やってしまった、とは嘆息する。縫製係に預けていた隊服だが、どうやら前田の手に渡ってしまったようだった。胸元が閉まらず開けっぴろげになってしまう寸法にされた隊服を抱えて、は他の縫製係に頼み直さなければと風呂敷に包み直した。
「どうした、着ないのか。残念だなあ」
「……ッ!?」
の肩越しに新しい隊服を見下ろす、鬼。反射的に刀を掴んで抜こうとするも、あっさりと叩き伏せられる。痛みに喘ぎながら振り向くと、そこにいたのはやはり何かとにちょっかいを出してくる鬼の童磨で。上弦の弐と刻まれた眼球が見えないわけではなかったが、しかしこの鬼はどうにもで遊んでいるらしい。毎回殺しにかかっていっても、児戯のようにいなされる。どっしりと背中の上に腰を下ろされて、呻き声を上げるから童磨は隊服を取り上げた。
「……ああ、なるほど。なかなか己の欲に忠実な縫製係がいるのか」
「か、かえしてください、」
「しかしちゃん。君の可哀想な乳房でこのような衣服を身に纏ったとて、破廉恥な情景にはなるまいよ」
引き起こしたの隊服の胸元を、びり、と破る童磨。うすっぺらな乳房を指して、童磨はにこやかに言った。
「~~~っ!!」
顔を真っ赤にしたが、拳を振り上げる。その手を掴んで唇を落とし、童磨はにっこりと笑って姿を消したのだった。
190405