ゼェハァと、このふたりが息も絶え絶えなところなど初めて見た。自身も肩で呼吸しながら、は刀を支えにどうにか姿勢を保って顔を上げる。そこには、畳も襖も綺麗なままの部屋があった。
「ふざけやがって、クソがァ……」
「……一体どうなってる、この部屋は……」
 あらゆる技を出し尽くし、破壊してでも脱出しようとしたはずなのに。柱二人(と一応継子)の力を合わせても、傷ひとつ付かなかった。澄ました顔をして掛け軸のように掲げられているのは、「三人で性交をしなければ出られない部屋」というふざけた張り紙だ。それまで襖や障子を開けようと四苦八苦していた義勇と実弥はそれを見た瞬間激昂し部屋を破壊するべく刀を抜いたし、は張り紙の内容を理解こそしていなかったが二人がここまで怒るほど何かとんでもないことなのだろう、と後に続いた。けれど、全力を尽くしても出られないという事実だけが目の前にあって。
「――……?」
 ふと、ちりんと場違いなほど涼やかな鈴の音がしても義勇たちも首を傾げる。音のした方に目をやると、張り紙の内容が書き足されていて彼らは目を瞠った。
 ――不正な方法での脱出が試みられたので、罰則を追加します。
 罰則、という文字に警戒を強めたものの、その瞬間にガチンと硬質な音が聞こえて。近くから聞こえたその音の発生源をおそるおそる見下ろせば、の首には何か黒いものが嵌められていた。
 ――三時間以内に条件を満たさなければ、首の爆弾が爆発します。
 義勇と実弥の目が、張り紙を見て、の首元を見て。すうっと氷点下まで空気が冷え込むような錯覚に、それが殺気なのだと遅れて気付いた。つかつかと歩み寄ってきた義勇が、の首元に触れる。黒い鉄の首輪のようなそれを、不快感も露わに見下ろしていた。
「……ずいぶんとふざけた部屋だ」
 気に食わない、とありありと義勇の顔には書かれている。「タダで済ますかよォ」と、実弥の顔にも血管が浮いていた。にわかるのは、ふたりがすごく、ものすごく、怒っているということだけで。突然どことも知れない場所に閉じ込められ、物理的な破壊は不可能で、を人質にするような時間制限までついてしまった。首で爆発が起こったらさすがに死ぬだろうか、と呑気すぎることを考えるの肩を、実弥が掴む。
「文句なら、後でいくらでも聞いてやるよォ」
「?」
「……不死川」
「ンだよ、怖気づいてんのかァ?」
「違う。 ……は、性交の意味を知らない」
「……あ゛ァ!?」
 妙に呑気だと思ったら、だとか、どういう教育してやがる、だとか、実弥が義勇に掴みかかって。ガクガクと揺さぶられながら、義勇はきまり悪そうな顔をしている。おろおろと止めに入ろうとしたの手を掴んで、実弥は目を吊り上げた。
、テメェ、命より惜しいもんはねェよなァ……!?」
「ぎ、義勇さまと実弥さまの、ご迷惑にならない範囲でしたら……」
「この期に及んでこいつと俺のご迷惑なんざ気にしてんじゃねェ……!」
 三人で、というからには義勇と実弥にも何かしら負担のあることなのだろうと、にとっては当然の答えだったのだが。義勇のことを除けば命より惜しいものが無いのは事実なので、自分にできることは何だってするつもりだ。「本当に何もわかってねェ」と脱力する実弥と、気まずそうに目を逸らす義勇。とはいえ、ここで黙って時間を浪費してもどうしようもないことだけはにもわかる。「私にできることなら、何でも……」と言いかけたの口を、義勇の手がぱしんと覆った。
「……テメェ、どういう教育してやがんだァ」
「…………」
「過保護にしすぎて危機感足りてねェだろ」
「……
 何でも、と言うなら。そう言って、義勇はの耳に顔を寄せた。するりと、大きな手がの腹を優しく押さえつける。「……俺たちが、お前の服を脱がせて、肌を晒して、」「……ッ!?」「体のあちこちに触れて、お前も知らない場所を暴いて」囁くように、義勇の低い声がの耳元で響く。「乱して、かき回して、自らのものにしてしまっても、」ぎゅっと、義勇の指が薄い腹に押し込まれた。
「構わないんだな」
「……ぇ、あ、」
 今の、義勇の言葉は何だったのだろう。まるで知らない人のように、その声はいつもと違っていた。ばくばくと、心臓が飛び上がったままうるさく脈を打ち続ける。耳が、声とともに熱を吹き込まれたように熱くなる。真っ赤になった顔を押さえてへたり込んだを、義勇は軽々と抱え上げた。
「もっとも、嫌だと言われても……お前の命が懸かっている以上は、」
「泣かれようが喚かれようが、やるしかねェだろォ」
 チッと舌打ちをして、実弥が部屋の真ん中に敷かれていた布団を忌々しそうに見下ろす。どうして布団などあるのだろうと呑気に疑問に思っていたのはばかりで、義勇も実弥もその意味するところをわかっていたらしい。何も知らないは、きっと軽率に「何でもする」などと口にしてはいけなかったのだろう。義勇がそっとを布団に下ろし、実弥がの腰の刀を抜いて脇に寄せる。二人の目は怖いくらいに真剣で、思わずは義勇の腕に縋るように抱き着いた。今更危機感を抱いたらしいに、実弥が舌打ちをする。けれど、首輪を睨み付ける実弥が意外なほど優しくの頬を撫でたものだから。反射的にそのぬくもりに頬を擦り寄せてしまったことも、或いはあやまちなのかもしれなかった。

「っ、」
「……泣いてもいいぜェ」
 羽織を脱がせて、隊服の釦に手をかけて。それだけで泣きそうなに、既に罪悪感を抱いてしまっているのに。義勇たちに手間をかけさせまいと震える手で自ら釦を外そうとするが、あまりにも哀れだった。ガタガタと震えるの手をそっと掴んだ義勇が、代わりに手早く釦を外して脱がせていく。まさに子どもをあやしているような状況に、実弥が顔を顰めた。いくら好いている女が相手だからといって、得体の知れない部屋に閉じ込められて強制的に強いられる行為が愉快なわけがない。おまけに、はまぐわうことの意味すら知らない未通女だ。その上恋敵とも言える男も含めて三人で行為をしなければいけないというのだから、実弥の機嫌は下降する一方で。気に食わないから、「壊れたら泣くだろ」と藤の簪もさっさと外してやった。義勇が何か言いたげな顔で見てくるのを無視して、のベルトに手をかける。体格の良い男ふたりに服に手をかけられて、怖くないわけがない。それでも義勇たちのためだから、と涙を堪えるのいじらしさに余計苛立ちが募った。義勇のため、が何割を占めているのか考えるのも馬鹿らしい。ガチャガチャとベルトを緩めて、一気に袴を引き抜く。晒された白い脚に、思わず眩暈がしそうになった。
「テメェ、こんなんでよく……」
 白くて、細い脚。掴んだ足首は少し力を入れれば簡単に折れそうで、実弥は言葉を失った。筋肉は少しついているものの、その脚はほっそりとしていて緩やかな線を描いている。こんな脚でよくあそこまで駆け回れるものだと、感心と呆れが綯い交ぜになって浮かんだ。すべすべとして手触りのいい肌を、ゆっくりと撫でていく。太腿はふにりと適度な弾力を有していて、皮膚が薄いそこを何度も撫でるとがびくりと身を震わせた。脚の付け根まで撫で上げて、ゆっくりと尻に手のひらを這わせていく。むぎゅりと掴んでみると餅などよりもずっとずっと柔らかくて、けれどぷにぷにと弾力がある。どこに筋肉があるのか疑わしくなるほどの感触に、ごくりと唾を飲んだ。両手で尻を押さえつけて、やわやわと指先を食い込ませる。ふにゅっと柔らかい肉を揉みしだき、むぎゅむぎゅと手のひらに押し付けては離して。やがて羞恥からかしっとり汗ばんできた肌が、吸いつくように実弥の手に応える。びくびくと身を震わせて必死に耐えようとするの尻や太腿を好き勝手撫で回したり揉んだりする実弥に、義勇は物言いたげな視線を向けるだけで制止しようとはしなかった。隊服の前を開けて、慎ましい胸を守っていたサラシを解く。耳にふっと息を吹きかけて、舌先で耳朶を擽った。
「……んッ、」
 の喉を指先ですりすりと擽りながら、耳への口付けを繰り返す。微弱な刺激に震えるの反応を確かめるように、耳から首筋へゆっくりと何度も唇を押し付けて。空いている手でそっと乳房を包み込むと、ふにふにと優しく揉んだ。指先を上下させて、なだらかな丘をすりすりと撫でていく。実弥に脚や尻を触られているせいか既に硬くなっている突起を、つんとつついた。
「ふっ、……ん、」
 繰り返し喉に吸い付きながら、痕を残して。気に食わないとでも言いたげに首輪を見下ろすと、その周りの肌を舌先で擽った。やわやわと胸を愛撫し、淡い桃色の突起をくにくにと揉み潰す。敏感な性質なのか、義勇たちが動くたびにぴくりと肌を震わせて。恥ずかしさに目を固く瞑って声を抑えることに一生懸命なが、愛らしいと思った。
「……柔らけェ」
「ぁ……」
 の太腿に顔を埋めた実弥が、唇で肌を食む。感触を確かめるかのように柔く食んでいたかと思えば、唐突にぢゅっと強く吸い付いて。白い肌に赤く残った痕に、ぞくぞくと背筋が震えた。積もったばかりの雪を、踏み荒らしていくような背徳感。右も左もわからずされるがままのの反応が、一々楽しくて仕方なかった。無理矢理犯すようで気が乗らなかったはずなのに、貪る手を止められない。それは義勇も同じようで、の頬に手を当てて振り向かせ、血色の良くなった唇に自らのそれを重ねていた。くちゅくちゅと舌同士が絡み合って、戸惑うの口から小さな嬌声と湿った吐息が零れる。実弥が太腿を掴んでやわい肌を舐め回すと、「はぅ、」と堪えるような声を上げてが背を反らした。初めてのわりに、ずいぶんと良い反応をする子どもだ。もじもじと股を閉じようとするのを押さえて逆に開かせると、じわりと下着が湿っているのが目に見えてわかった。
「…………」
「……ひあッ!?」
 フッと息を吹きかければ、尾を踏まれた仔猫のようにビクッと跳ねる。湿った下着を指先でくちくちとなぞると、ガクガクと脚が震え出した。逃げるように身をよじらせるだったが、義勇に両手で顔をがっちりと挟まれて深く口付けられてしまい身動きが取れなくなる。実弥の指がそこを往復するたびに、くぷくぷと粘着質な水音がして下着の染みが濃くなっていく。下着越しにぷくりとした小さな膨らみを指で挟んだ実弥は、それをぎゅっと締め付けた。
「ッ、んぅ……! んん、」
 目を見開いて肩を跳ねさせたは、布団を手で叩いて義勇に息苦しさを訴えかけるけれど。嬌声ごと全て呑み込むように深く舌を絡ませている義勇は、それを聞かずに丁寧に口腔を舌で蹂躙していった。口蓋を舌先でなぞり、ちゅぐちゅぐと舌を絡ませ。涙目のが視線で必死に訴えるものの、熱の篭もった視線で見つめ返しては更に深くかぷりと唇を重ねる。やがてくたりと力の抜けたの手が弱々しく義勇の胸に縋ると、ようやく満足げに口を離した。ぷつりと切れた銀色の糸を舐め取って、触れるだけの口付けをまた繰り返す。息が上がってはいても刺激を受ければ反応してしまうことには変わりなくて、濡れた下着をぐちゅぐちゅと弄り回されるたびに呼吸が乱れた。もう用をなしていない下着をずらし、実弥の指が直接そこに触れる。ぬるぬると熱く濡れている感触に目を細めた実弥は、割れ目に指を二本揃えて押し付けて前後させる。跳ねた腰を抱え込むと、そのまま指をゆっくりと押し込んでいった。
「ずいぶん簡単に咥え込むなァ、
 揶揄するように口角を吊り上げて笑うと、泣きそうながふるふると首を横に振る。あらぬところに触れられて、淫らに泣き喘いでいる姿を義勇たちの目に晒しているのが恥ずかしくて堪らないのだろう。初めて異物を受け入れたそこは、呆気なく実弥の指を呑み込んでくぽくぽと卑猥な水音を立てていた。もはやどう息をしたらいいのかもわからなくなっているらしいを、義勇が頭を撫でて宥める。その義勇にしたっての臍の周りをいやらしい手付きで撫で回しているのだから、頭を撫でられたところで安心できるはずもないと思うのだが。それでもやはり義勇に触れられれば安心するらしく、強ばっていた体が弛緩していく。きゅうきゅうと強請るように指に絡み付く温かい襞の感触に、口の端が吊り上がるのがわかった。「ムッツリは師範譲りかよォ」と揶揄うと、義勇の悪口には敏いがキッと睨みつけてくる。そんな、今にも溶けそうなほど真っ赤な顔で睨まれたところで愉しさが増すだけだ。大人しそうな顔をしてやらしいのは事実だろうが、と実弥はナカに入れたままの指をぐいっと曲げて押し込んだ。途端に仔犬の鳴くような声を上げて喉を反らすのだから、まったく可笑しくてたまらない。この様子なら案外楽に男を受け入れられるのではないのかと、実弥は袴越しに猛った熱をの股にぐりぐりと押し付ける。けれど、それを止めたのはさっきまで実弥のすることに静観を決め込んでいた義勇だった。
「……どうしてお前が先なんだ」
「あ? どっちが先でも変わらねェだろォ」
「変わらないなら、俺が先でも構わないな」
「テメェに先譲るのは構うんだよォ、手ェ退けろ」
 ぐぐ、との脚を掴む実弥の手と、それを抑える義勇の手。何か順番の前後で揉めていることはにもわかるのだが、「とてもいやらしいことをしている」くらいの認識であるには彼らの争いが少なくともをそっちのけにしていいことではないことがわからない。息を乱しながらぼうっと見上げてくるに、義勇はきゅっと唇を噛み締めた。
「俺の方が、が安心するに決まっている」
「うるせェ、テメェの後に挿れるなんざ考えただけで萎えるだろうが」
「……何も同じところに挿れなくとも、不死川は後ろを使えばいいだろう」
「……あ?」
 毒気を抜かれたように、実弥がぽかんと口を開ける。挿れるだとか後ろだとかの意味がわからずどきどきと緊張しているを見下ろして、実弥はふにゅっとの尻を揉んだ。
「ひゃッ……?」
「……テメェの師範、えげつねェこと言ってんぞ」
「え、げつな……?」
 まさか義勇がに負担のかかるようなことを提案してくるとは思っていなかった実弥は、半ば呆然としながらもそっと後ろの孔に指を這わせる。指先で固くすぼんだそこを広げて皺をなぞると、はぎょっとして「えうッ!?」と奇声を発した。
「あ、あの、そこ、そこは……!」
「テメェの『義勇サマ』は、俺にこっちを使えって言ってんぞォ」
「…………」
「え、あ……その……」
『挿れる』対象が、自分の尻の穴だと知ってが狼狽する。義勇を見上げて口をはくはくと開閉させるものの、混乱しすぎて言葉になっていなかった。「な、な、なにを、いれ、」と壊れた蓄音機のように途切れ途切れに問うの手を掴んで、「今更かよォ」と実弥は自身のそこにの手を導いた。
「テメェについてねェモンがあんだろ、男には」
「……は、はい……ッ!?」
「これを挿れンだよォ」
 が、服越しに握らされたそれにおそるおそる視線を落とす。形を確かめるようにさわさわと手が動いたのは、案外怖いもの知らずなのか単なる馬鹿なのか。後者だろうな、と実弥はがその太さと硬さに慄くのを黙って見守る。自分の腹に視線を落としたは、何を想像したのか青くなってパッと実弥のものから手を離した。
「は、はいらないと、お、おも、思う、のですが」
「……、心配は要らない。慣らせば入る」
「ぎ、義勇さま、でも、」
「……大丈夫だ」
「死ぬよりマシだろうが、根性見せろよォ」
「こ、根性で、何とかなりますか……?」
 庇うように尻を押さえて後ずさるを、義勇が肩を押さえて捕まえる。さっきまで陳腐な(あるいは重大な)争いをしていたとは思えない連携で、実弥はの腰を掴んでくるっと向きを変えさせた。義勇の胸に顔を埋める形になったを、義勇が柔らかく抱き締めて拘束する。割れ目に指を擦り付けて愛液を掬った実弥は、それを潤滑剤にしてつぷりと指の先をそこに押し込んだ。「きゃうッ!?」と仔犬のような声を上げたの頭にもう一方の手を回して、その口に指を突っ込む。小さな舌を指で挟んでぐちぐちと嬲り、口付けるように指を絡ませて。物欲しそうに愛液を滴らせる割れ目には、義勇の指が這わされた。陰核をくりくりと撫で回し、軽く引っ張ってみたり押し込んでみたりとまるで玩具のように弄ぶ。義勇が片手での腰をしっかりと抱え込んでいるから、尻の穴や陰核を弄り回されても腰を引かせて逃げることもできない。実弥に舌を嬲られて不明瞭な喘ぎを零しながら、はお腹の底がじんじんと疼くような感覚にどうにか耐えていた。つぽつぽと、実弥の指が固くすぼんだ入口をゆっくりとほぐして広げていく。指すらも入らないほどしっかりと閉じていたはずのそこが、段々と弛緩して拡がっていくのが怖くて。はしたなく愛液を滲ませ続ける割れ目が、そこに触れる義勇の指を汚してしまう。義勇も実弥も、などが汚していいひとではないのに。自分でも知らない場所を暴かれるのも怖かったけれど、二人を汚してしまうことはもっと怖かった。
「ぁ、……ふあ……」
 つぷん、とそれまで浅いところで抜き差しを繰り返していた実弥の指が奥まで滑り込んでいく。背筋がふわっと浮くような感覚に声を漏らすと、実弥がナカに入れた人差し指をくるくると動かしながら喉奥で笑った。
「おい、テメェのケツん中、俺の指に吸い付いてきてんぞ」
「ふ、んむ、」
「こいつに前弄られんの、そんなにイイのかァ?」
「んんッ」
 ムッツリ師弟、とまた揶揄されて、が実弥の指に歯を立てる。けれどほとんど力の入っていないその抗議はまるで甘噛みのようで、ちっとも痛くないどころが続きを強請られているようだった。宥めるように義勇がの腰を撫でると、またきゅうっと指が締め付けられる。わかりやすい女だと、実弥は息だけで笑った。入口で十分に慣らせば、二本目も容易に呑み込む。さすがにまだ尻の穴では快感を拾えていないようだが、義勇の指が動くたびに腸壁が震えている様子を見ると時間の問題だろう。入れた二本の指で後孔を拡げるように開くと、ひくひくと寂しそうに蠢いている。あらぬ場所を外気に晒される感覚が耐え難いのか、がぐりぐりと義勇の胸に頭を押し付けた。それを愛おしそうに見下ろして、義勇はの腰を抱き直す。
「……先に挿れるぞ」
 実弥に言ったのか、に言ったのか。視線の読めない義勇をじろりと睨んで、実弥は尻の穴から指を抜いた。手早く前を寛げた義勇が、抱き合うような体勢でに自らのものを呑み込ませていく。慣らされていたとはいえやはり初めてはつらいのか、の歯が躊躇いがちに実弥の指に食い込んだ。弱々しく、縋るように歯を押し当てていたが、ある一点で息を詰めて目を見開く。義勇も眉を顰めながらも、の腰を強く掴んでそのまま奥まで押し込んだ。ぶつりと、実弥の指の皮膚を犬歯が突き破ったのは、破瓜のそれと同時だったのか。実弥の指を噛むわけにはいかないというなけなしの配慮も、破瓜の痛みに吹き飛んでしまったのだろう。それでも実弥は、己の指についた噛み跡に嫌な気持ちはしなかった。ふーっ、ふーっ、と荒い呼吸を繰り返すが。たった今義勇と繋がったばかりなのに、指を噛んだことを気にして実弥をちらちらと見遣っているが。いじらしい生き物だと、そう思った。
 
200215
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