※「愛だの恋だの」夢主
「……何だ、此処ァ」
「わ、わかりません……」
「ハナからテメェに期待なんざしちゃいねェよ」
「申し訳ありません……」
言葉を選ぶということにかけて、実のところ実弥も義勇とどっこいどっこいである。ただでさえ小さい体を更に縮こまらせて申し訳なさそうにするを見て、実弥はグッと言葉を詰まらせた。決して萎縮させたかったわけではなく、ただ気にするなと伝えたかっただけなのだが。任務帰りに偶然会って言葉を交わしていたら、突然この箱のようなものに閉じ込められて。狭く閉ざされた空間にわけもわからず閉じ込められたとなれば、疑うのは鬼の血鬼術ではあるが。しかしどうにも、鬼の気配を感じない。柱としての感覚は危険を訴えておらず、むしろ男としての危機を感じていた。なんというか、近いのである。色々と。
「実弥さま……?」
そんな不安そうな声で呼ぶな馬鹿野郎、と言いたいのをやはり堪える。そんなことを言われたところでは戸惑うだけだろうし、そもそもは悪くないのである。いや、少し悪いかもしれない。もう少し自身が「女」であることを自覚してほしいと、普段散々ガキ呼ばわりしておいて思うのだ。その体は確かに全体的に発育途上で色々と未発達だが、こうして否応なく密着しているとその肌の白さだとか、鍛えているくせに柔らかい体だとか、唇の赤さだとか、瞳のつややかさだとかが感じられて。こんな状況で盛るような馬鹿ではないが、ただただジリジリと理性を焦がされるような心地だ。これが拷問ならば、ある意味効果覿面だろう。ありったけの苛立ちを込めてドスッと箱らしきものの側面を殴るも、腹立たしいまでにビクともしない。
「覚えとけよ冨岡ァ……」
「義勇さま、わるくないですよ……!?」
八つ当たりに対し条件反射で義勇を庇うに募った苛立ちを拳に込めて、実弥は再び壁を殴ったのだった。
210201
「川浪さんの書く実弥が大好きです!
n番煎じとなってしまいますが箱に閉じ込められる話などが見たいです」
ありがとうございました!