「エンカク……ねえ、それ、やだ……」
かじ、と尾を掴んで食まれる。ちゅ、ちゅぷ、と淫猥な水音を立てて吸いつかれて、口に含まれて。尻尾にも神経が通っていることなど、同族の弟は知っているはずなのに。他種族の子どもたちにオモチャのようにイタズラで掴まれるのとは、わけが違うのだ。の尾はエンカクのそれと同じで硬質な方だが、それでも繰り返し甘噛みされたり吸いつかれたりされればぞわぞわと変な気分になってしまう。れろ、と根元から舐め上げられて、裏返った声を上げては尾をばたつかせた。
「やっ、ほんとに、やだ……!」
「……黙って泣いていろ」
「ひゃうッ……!?」
ぐりぐりと、尾の付け根を親指の腹で擦られる。どこでこんな愛撫を覚えてきたのか、腰骨に直接響くような刺激にはびくっと跳ね上がった。猫のように腰をくねらせて快感から逃れようとするを器用に押さえつけ、エンカクは姉の尾を口で愛撫し続ける。ひんひんと泣き喘ぐは、しばらくは絶対に弟の前で尾は見せまいと固く誓うのだった。
「ん……むぅ、」
「……お前は好き放題齧っているくせにな」
エンカクの膝の上で弟の尾を我が物顔で食んでいる姉に、呆れ半分愉快さ半分で笑う。妙な気分にならないわけではないが、仕返しは起きているときにする主義だった。意識は夢の中に沈んだまま、あむあむと柔い唇で尾を食んだりちゅうっと吸い付いたり。それはもう好き勝手に、弟の尾で口寂しさを紛らわせている。もっとも、指摘すれば姉は意地でもやめようと努力するだろうからこの無意識の癖を教えてやる気はさらさら無いが。どうにも姉は、意識のない時ばかり妙に可愛らしいことをする。寂しがりで甘えたのくせに、羞恥心や自制心が強く消極的な態度の反動なのだろうか。外見ばかりはただ美しいこの姉が幼子めいた仕草をすると、どこか危うい劣情を抱かせられる。そんな姿を見せるのは自分の前だけだとわかっているから、愉しんでいられるが。
「……この貸しは高くつくぞ」
弟の尾にうっすらと噛み跡が残っていることに、姉はいつか気付くのだろうか。今日もひとつ増えた「貸し」を眺めて、エンカクは姉の耳元に囁きかけた。
210110