チャンよお」
「ひえっ……」
 好きな女子に話しかけるたびに怯えられている実弥本人ばかりが、その反応に頓着していない。「ああいうのはちゃんと『キュンとする殿方』って訊かないとダメだと思うの」と蜜璃にダメ出しされた実弥は、何人もの出歯亀に張り付かれながら今日も健気にに話しかけていた。
「お前、理想の野郎はどんなだ」
「えっ……? り、理想の殿方ですか……?」
「何かあるだろ、強ぇとか、鬼を殲滅できるくれぇ強ぇとか、一瞬で鬼をぶった切れるくれぇ強ぇとか」
「さ、実弥様、私のことをなんだとお思いですか……?」
「あァ? 鬼を殺すと喜ぶ女」
「い、異議あります……」
「違わねェだろ」
「うぅ、」
「んで、理想の野郎は」
「お、思いつかな……」
「捻り出せェ」
「……ぎ、義勇さまみたいな……」
「あ゛あ゛!?」
「ヒッ」
「悪趣味にも程があるだろうがよォ」
 まあ当然の結果ですよね、としのぶは生温かい視線を向けた。好ましい異性の話をした時点で必然の結果だったと、宇髄も頷く。当の義勇本人といえば何故か妙に勝ち誇った顔をしているので、これを実弥に会わせてはなるまいと柱二人は決意した。蜜璃はどこか残念そうにしているし、伊黒は蜜璃以外どうでも良さそうである。柱って案外暇なのかな、と思わず玄弥は心の中で呟いたのだった。
 
190422
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