だって、ならわかると思っていたのだ。きっと鬼殺隊の誰もが、そう思っていたに違いない。
「えっ、義勇さまが今何を考えているか、ですか……? ちょっと、訊いてきますね……?」
「え、いやごめん、いいよ訊いてこなくて!」
「?」
「ごめん……ごめんねちゃん……」
「すみませんでした……」
 綺麗な湖面のような瞳に、思わず善逸も炭治郎も即座に頭を下げた。どうしてか、二人とも勝手にが義勇の表情から感情を読み取れると思い込んでいたのだ。今日も今日とてよくわからない表情を浮かべる義勇を指して、あれは何を考えているところなのかと当然のようにに尋ねて。申し訳なさそうに困惑するは義勇に直接それを尋ねにいこうとして、それを引き留めてふたりはに包み隠さず経緯を打ち明けたのだった。
「ごめんねちゃん、なぜかちゃんがあの人と以心伝心なんだとばかり思ってた……」
「えっと……私も義勇さまの表情はわからないんです、ごめんなさい……」
さんが謝ることじゃ……」
、」
「ウワッ」
 わちゃわちゃと会話を交わす少年少女を訝しく思ったのか、それとも単にに用があったのか。近付いてきての羽織をちょんちょんと引いた義勇に、がぱあっと表情を明るくして顔を上げる。
「義勇さま」
「俺は今、お前が炭治郎たちよりも背が低いんだなと考えていた」
「えっ」
「そう思ったら、急に動悸がした」
「へあっ」
「だから動悸の原因を考えていた」
「う、ぁ、」
、お前は」
 ぱしんっと、が両手で義勇の口を塞いだ。真っ赤になったを見下ろして首を傾げる義勇は可愛らしくも見えるが、普段あれだけ無口でいながら突然躊躇なく心情を語り始めた義勇に炭治郎も善逸もただただ唖然としていて。そして、義勇が言いかけた言葉の先を理解してふたりも同様真っ赤になる。大方可愛いだとか愛らしいだとか、そういうことを他の人間の前で臆面もなく言い放とうとしたのだろう。それを察したの目は、羞恥と混乱にぐるぐると渦巻いていて。
「お邪魔しました!」
「失礼します!」
 はやくが手を退けて義勇がその言葉を告げれるように、お邪魔虫は退散しよう。目と目で通じ合った炭治郎と善逸は、全速力でその場を去ったのだった。
 
190609
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