「……ん、」
うっすらと意識の浮上したは、もぞもぞと手探りで義勇の存在を探す。昨日、というよりも今日はずいぶんと遅くまでしていたから、まだ眠くて。素肌に感じる布団の感触が心地よくて、もぞりと寝返りを打った。
「……?」
布団の中に、義勇の体温が見つからなくては眉を寄せる。でもまだ瞼は重たくて、思考も回っていなくて。指の先に、引っかかる布地。それを引き寄せて、顔を埋めて。安心の匂いに、ふっと表情を緩めた。のそのそと、頭が回らないままその布地で自分の身を包む。全身に感じる安心に、ふにゃふにゃと頬を緩めて。すう、とそのまま二度目の眠りについたのだった。
「…………」
水を飲みに行っていた義勇は、の眠る布団に戻ってきて目を瞬く。掛け布団を捲って、思わぬ光景を目にしたからだ。
(わかっていてやっているのか……?)
そうではないのだろうな、と思いながら義勇はを起こさないように布団に入る。じっとの姿を見つめて、その穏やかな寝顔を眺める。今のの姿は、俗に言う「彼シャツ」なるものだ。義勇のシャツを羽織って、それはもう安心しきったような顔で寝息を立てている。普段から義勇のお下がりを着ていることもあって体格に合わない服を着ているのは見慣れているが、それでも今のの姿にはどきりとさせられるものがある。白く柔らかい肌が、大きいシャツの影にちらりと垣間見えて。頼りない体を、義勇のシャツに預けて眠っている。手も足も小さいとは思っていたが、こうしてまじまじとシャツの大きさと比べると本当に小さいのだなと改めて実感させられた。僅かに身じろいだが、すり、と襟の辺りに顔を埋めて頬擦りする。それを見た義勇は、むっと顔を顰めて。
「…………」
「……?」
ぎゅ、とを抱き寄せて腕の中に抱え込む。ぱさりと落ちたシャツは、布団から追い出した。すべすべとした背中を撫でて腕を回すと、ふにゃりと表情を緩めたが義勇の胸に頬を擦り寄せた。すりすりと、柔らかい頬とさらりとした髪が義勇の肌を撫でる。正直なところ、わりと理性が危ういのだが。こんなにも無意識で義勇を求める姿に、感じるものが無いなど到底言えない。ぴたりと触れ合う肌から、伝わる温もりさえ愛おしくて。脚を絡めて、ぎりぎりのところで理性を保つ。の安息を、自分の欲で邪魔はしたくなかった。すやすやと眠る可愛らしい寝顔を眺め、ふっと息を吐く。何にも代え難い、安寧だった。
200222
ひいらぎさんからいただいた彼シャツのイラストにありったけの感謝を込めて。