「そういえばさんの階級って……?」
 蝶屋敷で継子やら何やらの話をしていたときに、ふと気になったらしく炭治郎が首を傾げる。けれど問われたは、ぽけっと口を開いた。
「かいきゅう、」
「…………」
「階級……?」
 ああこれは自分の階級を把握していないのだろうな、と炭治郎は生温い笑みを浮かべる。は時折、妙なところでものを知らない。義勇の案外雑な教育がうかがえたと言うべきか、なんというか。義勇にとってもにとっても、大事なのはが義勇の継子であるということだけだったのだろう。姉弟子として基本的には炭治郎の世話を焼いてくれようとするだが、こういうところを見ると何故かとても可愛らしく思えてしまう。
「手の甲に階級が出るんですよ、こう、階級を示せって言うと」
「あ、ありがとう、炭治郎さん……」
「…………」
 赤面して炭治郎と一緒に階級を見るを、何とも言えない表情で義勇が見ていて。
「あ、義勇さま」
「……階級を見ていたのか」
「はい、炭治郎さんが教えてくれました」
「……?」
 なぜが炭治郎に教わっているのだろう、という疑問は炭治郎でも義勇の表情から読み取れた。さっきの表情は何なのだろう、と思うものの義勇の表情は心情と一致しないことも多い。ならわかるのかもしれないが、と深く考えないことにした。
「お前の階級は何だったか」
「ぎ、義勇さんまで知らないんですか」
 の手を掴んで見分する義勇に、炭治郎が意外そうに口を開く。頷いてそれに肯定を返した義勇は、大事なものを撫でるようにの手の甲に浮かんだ文字をなぞっていた。その手付きは何だか、例えば炭治郎が禰豆子に触れるそれとは違っていて、どうしてか見てはいけないものを見ているような気分になってしまう。顔を赤くして目を逸らした炭治郎に、義勇ももきょとんと首を傾げたのだった。
 
190505
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