「、朝だぞ……?」
朝起きると、はいつものように義勇の腕に頭を預けて眠っておらず。何故か布団の奥深くに潜り込んで丸くなっていた。布団の上からゆさゆさと揺すってみるものの、一向に反応がない。義勇より早く起きることがほとんどのがこうして布団に籠ること自体初めてで、もしや具合でも悪いのかと布団を剥ごうとする。けれど、確かにぐっと引っ張り返す力があって。明確な拒絶に、義勇は眉を寄せた。
「どうした、」
「…………」
「黙っていてはわからない、具合が悪いのなら言え」
ぴく、と布団が震えたがやはり返答はない。のことだから修行が嫌だとかではなく何か理由があるのだろうが、黙られてしまっては何もわからない。暫しの沈黙の後、義勇は無理やり布団を剥がした。
「あっ……!」
「……!?」
やっと現れたの姿に、義勇は目を丸くする。一糸纏わぬの肌には、夥しいほどの鬱血痕が散らばっていた。
「……? ……!?」
「ぎ、ぎゆうさま、」
あわあわと布団を取り返そうとするは、涙目で必死に自分の肌を隠そうとしていて。寝間着はどこにやったのかと思うが、義勇も見下ろせば裸で。部屋の隅に、ぐしゃりと投げ出された自分の隊服があった。普段のであれば「皺になる」とすぐに片付けているだろうし、義勇もそもそもあんな風に隊服を扱ったりはしない。昨夜のことを思い出そうとすると、ずきりと頭が痛んだ。
「……」
「は、はい……」
「昨日俺は、何をした」
ひとまずに、義勇の隊服を羽織らせる。赤の散った白い肌に黒の隊服は、いやに扇情的に映えたが。ひとまず自分も下を履きながら、泣きそうなに問うた。
「……その、義勇さま、柱合会議のあと……すごく、お酒を呑まされたみたいで……」
「…………」
「酔った状態でお帰りになられて……その……玄関で……」
なんだかすごく、嫌な予感がする。真っ赤になってその先を言えなくなってしまったの目から、ぽろりと羞恥の涙がこぼれ落ちた。
「……それ以上はいい。だいたい予想はついた」
「申し訳ありません……」
「謝る必要がどこにある」
ぼんやりとだが、記憶も蘇ってくる。何とか歩いて帰ってきたものの、の顔を見て安心した途端に抱き着いてしまって。そればかりか、玄関で口付けて、事に及んで。きっとの寝間着は、玄関に投げ捨てられているのだろう。その後は「もう休んでください」と懇願するを抱えて部屋に戻って、際限なくを抱いたような気がする。義勇の体力に限界まで付き合わされるなど、足腰が立たなくなっているはずだ。自分の部屋にある替えの服も、玄関に転がっている寝間着も取りに行くことができず、ああして丸くなるよりほかになかったのだろう。
「悪かった……」
「っ、そんな、」
いくらなんでもやっていいことと悪いことがあるだろう。土下座する義勇に、が慌てて頭を上げさせようと動くけれど。
「いっ、痛っ……!」
腰を押さえて、蹲る。狼狽えた義勇は、布団にを横たわらせる。けれどむわっと匂った情事独特の匂いに、この部屋では駄目だとできるだけ優しくを抱えた。
「も、申し訳ありません、義勇さま」
「……今日は休め。本当にすまなかった」
義勇の隊服に包まって両手で顔を覆うを、の部屋へと運んでいく。もうしばらく酒は飲むまいと、心から誓ったのだった。
190409