「、米がついている」
もぐもぐと大盛りのご飯を食べていたの頬に、隣の義勇が手を伸ばす。頬についていた米粒をひょいと摘んで自分の口に運んだ義勇に、は照れ照れとしながらも礼を口にした。
「今日はよく食べるな」
「はい、蜜璃様も『いっぱい食べると強くなれる』と」
「そうか……もっと食べろ」
自分の小鉢をひとつ、に寄せる義勇。「義勇さまのご飯です」とおろおろするをよそに、義勇は品書きを引き寄せる。店員を呼び止めてあれこれと注文した義勇は、くるりとを振り向いて言った。
「これで問題ないだろう」
「は……はい……?」
そのやり取りを向かいで見ていた不死川は、イライラと貧乏ゆすりをするが。「行儀が悪いぞ!」と隣の煉獄に窘められる。「の教育に悪い」と義勇にまでジト目を向けられ、不死川は完全にむくれた。
「……水柱サマは継子に甘いことだなァ」
「よく食べよく育つのはいいことではないか、不死川!」
「まぁチャンはちんちくりんだからなァ」
「は、はい、大きくなりたいです」
ややあって、運ばれてきた大量の料理。ぱちりと目を瞬くを横目に、義勇はその皿をいくつもの方へと置いていく。さすがに食べきれないのではないかと慄くだったが、義勇の目に映るのはまごうことなき善意だ。
「……い、いただきます!」
「ああ」
「なァ、こいつら馬鹿だろ」
「む? よく食べることも修行のうちだ!」
もぐもぐと小動物のように咀嚼していくと、その隣でもりもりと平らげていく義勇。大食い対決でもしてんのかあの師弟は、と少し離れたところにいる宇髄は思ったのだとか。ちなみに宇髄の目の前では、蜜璃と伊黒(というよりほぼ蜜璃一人)が似たような光景を作り出している。隣の時透は、どうでも良さそうに茶の水面を見つめていた。
「義勇さま、」
「?」
ふと顔を上げたが、義勇を呼ぶ。咀嚼をしながらを見下ろした義勇に、は自らの頬をとんとんと指で叩いて「ごはん粒、ついてます」と示した。
「…………」
「あっ、もう少し右です」
「……?」
自らの指で頬を探る義勇だが、なかなか取れない。「失礼します」と手を伸ばしたが、照れながらも白い米粒を摘んだ。
「とれました、義勇さま」
「…………」
「? ひゃっ、」
米粒を摘んだまま照れ照れと笑うの手を掴み、義勇はぱくっとその指先を食む。ぷしゅうと赤くなったは、そのまま動かなくなってしまって。
「……こいつら馬鹿だろォ」
「仲睦まじいのは何よりだ!」
なんで天然三馬鹿と同じ卓なのかと、不死川は深いため息を吐いたのだった。
190407