「あやつらとの関係性?」
「一言では言えんが、そうじゃのう……」
ファウストにもらった宿題を解いていたから、宿題の紙を取り上げひらひらと掲げて楽しそうなオーエン。ぴょんぴょんと跳ねて取り返そうとする。面倒くさそうな顔をしながらも、オーエンの後ろからプリントを奪ってに返してやるブラッドリー。それに口も手も出さず、ぼーっと眺めていたミスラ。彼らの関係性は双子から見てどのようなものかと尋ねると、双子は揃って顎に指を当てた。
「ここに『雪見ダイフク』があるとするじゃろ?」
「それを我らがにあげるとする」
(また揉めそうな例えをよく知ってるな……)
「すると、はミスラに雪見ダイフクをそっくり渡してしまうのじゃ」
「ミスラはあれで一応、にひとつは分けるのじゃよ」
「元はの物なのじゃがな、当然のように我が物顔じゃ」
「想像がつきます」
「じゃろう? そこにオーエンが来ると、ひとつしかない雪見ダイフクをから取り上げてしまうのじゃ」
「餓死するような事態でなければ、ミスラは庇ってやらんからのう」
「ダメな大人の揃い踏みじゃないですか……」
今度はプリントを解く手元を覗き込みながら、あれこれ適当なことを吹き込んでを混乱させるオーエン。「ガキ相手にガキみてえなことすんなよ」と呆れるブラッドリーは、唯一にまともに味方をする大人だ。
「うむ、ブラッドリーは比較的まともじゃのう。先程の例えを続けると、ブラッドリーはからは奪わん。はまだ幼く弱いからの」
「じゃが、役に立つかと言うと時と場合によるのう。大抵、ミスラの方から雪見ダイフクを奪おうとして殺し合いになるからの」
「ダメな大人じゃないですか」
オーエンに困らされたが、実際のところ何が正しいのか訊こうとミスラとブラッドリーにプリントを持って駆け寄っていく。二人の間で意見が食い違ったらしく、「は?」「違ぇだろ」と不穏な雰囲気の声が聞こえてきて。嫌な予感を覚える暇もなく、魔力の燐光を纏わせた二人は魔法具を出現させた。喧嘩を始めた二人に放ったらかしにされたはといえば、オーエンにちょっかいをかけられながら必死にプリントを解こうとしている。
「そういうわけで、大抵『もうひとつ雪見ダイフクを我らがあげることで解決する』んじゃよ」
「、我らがお勉強を見てやろうの」
双子に助け舟を出され、がぱっと顔を上げて安堵の表情を見せる。なるほど北の彼らの関係性はよくわかったと、さり気なく仲裁を放棄した双子の代わりに賢者はミスラとブラッドリーを止めに入るのだった。
200626