それはもう幸せそうに頬を緩めて、は眠っていた。むにゃむにゃと何事か不明瞭に呟きながら、頭を預けている義勇の膝に擦り寄る。その寝顔は珍しいほどに上機嫌で、義勇はすりすりとの頬を指の腹で撫でてやった。どんな夢を見ているのやら、本当に可愛らしい顔をして眠っている。
「んぅ……おはぎ、いっぱい……」
「……おはぎがいっぱいなのか」
なるほどそれは上機嫌にもなるだろう。きっと今頃夢の中で、はたくさんのおはぎに囲まれているに違いない。にとってはまさしく極楽浄土だろう。
「ぎゆうさまも……いっぱい……」
「俺もか……?」
自分がたくさんとは、どういう絵面なのだろう。義勇にとってそれは、どちらかというと悪夢と言うべきか、少なくとも心安らぐものではないように思えるのだが。まったくもってどうにも、の幸福の基準はよくわからない。自分などがいればそれだけで幸せだというのだから、変わり者に違いなかった。
「……ふふ」
だが、がこんな風に幸せに満ちた笑みを浮かべてくれるのなら。過去に追いかけられる悪夢に苛まれないのなら。その理由が理解し難くとも、何だっていいのではないか。夢の中で両手を挙げてはしゃぎ回るほどに、が義勇を愛してくれているというのならそれは。きっと、悪いことではない。
「義勇さま……かわいいです……」
「……お前の方が可愛い」
寝言に返事をするのは良くないとは言うが、つい返事をしてしまう。こんなに可愛らしくて不思議な生き物から、どうして目を離せようか。ぎゅっと義勇の太腿に抱き着いたが、その頬を押し付けてくふくふと笑う。起きたらどんな夢を見ていたのか聞いてみようと、の髪を撫でながら義勇もまた上機嫌に目を細めたのだった。
200502
雪冠さんに依頼してワンダーオブワンダーアートのあれ描いていただいたんですがあまりにも幸福すぎた。