「いかんな、」
いつも通り義勇のお下がりの隊服を着た格好で出迎えたを見下ろして、杏寿郎は腕を組む。きょとんとするの腕を掴んで引き寄せて、杏寿郎は隊服を指した。
「それは駄目だ、。君と冨岡の性格も関係もわかっているつもりだが、それは許容できない。ましてや恋人を出迎えるときであれば、尚更だ」
「……っ、」
逆光で、杏寿郎の顔がよく見えない。腕を掴む杏寿郎の手は熱くて、はごくりと唾を飲む。謝りたいのに、謝らなければならないのに、うまく言葉が出てこない。きっと許してもらえない、だって杏寿郎に言われるまで、そんなことに考えが及びもしていなかったのだ。知らなかったではすまされない、許しを乞うしかない。はたして杏寿郎は、を許してくれるだろうか。
「……すまないが、今日は優しくしてやれそうにない」
覚悟をしてくれと、杏寿郎は言う。その口元は、確かに笑みの形を描いていた。
190404