「…………」
黎明の薄明かりの中で、はじっと義勇の寝顔を見つめる。もしかしたら、視線に気付いて起きているかもしれないけれど。それでも目をつぶっているのだから、寝ているということにしておく。触ったら本当に起きてしまうだろうから、ただじっと眺めて。少しだけ、ほんの少しだけ。朝の支度を始める前の、ささやかだけれど確かな幸福。髪を解いている義勇の穏やかな寝顔が見られるのは、このわずかな時間だけなのだ。
(……あんしん)
義勇の腕の中で、義勇の寝顔を見つめて。優しい安息に満たされて、自然と表情が緩む。義勇のことが好きだと、大好きだと、改めて自覚した。深く息を吸ったは、一度だけ目を閉じてぬくもりを確かめる。今日もがんばろうと、ぎゅっと拳を握り締めた。
190412