「様に痛みも苦しみも後遺症も負わせずにできるなら、俺はあの翼も尾も角も全て斬り落としてしまいたいんだ。鱗もひとつ残らず丁寧に剥いで、ファフニールに上書きされた魔力も剥がして。そうすれば、様を悩ませるものを除いて差し上げることができるだろう」
「……おいヴェイン、ランスロットが病み期に入ったぞ。今すぐ仕事を取り上げてあのお転婆娘を持ってこい」
「えっ、ランちゃん、様不足か?」
「様に恨まれたい……様に『全部お前のせいだ』と罵られたい……」
「深刻だな」
「あー、ランちゃん、とりあえず様に来てもらうからな? 早まっちゃだめだぞ?」
「せめて俺の手で安らかにして差し上げねば……」
「なあ、これ様近付けちゃダメなやつじゃないか?」
「問題ない。あれの呑気な顔を見ればすぐに収まる類の狂気だ」
「本当か……?」
「らんすー、おやつたべよー?」
「うわ様来ちゃった」
「はい、ただいま!」
「…………」
「ほら見たことか」
180311