「あのちっこいの、ミスラの荷物持ちかと思ってたんだけどよ」
「財布とスマホ以外はに持たせてるし、荷物持ちなんじゃないの?」
「いや、あいつそのものがミスラの荷物だった」
 ブラッドリーが言うには、確かにの鞄の中にはミスラのための荷物も入っているのだが。梅雨も明けきらない昨日、突然降り出した雨には鞄から大きな黒い折り畳み傘を取り出して。傘を広げたをひょいっと片腕で抱き上げて、ミスラはそのまま帰途についたらしい。あれを相合傘などと呼ぶ者はいないと思われるほど、甘酸っぱさは欠片もない雑な姿だった。
「……すごく馬鹿みたい。写真に撮りたかった」
「片手が塞がってるから勝てると思った馬鹿共が殴りかかって、傘でぶん殴られてたぜ」
「確かあの傘ってヒースクリフが改造してたやつでしょ」
 窓の外をふと見れば、とミスラがベンチにいて。が飲んでいたペットボトルの飲み物を、ミスラが横から手首を掴んで飲むところだった。
「あいつら、馬鹿だよな」
「今更じゃない」
 本当に、今更ではあるのだが。あの二人の関係性など一生理解できないししたくもないと、呆れた表情を浮かべるのだった。
 
200702
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