「今日、可愛い下着なんです」
そう口にしたは、間髪入れずに実弥に頭をはたかれた。スパァンと、小気味良い音が響く。
「おまッ……テメェ……」
馬鹿野郎だの阿呆だの、ぶつぶつと罵倒の言葉が実弥の口から漏れている。ギリギリと、歯を食いしばる音もした。ドキドキさせてみたいと思って口にしただったが、どうやらダメな言葉だったらしい。しゅんと肩を落としたは実弥の膝の上から下りようとしたが、がしっと腰を掴まれて阻まれた。
「どこに逃げるつもりだァ?」
てめぇが誘ったんだろうが、と実弥が低く唸る。逃げるつもりではなかったが、驚いたはふるふると首を横に振る。どこでそんな言葉を覚えてきたと問いかけられて、確か善逸の持っていた雑誌だったとは素直に答えた。
「そうかァ……冨岡死ね」
「!?」
まったく関係の無い義勇への突然の罵倒に、はわたわたと手をばたつかせて抗議しようとする。しかし実弥の伸ばした手に鼻をつままれ、「むっ」と間抜けな声を漏らした。今にも人を殺しそうな笑顔を浮かべて、地を這うような声で実弥は言う。
「風紀委員の不始末は、顧問の責任だろうがよォ」
断じて違う気がする。けれどそれを言う前に、実弥はのブラウスに手をかけ乱雑に脱がせてしまう。露になった下着を見て、「悪かねェが」と実弥はの顔を覗き込んだ。
「これも雑誌を見て選んだのかよォ?」
「い、いえ……実弥さん、みたいな色がいいなぁ、って……自分で選んで……」
もじもじと指を組むの言葉に、実弥はぴしりと凍り付いたように動きを止める。またダメなことを言ってしまっただろうかとおろおろするの前で、実弥は突然自分の頭をスパァンと叩いた。
「さ、実弥さん……!?」
「本当にてめぇはよォ……」
はァ、とため息を吐いた実弥はを抱え直し、まじまじと新しい下着を見つめては指先でなぞったりする。言葉とは裏腹に、実弥はどこか上機嫌にさえ思える。首を傾げただったが、実弥が喜んでくれたのならそれでいいとふにゃふにゃした笑顔を浮かべたのだった。
190828