「眠いか」
珍しく遠出をしたから、疲れているのかもしれない。キメツ町内会の子供会で、揃ってキャンプに行った帰りの電車。立ったままウトウトとしているに、吊り革に片手を預けた義勇は問うた。
「……ねむく、ないです」
「そうか」
そうかじゃねえよ甘えさせてやれよ、とそれを見ていた善逸は思うものの、はぷるぷると首を振ってしゃんと立とうとする。の身長では吊り革に掴まるのは難しいらしいが、生憎なことに手摺りも遠い。善逸を含め周りには席を譲ってあげられるような知り合いもおらず、善逸は大好きな先輩と大の苦手な教師を目の前に歯噛みしていた。
「……あと二駅だ。がんばれるか」
「はい、」
「えらいな」
の分も荷物を全て持った義勇の表情は、善逸からは見えない。けれどの表情から察するに、きっとが喜ぶような表情を浮かべたのだろう。掴まっていろ、と義勇に言われたが、おずおずと義勇の服の裾を掴む。
「羨ましい……」
厳しいとみせかけてなんだかんだでどこでもイチャつくふたりが羨ましいと思う程度には、善逸も疲れているのだった。
190407