、ひなあられと甘酒を持ってきてやったぞ」
「わーい! ありがとう、パーシヴァル」
「……あいつらは何をしているんだ」
「ジークがねー、おっきいひなだん? かってきてくれてね、お父さまがいっぱいお人形さんかってくれたからね、らんすたちがかざってくれてるの!」
「大きい雛壇で済む程度の話か? あれは」
 大広間の四分の一を占領する大きさの雛壇と、その両脇にそびえ立つ雪洞。竜殺しの英雄と白竜騎士団団長と副団長が、騎士たちに指示を出しながらせっせと雛人形たちを飾り付けていた。
様の健やかな成長のために!」
 ランスロットのかけ声に、騎士たちから「おー!」と野太い歓声が上がる。きゃーとはしゃいでちょろちょろと騎士たちの間をうろつくを捕まえ、この国は王女に甘いにも程があるだろうとパーシヴァルは呆れた。が戻ってきてから、フェードラッヘの王城は子どもに関わるイベントに特に力を入れている。もっとも、市井の子どもたちにひなあられや甘酒が配られたりと国民への還元も忘れないので批判はほとんど無いようであるが。フェードラッヘには戦災孤児も多く、子どもを大事にする王の姿勢はほぼ好意的に受け入れられている。イベントは国を盛り上げるにも効果的であるので、パーシヴァルも本心から呆れているわけではなかった。
「パーシヴァル、あられおいしい!」
「もう食べているのか 」
「パーシヴァルにもあげる!」
「俺がやったものだが……まあいい、ひとつ貰おうか」
 ぽりぽりとげっ歯類のようにあられを食べるから、ひとつあられを受け取る。ヴェインが「パーさん、見てないで手伝ってくれよー!」と言ったが、パーシヴァルは鼻で笑った。
「俺にはこのおてんば娘の子守という役目がある」
「ちゃんと手伝わないと、ひなあられもらえないんだぜ?」
「それならもうこいつから貰った」
「何!? ずるいぞパーシヴァル!」
「らんすもたべる?」
「うっ……いえ、俺はきちんと作業を終わらせたあとにいただきます!」
 規律に忠実なランスロットは、の提案にたじろいだもののきっちりと背筋を伸ばして返事をする。難儀なやつだな、と思いつつ巨大雛壇作成の行方を見守るパーシヴァルだった。
 
180303
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