コーヒーを飲んで眠れなくなるなど本当にあるのだな、と義勇は感心にも似た感情を抱く。義勇がコーヒーを淹れるのをじっと見ていたに、気になるのなら飲めばいいとマグカップを渡したのだが。いつもはこの時間になるとふにゃふにゃと眠そうな顔で義勇に就寝の挨拶をするが、今日は義勇の横にぴたりとくっついて義勇の手が本のページを捲るのを眺めていた。子どもにしてはやや低い体温だが、義勇にしてみれば十分にぬくい。
「寝ないのか」
「眠くないんです……」
「そうか」
 どのみち明日は休日だから、こうしていても一向に構いはしないのだけれど。それにしてもがこうして自分から甘えるように全身を預けてくるのは珍しいと思いながら、義勇は本を閉じた。
「眠れないのなら、ホットミルクでも作るか」
「…………」
?」
 返事の代わりに義勇の袖をきゅっと握ったを見下ろして、首を傾げる。視線を泳がせたは、気恥ずかしそうに頬を赤らめて口を開いた。
「その、義勇さんと……こうしていたい、言いわけなんです」
 眠れないのも、本当のことではあるけれど。それでもいつものなら、眠れなくとも布団に潜って羊の数を数えていだろう。
「義勇さんと、くっついていたくて」
 いじらしい言い訳に義勇はじっとを見下ろして、おもむろに掠めるように唇を重ねる。真っ赤になって固まったの頭をぽんぽんと撫でて、義勇はを抱き上げた。
「一緒に寝ればいい」
「へあっ、」
 奇妙な声を上げたを抱いて、自室へとすたすた足を進める。腕の中にあるぬくもりと心音は心地よくて、確かにこれは離れ難いと義勇はを見下ろして思ったのだった。
 
190528
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