「おい」
「ひっ」
「……お前、強い男は好きかよォ」
「は、はい……? 好き、というか、安心します……」
「ンじゃあ、背は」
「えっ……?」
「背は高ェ方が好みか」
「えっ、えっと……」
「低いよかァいいだろ」
「そ、そうですね……?」
「傷は」
「き、傷ですか」
「傷だらけの男は嫌いかよォ?」
「い、いえ……格好いいと、お、思います」
「よし」
「……?」
怯えるに質問をぶつけるだけぶつけて背を向けた実弥と、頭の上に大量の疑問符を浮かべている。その様子を見ていた音柱は、器用にも声を出さずに大爆笑していたらしい。「そりゃないぜ兄貴……」と呟いた弟の姿も目撃されたのだとか。実弥の春は、まだまだ遠かった。
190422