「戦いのときです」
「戦いなのか」
「昨日から戦いに備えて絶食しました」
「……きちんと食べろ」
「今から食べます」
「チョコだろう……?」
「チョコです。義勇さんのチョコですが、私が食べます」
「嫉妬してくれているのか」
「嫉妬です。チョコが溶けるほど妬いています」
「……今更だが、貰わない方がいいのか?」
「そこは私も複雑なところです」
「複雑なのか」
「……義勇さんが、いろんな人に慕われるのは嬉しいです。嬉しいですが、恋情を示唆する贈り物を渡されるのはとてつもなく複雑です。かといって、贈り物を無碍にするのも食べ物を粗末にするのも抵抗があります。なので食べます」
「食べるのか」
「食べます」
(今日はずいぶんの口数が多いな……)
「今年は私もチョコを用意しました、が、」
「?」
「他の人からのチョコを全て奪っておいて、私のチョコだけを食べてもらうというのも、我儘なような……」
「そこは我儘になってくれ」
「は、はい」
の心がもらえるのなら、それだけで俺はいい」
「ぎ、義勇さん……」
が作ってくれたのはこれか」
「はい、その……カナヲちゃんたちと一緒に作ったので、人の食べれる物ではあると思いますが……」
「うまい」
「えあっ!? ど、毒味とかしなくて大丈夫ですか……!?」
「必要ない。 ……俺のために不得手な菓子作りをしてくれて、ありがとう」
「……っ、」
 感極まって泣いた。
 
200214
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