「……あんな未熟なトレーナーに、負けるとは思わなかった」
満身創痍の体を、同じくボロボロのポケモンたちに支えられて現れたワタルは、の姿を認めて自嘲気味に笑った。
「俺は間違っていたとは、思わない。ポケモンのために、人間は消えるべきだ……」
「……でもきっと、ワタルの夢はずっと叶わないよ」
傷付いてもなお、主人の体を懸命に支え続けるカイリューたちの姿を見ては静かに口を開く。
「カイリューたちがワタルのことをこんなにも好きなように、人を愛するポケモンたちはたくさんいる。ワタルが何度人を滅ぼそうとしてもきっと、またそんなポケモンたちがワタルの夢に泣きながら立ち向かうんだよ」
「…………」
「未来の話をしようよ、ワタル。新しいやり方を探そう。人もポケモンも、笑って生きられるやり方を探そうよ」
「……それこそ、夢のような話だな」
「夢でいいんだよ。一生追っていられるなら」
それが、夢のためにたくさんの人を傷付けた自分たちの償いだと、は静かに笑う。それにフッと息を漏らすように笑ったワタルは、差し出されたの手をしっかりと握り締めた。
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