に、は身をこわばらせる。どうしたらいいのか解らず泣き出したの耳に、ガチャッと部屋のドアの開く音が届いた。
 
151023
ネタ提供:練白雄で裏の話が読みたいです。背景などは何でもいいです。
とのことでしたので、この更新をもってかえさせていただきます。
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