ちゃんはほんま夢見る乙女やなあ」
 相変わらず少女趣味に彩られた部屋の内装を見て、ベルギーは呆れ半分にため息を吐く。それにぷうっと頬を膨らませて、は反論のために口を開いた。
「夢見てるのは私じゃなくてスペインです。いつまでも私のことを小さい子供にしたがるんですから」
「あー……」
 ふわふわした栗色の髪は、高い位置で結われたツインテール。明るいパステルカラーのスカートは、スペインが見ている夢そのものだ。親分子分時代からずっとそうやってスペインの理想の少女を演じ続ける親友が、ベルギーにとってはひどく哀れなものに思えた。
「なあちゃん、そろそろその夢、壊してあげてもええんとちゃう?」
「……そうしたいけれど、どうしたらいいか、わからないんです。スペインの言う通りに何でもしてきたから、どうやって悪い子になればいいのかわからなくて」
「そんなん簡単や。ちゃん、」
 するりとの頭を撫ぜて、ベルギーはの髪を結っているリボンを解く。はらりと落ちた髪の影で憂いに彩られたの表情は、確かに大人の女性のものだった。
「ウチと、いけないことしよ?」
 
160528
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