「…………」
もみ、と至極真剣な顔で胸を揉んだのは、ヴェインではなくだった。ちゃぷりとお湯に波紋を立てて、の両手がヴェインの胸を揉むために動く。そのあどけない目は、じいっとヴェインの胸を見つめていた。
「あのー……様? そんなに見つめられると、照れちゃうなー……なんて」
「…………」
「そ、そんなに気に入ったんですか? いやあ、びっくりしちゃうなー……」
ヴェインの声が、虚しく浴室に響く。湯船の中で向かい合って座るは、さっきからずっとヴェインの胸を凝視していた。そして、ふにふにと確かめるように揉む。小さな柔らかい手の感触が胸の筋肉を包むたび、ヴェインは何とも言えない複雑な気持ちになる。触れてもらえるのは嬉しいのだが、こう、少し困ったことになっている。主に下半身が。
「様ー、お返事いただけないと、俺は寂しいですよー」
「…………」
「俺、そろそろ泣きそう……」
もみもみと夢中でヴェインの胸筋を揉んでいたが、ようやく手を離す。そして、何かを思案するような顔でぺたりと自分の胸に手を当てた。
「……ヴェインのほうが、おっぱいおっきいね……」
「ぶっ」
「ヴェイン、『きょにゅー』?」
「ごほっ、様、どこでそんな言葉を覚えたんですか?」
「……ラカム? が、持ってたほんに、のってたよ?」
「様、その言葉は忘れましょうね。あと、それランちゃんの前で言っちゃいけませんよ」
ラカムの持っていたいかがわしい雑誌を、うっかり読んでしまったらしい。ランスロットに知られればラカムが儚くなってしまうと、ヴェインは事実の抹消を図った。頷いたは、自分の慎ましい胸に手を当てたままヴェインに問う。
「ヴェインも、『きょにゅー』がすき?」
「ゲホッ、様、忘れてくださいって言ったじゃないですか」
「らんすの前で、いわないよ?」
「できれば、二度と口には出さないでいただけると……」
「でも、『きょにゅーは男のロマン』って、ラカム言ってたよ?」
「本当にやめてくださいね様、ランちゃんがラカムに酷いお仕置きをしかねないので」
むしろこれは自分もラカムに抗議をしに行くべきかと思いつつ、脱線しまくった話題を元に戻そうとする。
「俺は様の胸だったら、小さくても大きくても好きですよ?」
「ヴェイン、『ろりこん』?」
「……それもラカムですか?」
「ううん、クラウディア!」
あのメイドは自分の主に何を吹き込んでくれているのだと、激しく噎せたヴェインは遠い目をする。むしろあのメイドこそがロリコンだというのは置いておくとして。
「あの、様。俺は様が好きなので、小さいとか大きいとかは気にしないんですよ」
「そうなの?」
「そうなんです」
「でもわたし、こんなにちいさいよ?」
ふに、と自分の胸を揉んだが、おもむろにヴェインの手を取ってその控えめな乳房に導く。薄くも柔らかい胸にぺたりと張り付いた手に伝わった感触で、ヴェインは飛び上がりそうになった。不安げにヴェインを見上げるのその小さな胸を、自分の大きな手がすっぽりと包み込んでいて。いつも触ってくれるけれど果たしてヴェインに不満はないだろうか、そんな要旨のことをが言った気がするけれど、ヴェインの頭は爆発しそうだったためそれどころではなかった。愛しい人が、自らその控えめな胸へとヴェインの接触を許してくれているのである。首を傾げたに、硬直の解けたヴェインはがばりと抱き着いた。
「!!?」
「あーもう、様、だめですよ、そんなに可愛いことしたら!」
「ヴェイン?」
「俺の様がこんなにも可愛い……!」
ぎゅうぎゅうと強く抱き締めるヴェインの腕に、は戸惑いながらも嬉しそうに頬を緩める。そのはにかんだ笑顔が決定打となって、ヴェインの理性はぷちっと切れた。
「あっ、ヴェイン、なんでおしりさわるの!?」
向かい合わせで揉むのに丁度いい位置にあったからです。そんなことが言えるわけもなく、ヴェインは噛みつくようににキスをする。目を白黒させるは、どうしてヴェインの理性が切れたかも理解していないのだろう。無垢で純粋であるが故に意図せずしてヴェインを煽るは時に悩みの種ではあったが、今はただもみくちゃにしたいほどに愛おしい。ぎゅうっと強く抱き締めながら、柔らかい臀部を揉みしだく。戸惑う声は全て深い口付けに呑まれて、は風呂の熱気だけではない暑さで肌を赤く染め上げた。
「ふっ、んん、ぷあっ、」
唇を離したヴェインの目の前で、の唇が唾液に濡れて光る。ぞくりと背筋が震えて、欲情の昂りを自覚したヴェインはの体をひょいっと持ち上げた。驚いて身をすくめるを、自分と同じ向きにして膝の上に座らせる。既に硬くなった陰茎に触れた小さな尻が震えるけれど、構わずヴェインはをがっちりと抱え込む。尻尾や翼が所在なく縮こまっていたが、広い胸元にそれらをがっしりと纏めて抱え込んだ。そして、細い首筋に顔を埋める。すんすんと匂いを嗅げば、ヴェインの好きなの匂いが胸を満たした。はあっと零れた湿った吐息の感触に、が小さな悲鳴を上げる。その小さな胸を、ヴェインは両手で鷲掴みにした。
「ひぁんっ!?」
「様のおっぱい、こんなにすべすべで、感じやすくて、可愛いんですよ? これを不満になんて、思いませんって……!」
平らに等しいほどなだらかな曲線を描く乳房は、けれど確かに柔らかい。指先を沈めれば、確かに返ってくる弾力。すべすべとした肌は、撫でるたびに心地良い感触がする。ふにふにと揉みしだくほどに愛らしい声を上げるは、元来敏感な性質なのかとても扇情的な反応を返してくれる。肥沃な大地にも豊かな母性にも例えられないが、の胸がヴェインにとって至高であることに変わりない。むしろこの慎ましさに過ぎる胸はヴェインの庇護欲を煽った。丁寧に、大事に触れて、快感を与えてあげたい。そんな気持ちから殊更愛で続けていた甲斐あって、の胸は大きさこそ変わらないものの感度で言えばそれなりのものになっていた。高い声を上げて身を捩らせるの脚に、胡座をかいた自分の脚を絡める。がっちりと捕らえて、胸を撫で回し、揉みしだいた。
「ヴェ、イン、あっ、ひゃうッ!」
「様、可愛いです、様、」
ぴくぴくと翼の先まで震える感触に、余計興奮が高まる。平らな胸で健気に存在を主張する小さな乳首を指で掠めれば、甘い声が上がってヴェインの背筋に熱を駆け上がらせた。くにくにと弾力のある乳首を揉み潰すたびに、快感を逃がすようにばたつく尻尾がヴェインの肌を打つ。そんな些細な痛みなど気にならないほど、ヴェインは夢中での胸を弄り倒した。小さい胸だとて、いや小さいからこそ、可愛いものは可愛いのだ。どう触れてもびくびくと跳ねるほどに敏感になったが本当に可愛くて、小さな乳房を揉みしだき、愛らしい乳首を捏ね回す。指先でつんとつつくだけで背を反らして声を上げるの反応に興奮したヴェインは、指でぐりぐりと突起を押し潰したり摘んで軽く引っ張ったりを繰り返した。の嬌声はヴェインの情欲を煽る一方で、あどけなさと愛らしさの混じった淫らな声は危うい色気があって際限なく聞いていたくなる。一心不乱にの胸を責め立てていると、不意にが一際高い声を上げてぐったりとヴェインの腕にすがるように脱力した。ふにゃりと半開きになった口から、「はぅ……」と力無い声が漏れる。明らかに限界を訴えているその様子に、我に返ったヴェインはハッと青ざめた。
「様、逆上せちゃいました……?」
「……だ、いじょぶ……けど……」
何回か既に達していたのだろう、はぁはぁと息を荒くしてヴェインの腕に縋るの体は、時折ふるりと痙攣する。けれど悲しいかな、可哀想なほど責め立てられてぐったりと自分に縋るを見て、湧き上がるのは後悔ではなく欲情なのである。
「……その、様、たいへん申し訳ないんですけど」
「…………?」
「挿れても、許してくれます?」
「ぅえ……!?」
思わず変な声が出たが、はそれを恥ずかしく思う余裕もなく驚愕に目を見開いて振り返る。けれどヴェインは答えも聞かないままの股に手を差し入れて、割れ目を慣らし始める。ずぷずぷと容赦なく中を抉る太い指には抗議しようとするけれど、ヴェインの指はどんどん奥へと入っていく。
「あ、やだ、ヴェイン、ひゃんっ……んん、だめ、だってばぁ……!」
ヴェインの手を掴んだだったが、この体格差で止められるわけもない。喘ぎながらも必死にヴェインを止めようと振り向いたは、思わぬヴェインの表情に半端な体勢のまま凍り付いた。
「様、ごめんな」
「……ひゃうっ!?」
とても真剣な顔をしたヴェインが、熱を宿した瞳でを見据えていて。普段あまり見ない鋭い目つきに驚いて固まったの膣から、ヴェインは指を引き抜く。そして向かい合わせになるようにを抱え直すと、ずぷりと剛直を埋めるように下から突き込んだ。
「は、……ぁ、はぅっ、うう、」
「っ、様……!」
暑いのは何も、お湯に浸かっているせいだけではない。めり込むように胎内に入り込む熱に、はぎゅっと目を固く閉じてヴェインにしがみついた。その広い胸に頬を擦り寄せて、ぬくもりに縋る。健気なの小さな体を閉じ込めるように腕の中に囲い込んだヴェインは、大きな陰茎を受け入れて苦しそうなの呼吸が落ち着くのを待った。小さな後頭部は、撫でるように手を這わせると片手で覆ってしまえる。一生懸命ヴェインの大きさを受け入れようとするが可愛いと思えば、また大きくなってしまう。ぷるぷると震えるを前に自制もしきれなくて、ヴェインは下から一度だけ突き上げた。
「はぅん……!」
幼くも甘い声が、の口から零れる。翼も尻尾もぴんと伸びて、それを追い立てるようにもう一度突き上げれば「やぁ、」と泣きそうな声が響いた。
「まって、ヴェイン、ひぅ……ッ」
「様、すみません、俺止まれないです」
尻をしっかりと掴んで、小さな体を揺さぶり始める。下からずんずんと突き上げるたびに泣きそうな声を上げるが少し可哀想に思えたが、だからといって止まることもできなかった。の中は狭いけれどよく濡れていて、温かくて気持ちいい。ぎゅうぎゅうと縋るように締め付けるそこを、もっと貪りたくなる。ガツガツと奥に打ち付けるヴェインの熱にの瞳は焦点を失って、目の前のヴェインの胸に必死にしがみついて耐えようとする。熱いほどに火照った白い肌が、ぶるりと震えて幾度も限界を訴えた。頭の芯まで蕩けそうなほど、の表情も声も温度も何もかもが気持ちいい。たまらずに白濁を放てば、その熱を悦ぶようにの腰が震えたのだった。
「……それで、何か言いたいことは?」
「ありません……」
絶対零度もかくやという冷たさで、ランスロットがヴェインを見下す。幼い日のように正座をさせられて膝に本を積まれたヴェインは、いつフルチェインしたかなとランスロットの視線の冷たさから逃避した。
「積んだのが石じゃなくて本なのは様の温情だ。ありがたく思ってくれ」
「様ってほんとに優しいですよねー……」
「………………」
「ああ、ヴェインには勿体ないくらいだな」
悪戯を叱られた日にヴェインを心配してくれた主は、今日はランスロットにひしっとしがみついてその胸に顔を埋めている。を抱きかかえて慰めるようにその後頭部を撫でながら、ランスロットはヴェインの膝の上にまた一冊本を乗せた。
「様が可愛いのはわかるが、のぼせて倒れるまでするのはどうなんだ。様はまだ小さいのだから、お前のしたいままにしたらどれだけ負担になるのかわかっているのか?」
ちみちみと説教を続けるランスロットと、その低い体温で熱を冷ますように離れない。さすがにやりすぎた自覚のあるヴェインは、男らしくランスロットの説教に耐えるのだった。
180221