「…………」
 ぷくっと、頬を膨らませる。何か嫌なことをしてしまったかと焦り口付けを止めた義勇は、どうしたとに問うた。
「……私、義勇さまが初めてです、ぜんぶ」
 口付けるのも、それ以上のことも、全てが初めてだ。けれど。
「義勇さま、なんだかすごく……慣れてるような、」
「……俺もお前が初めてだが」
「……えっ」
「妬いたのか」
 むくれるに本当のことを言えば、凍り付いたように動きを止めて。膨れていた頬をつつけば、ぷしゅうと空気は抜けた。義勇の問いに、の頬は途端に真っ赤に染まる。
「も、申しわけありません……! 勝手にその、妬いたり、して、」
「いや、いい」
 可愛いやきもちだと、義勇は思う。恥じ入ったように土下座をするを抱き寄せて、顎を掴んで上げさせたその真っ赤な顔を見下ろした。
「お前が『俺が初めて』の意味をわかっているなら、それでいい」
 むしろそういう機微を理解できるようになったことに、安堵すら抱いている。最初で最後の人間でありたいと、その独占欲が共有できているのなら。
「お前も、『俺の初めて』であることを忘れるな」
「は、はい……」
 全部、義勇のものだ。それが自覚できているのなら、それ以上に望むことはない。いくら繋いでも飽き足らない所有印を重ねるように、首筋に吸い付いた。
 
190404
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