「可愛いよなァ、は」
「……えっ」
「ンだよ」
顎を掴んでぐいっと顔の向きを変えさせて、まじまじとを見下ろしていた実弥はおもむろにそう言った。今しがた聞いた言葉が信じ難く疑問符が口を突いてしまったに、実弥は苛立たしげに舌打ちをする。けれどいつものように噛んだり頬を抓ったりすることはなく、実弥はの喉を擽るように指の背で撫でる。気持ち良さそうに目を細めたに、「単純だよなァ」と実弥は口の端を吊り上げた。
「犬かと思ったら猫かよォ」
「?」
実弥の膝の上に抱えられて、喉を撫でられて心地良さそうに笑う。すりすりと実弥の胸に頬を擦り寄せて、実弥の体温を確かめる。以前の怯えようが嘘のように懐かれて、悪い気などするはずもなく。は言葉数は多くないが、その分行動で好意を示す。愛らしくいじらしいその姿に、実弥は頬を緩めて柔らかい髪を撫でたのだった。
190601