「っ、」
 くちゅ、と聞こえた水音に、真っ赤になって眉を顰める。不本意だとでも言いたげなは、実際儘ならない身体に不満を抱いているのだろう。初めてなどとうにエンカクに奪われているというのに、まるで少女のような潔癖さだ。華奢な体を押さえつけられて、指で無遠慮に奥を暴かれて、それでも秘所は蕩けそうなほど潤っている。その事実が、弟を拒絶する姉にはどうにも耐え難いらしかった。
「お前も楽しめばいいだろう」
 気休めの言葉をかけてやっても、はぶんぶんと首を横に振る。こうも拒絶されては、余計に虐めたくもなるものだ。ゆっくりと花芯に指を這わせると、大袈裟なほどぶるりと細い体が震えた。その反応の大半は、今の刺激に対するものよりも本人も自覚していない期待が占めている。ここに触れられればどうなるのか、体の方はすっかり覚えたようだ。くに、と軽く押し潰すだけでビクビクと震えるのだから、愉快でたまらない。壊れやすい玩具を弄ぶように、指先で揉み潰したりゆっくりと撫でたりを繰り返す。組み敷いたしなやかな体が悶えるように跳ねるのも、必死に抑えているらしい嬌声が漏れ聞こえるのも気分がいい。この女はどうにも、嗜虐心を煽るのが無自覚にも上手かった。もっと虐めてやりたい、泣かせてやりたいという欲求に駆られるが、その根底にあるのは愛とやらだ。が快楽に泣いて、エンカクの手で感じているのを見るのが面白い。姉の反応をひとつも見逃すまいと片時も目を離さなかったのだから、どう触れれば良い反応を示すのかなど本人よりも深く知っている。自身はただ、いやいやと子どものようにかぶりを振って拒絶するばかりなのだから。もっと泣かせてやりたい、もっとこの綺麗な顔が快楽に蕩けてぼうっとするのが見たい。白い肌に血が巡って、桜のように色付く様が美しいのだ。炎の色をした瞳が潤んで見上げてくるのも、その細い喉からあえかな声が漏れ出るのも気分がいい。エンカクの指先が、唇が、この女の反応全てを引き出しているのだと思えば愉快で仕方なかった。
「っ、や、」
「どうした」
「……、エンカク……」
 縋るように、迷子の子どものように姉がシーツをくしゃりと握る。エンカクの名を呼びながらも腰は引けていて、それを強引に引き戻してまた指先で弄んでやる。少し抑えただけで逃げられなくなる脆弱な四肢が、触れるたびに面白いほど跳ね上がる。ほんの少しも傷付けないように、痛みではなく快楽で泣くように。エンカクが行為において姉に痛みを与えるのは、意図してそうする場合のみだ。下手な童貞でもないのだから、独り善がりに動いて痛がらせるなどという間抜けなことはしない。そんなふうにしては、意味が無いのだ。姉が泣いて善がらなければ、この行為には何の意味もない。ふわふわと溶けそうなほど理性の揺らいでいるの喉からは、甘えるようにさえ聞こえる嬌声が漏れ出ていた。毎回飽きもせずに嫌がる素振りを見せるというのに、可愛らしいことだ。きっと自分が今、誰の腕に縋っているのかもわからないほど思考がぐずぐずに溶けてしまっているのだろう。それはとても、気分のいいことだった。その肢体を自身の体躯で閉じ込めるように肌を重ね、唇を合わせる。熱い吐息がその小さな唇から漏れ出てくることに、少なからず満足を覚えた。腰を擦り付けて、ぐちゅりと熱を沈めていく。ずぷずぷと、狭いソコは貪欲に弟のモノを呑み込んでいくというのに、清純ぶった女はいやいやとかぶりを振って涙を零す。けれど好きな場所をぐりぐりと擦ってやれば、甘ったるい声を上げて内壁が絡みついてくる。口で言うことより、よほど体の方が素直でわかりやすいことだ。グチュグチュと掻き回すように腰を動かしていれば、ゆるしてだの嫌だのとふやけた声で泣きながらもとろとろと柔らかい膣内が絡みついてきた。本当に、素直で面白い。姉も決して快楽に弱いわけではなく、自身の手でこうも乱れていると知っているから尚のこと愉快で仕方なかった。
「……ぁ、う、」
 もうまともに言葉も紡げないのか、単語にならない声を漏らして未だに腰を引かせようとするのを捕まえる。襞の締めつけをゆっくりと愉しむようにぐちゅりとモノを前後させると、熱い息を漏らしては達した。姉はどうにも、膣内をゆっくりとした大きな動きで擦られるのに弱いらしい。背筋をぞくぞくと震わせ、深く感じて中を締め付けてくれる。イった直後だというのにシーツに必死に手をついて逃げようとするのが愚かしくて愛おしく、追いかけるようにぱんっと音を立てて根元まで挿入し直してやる。びくんと震えて脱力した体を軽く押さえつけ、頬に手を添えて指先で輪郭をなぞった。とろんと潤んだ炎色の瞳が、ぼんやりとエンカクの姿を映している。ここまで理性が溶け落ちているなら、素直に快楽を受け入れればいいものを。それでもまだ口は「嫌」の形に動くのだから、まったく強情なことだった。
「仕方ないな」
 ねえさん。息を吹き込むように囁いて、啄むようにキスをして、促すように口を開けさせて。逃げ惑う舌は、まるで男を誘っているかのようだ。それに釣られてやって、舌を絡め取る。あやすように息を分けて、宥めるように頬を撫でて。エンカクは姉のことを、それは丁寧に犯す。ちぐはぐで歪で、拗れきった交わり。実を結ばない花を、愛でるためだけに愛でている。たったひとつしかない花なのだから、大事にして然るべきだろう。脆く愛おしい姉の体を抱き締めれば、それはいっそ恐ろしいまでにぐにゃりと柔らかくて温かかった。
 
211123
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