「そ、その、義勇さま……あの、」
 もじもじと指を組んで、目を逸らしながらが切り出す。布団の上で向かい合って、抱き締め合って、口付けを交わして。いつもならこのまま睦事へと至る流れだが、は耳まで赤くして義勇に何事か言おうとする。頬やら首やらを撫でる手を止めた義勇にじっと見つめられたは、自分を落ち着けるように深呼吸をして唇を開いた。
「その、えっと……きょ、きょうは、私が、義勇さまのことを、その、」
「……?」
「き、気持ち良く、して差し上げたくて、」
「……お前が動くということか?」
「っ、」
 ぷしゅう、と音でも立てそうな勢いで赤くなったは、両手で顔を覆ってこくこくと頷く。本当に大丈夫だろうか、と思いつつも悪い気はしない。どこかで誰かに何かを吹き込まれたのかもしれないが、は羞恥で死にそうになりながらもその決意は固いようだった。
「あ、あの、義勇さま、わたし、がんばりますので、」
「……無理はするなよ」
「はい!」
 両の拳をぎゅっと握って、が元気よく返事をする。どうにも色気よりも可愛らしさの方が勝る姿ではあるが、結局義勇はそれに欲情してしまうのだから大概だろう。それにしても一体どうしたのかと問えば、はまた沸騰したように赤くなった。
「わ、わたしはその……ちんちくりんで、」
「……慎ましい体型なのは確かだな」
「『無い乳弄って楽しいのかよ』と不死川様が……」
 今度会ったら不死川を殴っておこうと、義勇は決意する。言葉を選ばず言うならは慎ましいを過ぎて貧相な体型なのだが、義勇にしてみればそれは瑣末なことである。つまりは惚れた欲目だ。
「わ、私はいつも、義勇さま任せにしてしまっていて……その、私も義勇さまの、ために何かできたらと……」
 義勇との性格と関係上、はいつも受け身である。けれど不死川の不躾かつ下品な茶々入れにより、は行為において自ら動くべく奮起したらしい。義勇は稚いにあれやこれやと求める気などなかったが、自ら奉仕を申し出たに昂っているのも事実で。しかし、と義勇はを見下ろす。
「やり方はわかるのか」
「……ひ、人に訊いたり、本を貸して、もらったりは」
 一体誰に尋ねたのかがとても不安なところではあるが、のことだからそのあたりの分別は弁えているのだろう。しばし思案した義勇は、の腰に手を回して抱き寄せる。そのままじっとを見下ろせば、了承の意図を読み取ったは意を決したようにぎゅっと手を握った。
「えっと、義勇さま、目を閉じていただけると……」
「わかった」
 促されるままに、目を閉じる。そろ、と確かめるように小さな手が義勇の頬に触れた。毎日刀を握って女らしい柔らかさを失くした硬い手だが、一等愛おしい手だ。おそるおそると義勇の頬を包み込んだその手は、強ばって震えていた。思えば、から義勇に触れることはあまりない。元々の関係が師弟であることを考えれば、それも当然だろう。緊張に震える指先は、義勇がにいつもするように頬や耳の下を撫でた。すりすりと慈しむように触れられて、少しばかり擽ったい気持ちになる。義勇のおもてに触れていた手は、躊躇うように少しだけ止まった。そして、わずかに力がこもる。
「……、」
 小さな唇が、そっと義勇の唇に触れた。ふに、と押し付けられた柔らかさに、義勇は反射的に目を開ける。義勇と目の合ったは驚いたように後ずさろうとするが、後頭部を掴んで制止する。けれどそれ以上は動かない義勇を前に、近すぎて焦点が合わなくともわかるほどにの瞳には焦燥の色が浮かんでいた。狼狽を露わにするだが、義勇と口付けを交わしているために目を閉じてほしいと言葉にすることはもうできない。いつも困ったように下がっている眉が殊更に泣きそうな形をとって、けれどは義勇の頬に手を添えたまま一度ぎゅっと唇を引き結んだ。
「ん、」
 ちう、と遠慮がちには義勇の唇を吸う。探るようなその動きに、義勇の背筋がぶるりと震えた。ちゅっちゅと可愛らしい接吻を躊躇いがちに繰り返すに、食らいついてしまいたい衝動がふつふつと湧き上がる。それをどうにか抑え込んで、の好きなようにさせていた。林檎のように頬を赤く染めて、潤んだ目で義勇を見つめて。それでいて一心に義勇の唇を吸うが愛おしくて健気で、組み敷いて暴いてしまいたくなる。これがの精一杯なのだと思えばそれすらも興奮を煽る情動となって、の後頭部を押さえる手に力がこもった。
「……っ、」
 小さな唇でかぷりと義勇の唇を食んだが、怖々と舌を伸ばす。それを絡め取ってしまいたい欲を捩じ伏せて、薄く口を開いた。何度も躊躇うように止まった舌が、義勇の舌を探り当てる。触れた瞬間びっくりしたように肩を跳ねさせたが可笑しくて思わず含み笑いを零せば、はなんとも言えない表情を作った。拙くもは義勇の舌に自らの舌を絡めて、弱々しいほどに優しく吸い上げる。義勇が自分よりよほど丈夫だということを忘れたわけでもあるまいに、は義勇に優しく触れた。何度も唇を重ねて、舌を柔らかく愛撫する。ちろちろと、小さい舌が義勇の口腔や舌を這っていく。それに応えて義勇が舌を吸うと、びくびくと震えながらも健気に舌を伸ばした。もどかしいほどにゆっくりと舌を絡めて、時折息継ぎをして何度も小さな水音を立てながら深い口付けを交わす。丁寧に舌の形を確かめるようになぞっていったは、そっと身を引いて唇を離した。両の頬を包み込む小さな手に自らの手を重ねて、義勇はをじっと見つめる。次の動きを決めかねているの手を緩く握って、胸から腹をなぞり下腹部へと導く。義勇の太腿に手を置いたの喉が、ごくりと動いた。示唆された「次」に、踏み出すのが怖いのだろう。これ以上はやはり動けないかと思った義勇だが、その予想を裏切ってはそろそろと手を伸ばした。襦袢の間におずおずと手を差し入れて、は義勇を見上げる。
「えっと、その……さ、さわっても、いいでしょうか、」
「ああ」
 正直なところ、もう既に少し勃っている。巧拙はともかく、が恥じらいながらも自分から口付けるその姿だけで興奮した浅ましさに義勇は眉を寄せた。探るようなその手や指の動きが、義勇の肌を震わせる。太腿から鼠蹊部を滑る指にぞわっと煽られて、思わずその小さな手を掴んだ。誤魔化すようにその手を引いて、硬くなったそこへと触れさせる。しばしきょとんとしていたは、自分が何に触れているのか感触で理解したらしくボッと赤くなった。
「あ、あ、あの、もしかして、私はいま、義勇さまの、」
「……そうだ」
 が義勇のそれに手で触れたことは、おそらくない。気持ち悪いかと尋ねれば、はぶんぶんと勢いよく首を横に振った。そろそろと撫でられて、反射的に太腿が震える。
「えっと、その……あたたかいです、義勇さまの……」
「…………」
「いつもお腹に入っているはずなのに、こうして触れると……不思議な、感じがします……」
 形を確かめるように触って、優しく握られる。まるで初めて見るものに興味を示す幼子のような反応と、実際にしている行為の淫靡さが噛み合わなくてぞくぞくと背筋が震えた。少しの間恥じらいつつも確かめるように義勇のものをやんわりと握っていたは、その手をゆっくりと上下に動かし始める。「誰に聞いた」と問いかければ、は手を止めて赤い顔のまま視線を泳がせた。
「その……須磨さんたちに……」
「…………」
「か、勝手なことをして申し訳ありません……」
「いや……」
 正直なところ、それこそ不死川や宇髄に吹き込まれたわけではなくて良かったと安心しているだけだ。義勇のことを想ってのこととはいえ、他の男に性技など教わらせたくはない。血の繋がった身内がいない分、そういった話は鬼殺隊のごく近しい女性にしか相談できないというのは解っているつもりだったが。
「俺とのことだ」
「は、はい……」
「……俺が教える」
「……えっ」
 の手を上から包み込むように握って、が触っていたときよりよほど強い力で陰茎を握らせる。小さな手を強引に使っていると思えば浅ましくもさらに勃起してしまって、より鮮明になった感触にの瞳が潤んだ。狼狽えながらも義勇にされるがままのの手が、義勇のものを包み込んでやわやわと圧迫する。その人差し指を亀頭に当てさせれば、竿とは異なる感触にがおろおろと義勇を見上げた。弾力のあるそこを指の先で探らせると、尿道口を指先が掠める。ぬるっと湿った感触に、が肩を跳ねさせた。先走りで濡れた亀頭を掌で包み込むようにして擦らせると、の手の中で陰茎全体がびくびくと脈打つ。聞き齧っただけの未知の行為に慌てふためくの襦袢を捲り脚の間に手を伸ばし、割れ目を撫でた。僅かに湿った感触があることに、義勇よりむしろが驚いたようにぶるりと震える。義勇と口付けをして、義勇のものに触れていただけで脚の間を濡らしたことの浅ましさに、の瞳が今にも泣きそうなほどに潤んでいた。けれど義勇の胸に湧き上がったのは当然失望でも軽蔑でもなく、醜いまでの支配欲にも似た興奮で。自分と同じようにもこの状況に欲情を覚えていたのだと知って、悪く思うはずもなかった。
「は、はしたなくて、申し訳ありません……!」
 今にも平伏しそうな勢いのの眦から、ぽろりと涙が零れ落ちる。その涙に煽られるように、義勇は指で秘裂をなぞった。
「握っただけで、濡らしたのか」
「……は、はい、ッ」
「……指が入ったな」
 が恥じ入るように俯いて、けれど義勇の指を締め付ける膣内のうねりはの欲情を雄弁に語る。まだ慣らしていないために狭いが、この分だと容易に拡げられそうであった。自らの浅ましさを棚に上げてのそれを暴いた義勇は、の中を慣らしながらも手淫をさせる手を止めない。膣内を拡げていく指の動きに震えながらも、健気に自らも手を動かそうとするの姿に、もう頭がどうにかなってしまいそうだった。何よりも大切にしたい存在であるはずなのに、酷いことをしてしまいそうになる。くちゅくちゅと鳴り響く水音は、果たしてどちらのものだろうか。互いの性器を愛撫する状況に呑まれて、のみならず義勇も息が荒くなる。ぶるりと腰を震わせて達したを前に、義勇は自らのものを擦らせるその手を止めさせた。
「……
 膣内から指を引き抜いて、腰にそっと手を回す。自らの襦袢をはだけさせて、硬く勃った陰茎とそれを握るの手を外気に晒す。膝立ちのを、近くへと抱き寄せて。指を抜かれてひくひくと蠢くそこに、握ったの手を導いた。
「腰を下ろせるか」
「は、はい……」
 べたりと濡れた手で義勇のものを握っているは、自らの膣口へとその切っ先をあてがう。くちゅりと鳴った水音と、僅かにその場所に沈んだ亀頭。対面座位での行為は何度かしているが、こうしてに挿入させるのは初めてだ。そろそろと腰を下ろしていくの表情を、義勇はじっと見つめていた。堪えるように歯を食いしばり、ずぷずぷと少しずつ腰を下ろしていく。焦らされているかのような動きと、少しずつ包み込まれていく快感。臀部にそっと手を添えた義勇に、は泣き出しそうな顔をしながらも義勇の首に腕を回してそのままどうにか義勇のものを呑み込む。根元までしっかりと腰を下ろしたは、はぁと堪えるように息を吐いた。僅かに跳ねた水音と、息も絶え絶えな。褒めるように頭を撫でれば、は蕩けるような笑みを浮かべた。その表情があまりに扇情的で、義勇の腰がずくりと疼く。中で質量を増したそれに、が驚いたように身をよじった。
「あッ、」
 挿入の余韻が抜け切らないところに動いてしまったは、鼻に抜けるような声を漏らす。きゅうっと締まった膣内に、義勇の眉間にも皺が寄った。
「は、ぅ、」
 行為のときの眉間の皺は不機嫌ではなく快楽を堪えるためだと知っているは、自分が動くことで義勇に快感を与えられることを理解したらしい。荒い呼吸のまま腰を浮かせたは、そのままぎこちなく律動を始める。義勇がいつもこの体勢で突き上げるときのように、腰を上下させて。義勇の両肩に手をついて、不規則ながらも抽迭を繰り返す。虚ろに義勇の胸のあたりを見下ろす瞳と、薄く開いた唇。ぬぷぬぷと上下に擦られ、時折締め付けられて。するりと尻を撫でれば、背中を震わせて腰を捩らせた。一生懸命に腰を振るが愛おしくて、目の前で律動に合わせて震える乳房に吸い付く。小さく声を上げて身をよじらせるの膣内が、ぎゅっと義勇を締め付けた。
「義勇、さま、……ッ、わたし、ちゃんと、できていますか……?」
「ああ……っ、」
 不安げに問うの膣は縋るように義勇のものに絡み付いて、義勇がの尻を掴む手に力がこもる。義勇の頭を抱き込むように腕を回して、は上下に腰を振る動きを早めていく。熱く濡れた襞が、搾り取るようにうねって。熱の駆け上がる感覚に、義勇は慌てての中から自身を引き抜く。ぬぽっと引き抜いたその動きに刺激されて、陰茎の先からびゅっと勢いよく白濁が溢れ出た。ぱたぱたと腹に生温い液体がかかり、義勇は射精の後独特の気だるさを感じながらもを布団の上に下ろす。そのまま手を伸ばして股の間をまさぐり始めれば、があわあわと義勇を見上げた。
「んっ、う……義勇さま、」
「……さっきは達していないだろう」
 一生懸命義勇のために動いてくれたを、このまま放っておくつもりはない。義勇に抱き着いたまま膝立ちで愛撫を受けるの腰は、がくがくと震えていた。今にも崩れ落ちそうなの中を責め立て、指先でぐにぐにと敏感な箇所を刺激する。挿入の余韻もあってか感じやすくなっているは高い声を上げて背を反らすと、びくびくと震えてぺたりと座り込んだ。その拍子に指が深くまで入ってしまったようで、達したばかりの空白に追い打ちをかけられたはぼろぼろと涙を零す。が落ち着くまで背中をぽんぽんと叩き、小さな頭を撫でた。指を引き抜いて後始末を始めようとする義勇に頬を寄せて、はちゅうっと触れるだけの口付けをする。照れたようにはにかんだその笑顔に口付けを返して、義勇はを抱き込んだ。
「……もう一度してもいいか」
「はっ、はい、」
 むくりと勃ったそれが腹にあたり、は上ずった声で返事をする。自身の浅ましさにつくづく呆れながらも、義勇はを布団に組み敷いた。また今度があるならに奉仕されたいと、そんな欲が湧き上がっていることにため息を吐きそうになる。精液のかかってしまった腹を撫で、義勇はの中に自身を沈めたのだった。
 
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