オメガと同化したタイラント伯爵と共に消え行く刹那、それでも自分はまた消え去ることはできずにこの世に留まるのだろう、という絶望にも似た予感が胸を過ぎった。
ふと脳裏に浮かんだのは、記憶の遥か彼方、二度と帰らざる故郷で笑う、誰よりも愛しかったはずの人。
もう名前も顔のつくりも思い出せないことに気付いて、愕然とする。
ああ、私は永遠に彼女の元へと辿り着くことはできないのか。
 
150513
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